「ETロボコン2009 関西地区大会」【後編】モデルワークショップレポート


ETロボコン2009 関西地区大会 モデルワークショップ

 9月21日に開催されたETロボコン2009 関西地区大会2日目は、モデル部門の成績発表、総合成績の発表と表彰式、モデルワークショップが行なわれた。

 前編でも述べたように、ETロボコンでは事前に提出したモデル図の優劣と、それを元にしたソフトウェアを実装したロボットの走行競技の2部門の合計で総合順位を決定する。以前は、モデル図か走行結果のどちらかが秀でていれば、上位入賞するケースもあったが、昨年から評価式が変更され、2部門のバランスが取れていることが要求されている。

 これは、本コンテストが組込技術者の育成を目的としているからだ。組込みソフトウェア開発では、開発時の品質と最終製品の品質の両方をバランスよく追求することが重要視される。そこで総合成績では、モデルの質と走行結果を「同程度に重視」する。さらに「両方がバランスよく達成」されているチームの取り組みに高い評価を与えるという方針だ。

 ETロボコン実行委員会は、例年、5月~6月に参加者を対象として発環境の準備やUMLの書き方、分析・設計モデルの作成について学習する技術教育会を設けてきた。今年の関西地区は、それに加えて地区独自勉強会も実施した。そして走行競技実施後にはモデルワークショップを開催し、審査員が優秀なモデルを紹介しポイントを解説する。また、個別にモデリング相談に応じたり、モデル鑑賞ツアーで各チームのモデル審査のポイントを解説したりする分科会も開き、参加者のレベルアップを図っている。

 本稿では、審査員が紹介したモデル図とそのチームの走行を合わせてレポートする。組込技術者がロボットを制御する際に、どのようなアプローチをとり、性能を検証しているのか興味を持って欲しい。

モデル図審査員メンバーモデル鑑賞ツアー熱心にメモを取りながら解説を聞く参加者達
モデリング相談所1チーム10程度で個別に指導を受けられる

モデル部門の受賞チーム発表

モデル部門上位入賞者

 ワークショップの前に、モデル部門の成績発表が行なわれた。最優秀賞のエクセレントモデルを受賞したのは、NXTは猪名寺駅前徒歩1分(三菱電機マイコン機器ソフトウェア(株)・企業) 、RCXはTrue→Go!! (神戸電子専門学校・専門)だった。猪名寺駅前徒歩1分は、「初参加の3年前は、“モデルとは何か?”から勉強を始めた。これまで勉強した成果が出たと思うと感慨深い」と喜びを語った。

 また、「VDMの適用とそのシミュレーション結果の説得力」を評価され、Vienna Line Tracer Club (個人)に特別賞が贈られた。

【NXT部門】

順位チーム名所属
エクセレントモデル猪名寺駅前徒歩1分三菱電機マイコン機器ソフトウェア(株)
ゴールドモデルR-GRAY ++(株)ソフトウェアコントロール関西支社
シルバーモデルDextrin金沢工業大学 夢考房

【RCX部門】

順位チーム名所属
エクセレントモデルTrue→Go!!神戸電子専門学校
ゴールドモデルRITS_TTリコーITソリューションズ(株)
シルバーモデルAzuma会個人

2009年度関西ETロボコン モデル傾向分析

江見圭司氏(関西地区 実行委員長)

 モデルワークショップでは、最初に関西地区大会実行委員長の江見圭司氏(京都情報大学院大学)から、関西ETロボコンのモデル傾向について話があった。

 各チームが提出するのは、コンセプトシート1枚と、A3用紙5枚以下のモデル図だ。コンセプトシートには、チーム紹介や注目点などが記述され、各チームの特徴やカラーをアピールするドキュメントとなる。モデル図は、限られた紙面で的確に審査員にアピールすることがポイントだ。正確な記述と、モデルから読み取れる設計品質や性能という内容そのものが評価の対象となるという。

 これまでのETロボコンは、“走ること”が主体になっていたが、今大会では、各チームがさまざまなモデリング手法を駆使し、ETロボコンの目指すところに近づいてきたことを実感したと江見氏は強調した。

2009年度関西ETロボコン モデル傾向分析

 モデル審査は、10名の審査員が2日間に渡って行なったそうだ。参加チーム数が多いため、1チームに割ける時間は平均20分だという。各モデル図にコメントを記す時間も含めるため、書類を読むのに費やすのは、せいぜい7~8分になるという。つまりモデル図には、短時間で素早く理解できる記述が要求されるわけだ。

 上位のモデルになるほど、審査員が丹念にチェックをするので、成績をつける際は、少々の間違いが発見されて順位が下がるというような状況だったそうだ。「このモデルで本当に動いているのかと疑念を持たれたら、非常に不利になる。来年チャレンジする時には、記述の細かい部分にも注意してほしい」と江見氏は語った。

各審査員のお気に入りモデル紹介

 続いて、モデル審査を担当した久保秋 真氏((株)アフレル)、近藤 貴俊氏((株)オージス総研)、岩橋正実氏(三菱電機メカトロニクスソフトウエア(株))と水野昇幸氏から、各自のお気に入りモデル図の紹介があった。

 本部審査委員の久保秋 真氏は、「おすすめモデルとロバストネス分析の紹介」として、西院技術部(個人)を取り上げた。ロバストネス分析とは、オブジェクト指向に基づく分析方法のひとつである。西院技術部のモデルは、きちんとロバストネス分析がされており、モデル評価は4位だったそうだ。

久保秋 真氏(本部 審査委員)西院技術部(個人)がロバストネス分析を活用していたロバストネス分析とは(1)

 西院技術部は、ロバストネス分析でクラス候補とメソッド抽出をやっているという。マインドマップを見ると、ユースケース図を作り、その中のひとつひとつに対してロバストネス図が書かれている。このロバストネス図から、実際のクラス候補を出して、全体的にはこんなクラスの出来上がるというクラス図を作っている。

 他チームのモデルと比較して、ユースケース図やユースケース記述を効果的に使っている点がポイントだという。機能をクラスに落とし込む手順が、感覚的ではなく作業結果として判断されており、機能と構造モデルの関係を導きだそうとしている。ここがロバストネス図をうまくつかっている点だと久保秋氏は説明した。

 このようにロバストネス分析を使うことで、どんな機能を定義しどのように使うかという検討し、構造の要素が確定し、データのやりとりの発生がシーケンスとして表されてきたり、必要なメソッドが反映したりするということを理解して欲しいと、久保秋氏はまとめた。

西院技術部(個人)のコンセプトシート西院技術部(個人)の要求仕様整理ユースケースモデリング
ロバストネス分析ユースケースモデリング 要求→機能図ユースケースモデリング 振る舞い→クラス図

 近藤 貴俊氏は、シルバーモデルを獲得した「Dextrin(金沢工業大学 夢考房)」と、エクセレントモデルに選ばれた「猪名寺駅前徒歩1分(三菱電機マイコン機器ソフトウェア(株))」を紹介した。

近藤貴俊氏(関西地区 実行委員)Dextrin(金沢工業大学 夢考房)のコンセプトシート猪名寺駅前徒歩1分(三菱電機マイコン機器ソフトウェア(株))のコンセプトシート

 Dextrinのモデルは、パッケージで役割を明確化している点が非常によかったという。“ライントレーサー”“プラン”“ハードウェア”“コントローラー”と役割ごとにパッケージ化し、どういう構造・どういう方針で作っていくかが明確にされている。ここで使われている色が、クラス図の色に対応しているのが判りやすい。

 もうひとつ、ステートマシン図が良く書かれていたという。ゴール後停止のやり方を例にとると、走行法切り替えの記述が具体的に書かれている。つまり、entryアクションで絶対座標計算、doアクションでPID制御走行をする。そして、停止ポイントに到達すると停止を行なう。5秒経過後に通常走行を行なう。そして、タイムアウトの判定が行なわれる、というように記述されている。ドルフィンジャンプなど他の難所攻略も同様にステートマシン図で判りやすく表現されている。

 「今回、走行体の振る舞いをステートマシン図で書かれているチームが多くてよかった」と近藤氏は言った。しかし、せっかく状態を分けていながら、このようなdoやentryのアクションが描いてないケースが見受けられたそうだ。状態を見ればどういうアクションをするか推測できるだろうではなく、適切に書くことが重要だと、近藤氏は指摘した。Dextrinチームは、それが上手に記述されていた点が評価されたという。

Dextrinの要求分析パッケージで役割を明確化
ゴール後停止の記述など、ステートマシン図が良く書かれていた【動画】インコースを走るのがDextrin。ドルフィンジャンプとゴール後停止を決めた

 猪名寺駅前徒歩1分は、ゴール指向分析(i*[アイスター])というアプローチを用いている。優勝というゴールを目指すためにモデルポイントと走行ポイントを取得する必要があり、「走行ポイントを取得するために走行制御が優れていて、速さと難所のクリアが必要」といったことが明記されている。

 これは素晴らしいアプローチだが、それ自体が高い評価を得たわけではない、と近藤氏はいう。評価を高めたのは、右上に凡例が描かれていることだそうだ。あまり認知度が高くない表記法や、オリジナルの表記法を使う時は、このようにそれぞれの表記法の凡例を合わせて示すことが重要だと近藤氏は指摘した。

 そして猪名寺駅前徒歩1分の詳細モデルは、クラス図とコミュニケーションズの組み合わせの配置が判りやすい。共通モデルのNXTモデルを分けているのも意図が明確でよいと、評した。同チームのモデルを見た時、「UMLは、ソフトウェアの本物の設計図。我々は、これを元にソフトをつくっている」と強く感じたそうだ。

猪名寺駅前徒歩1分のステークホルダの要求分析。ゴールを明確にしているユースケース図要求仕様分析のシート。右上に凡例が書かれている
猪名寺駅前徒歩1分(三菱電機マイコン機器ソフトウェア(株))の詳細モデル赤い線でどこに対応するか分かりやすい

 岩橋正実氏(三菱電機メカトロニクスソフトウエア(株))は、モデル審査する時の視点として、モデルの正確性と独自性、ソフトウェアで実装機能の付加価値、ソフトウェアの開発方式で付加価値の3点をあげた。

岩橋正実氏(関西地区 審査委員長)岩橋正実氏の視点

 RITS_TT(リコーITソリューションズ(株))は、設計の良し悪しを判断する基準の定量化している点が素晴らしかったという。属性数、メソッド数、ライン数、複雑度を考えてクラスが洗練化していく過程があり、クラスの洗練過程とメトリクスを考えている点がよいという。

RITS_TT(リコーITソリューションズ(株))のコンセプトシート計測によるクラスの洗練化が評価された[補足]クローン分析の活用。クラスの洗練化に役立つツールとして紹介

 フンフン(NECソフトウェア北陸)は、レイトモノトニックスケジューリングの導入している点を評価した。クラスのタスクのマッピンクと、時間制約の優先度を設定している。全体設計のクラス図とタスクの概要の色分けが同期している。走行処理の時間制約は4msecで、最優先であることが判る。この図だけで、クラスとタスクのマッピングが理解できる。この時間制約はどこから出たのかがポイントになる。もうひとつ上流のユースケース図で、機能を考えて時間制約が必ずあるはずで、それが設計に現れているのがいい。

フンフン(NECソフトウェア北陸)のコンセプトシートフンフン(NECソフトウェア北陸)はレイトモノトニックスケジューリングを導入フンフン(NECソフトウェア北陸)の全体設計(2)

 最後に特別賞を受賞したVienna Line Tracer Club(個人)を紹介した。このチームは形式手法を使っている。形式手法では、一番最初の要求を定義する段階で、テストまでやってしまう。厳密な形式仕様記述言語に基づいて、記述した内容が実行できるレベルまで作ることができるそうだ。

 組込ソフトウェアの開発強化を目的に、経済産業省を中心に形式手法の実用性検証を始めている。そうした流れの中で、新たな開発にチャレンジするというのが素晴らしい。実装するソフトウェアだけではなく、作り方で価値を出せるというのは素晴らしいモデルだと思うと、岩橋氏は評価した。

Vienna Line Tracer Club(個人)のコンセプトシートVienna Line Tracer Club(個人)。VDMによるモデリング(1)Vienna Line Tracer Club(個人)。VDMによるモデリング(2)
水野昇幸氏(関西地区 実行委員)

 最後に水野昇幸氏から、制御技術審査結果とモデル全体評価についてコメントがあった。全体的に書き方のポイントを押さえたチームが多く、バランスよくまとまっている印象があったという。モデルの傾向としては、ベース検討に力を注いでいる点が好印象だったそうだ。課題の抽出も、ポイントを押さえて問題解決している。しかし、難所攻略については、ほとんどのチームに検討不充分感があったそうだ。

 要素技術では、自己位置を推測して難所の位置を把握しているチームなどが多かったという。NeonBlue(フルタニ産業(株))は、実際の走行状態を図として表し、各区間毎に判断しようとしている。同チームは灰色を検知しないで、新ショートカットに入っているそうだ。ログ解析を重ねて位置測定し、ジャンプしている。実際の走行でも、新ショートカットを超えている点からも充分な検証できている内容だと言えると評した。

制御技術審査結果とモデル全体評価モデルから読み取れる制御技術一覧自己位置推定の検討がよかったチーム
NeonBlue(フルタニ産業(株))のコンセプトシート難所の攻略【動画】ショートカットの走行

 自己位置推定のため必須な走行時のログ解析をし、ログの検討をしっかりやっているチームとして、CrossSection((株)北斗システム)を紹介した。このチームは、得られたデータをグラフ化して使えるかどうかをベースの検討として、しっかり上げているという。どうしたらよくなるかの検討も追加しており、自己位置推定ができることを実証していると思うと述べた。

 ワンダーSHEEP(個人)は、ベースの開発環境に「ログとるとる君」を作って、実際の走行状態をウィンドウで見えるようにしているそうだ。これを用いて、必要なデータを取得し、自己位置推定のためのベース検討を行なったようす。残念ながら、どのように使って検討に活かしたのかは、UMLからは読み取れなかった。そこは減点材料になってしまったが、面白いアプローチだったという。

 西院技術部(個人)は、実走行状態をリアルタイムにブルートゥースで取得してモニタリングし、自己位置の推測などを見える力しようしている。練習中や試走中に使えたら面白いなという印象があった。「これを使った検討結果が表記されていればよかった」と述べた。

CrossSection((株)北斗システム)は試走ログの解析をしているワンダーSHEEP(個人)のログとるとる君西院技術部(個人)は自己位置の推測などを見える力をした

 自己位置推定をさらにパワーアップさせることを考えたチームとして、ウサミンズ((株)デジタル)を紹介。コンセプトシートには、“実走行と地図の融合”と書いてあり、グラフィックソフトCanvas11 J Winを使って描いた軌道を走行させているそうだ。自己位置推定や計算方法は他のチームと同じだと思われるが、地図上のどこにいるから方位を推定する補正をつけているところが非常に面白いと、水野氏は言った。地図のデータを読み込んで実際のコースとして反映させているイメージが読み取れたそうだ。

 ウサミンズ((株)デジタル)は、スプライン走行技術を取り入れている。シミュレーションでスプライン曲線を描いたら、実際にその通り走るそうだ。水野氏はUMLを読んだ時「スプライン走行ができて何がいいのだろう?」と疑問を持ったそうだ。しかし、初日にウサミンズ((株)デジタル)がインコースを走行した時のコメントで、「ドルフィンジャンプをしようとしたら、障害物が嫌な位置に置かれていました。試走時に、スプライン曲線を使ってすぐに調整してすぐ対応できた」というコメントを聞き、このスプラインという基礎技術を固めることで、短い試走時間の中で、新しい走法を成功させたことを実感。実際の走行としても、ベースの検討としてもレベルが高い内容と改めて思ったそうだ。

ウサミンズ((株)デジタル)の位置推定技術【動画】INコースがウサミンズ((株)デジタル)のドルフィンジャンプ

 自己位置推定は、多くのチームがタイヤの回転差で走行体の場所を推定しよとしているのに対し、実際のモータの回転数だけで一次元でどこにいるかを表そうとしているのが2チームあったという。水野氏は、これを「一次元走行位置推定の方式」と名付けて紹介した。フンフン(NECソフトウェア北陸)は、これをトリップメーターという名前を使っている。もうひとつの電子くん(神戸電子専門学校)は、区間管理と呼んでいる。

 電子くん(神戸電子専門学校)は、コースのカーブ等を含めた補正を入れて、タイヤが何回転したらどこにいるか判断するための検討を行ない、100回走らせて±5cmしか誤差がないという結果を出している。フンフンも88回の走行で60度しか差分がなく効果的であることを検証している。「この技術は今後も使える内容。これで精度が高くなれば、灰色マーカーがなくてもショートカットやトレジャーなどの難所がクリアできるようになる」と、水野氏は高く評価した。

一次元走行位置推定を検証しているフンフンと電子くん電子くんの区間制御を活用したトレジャーハント攻略【動画】「がーって行って、ぎゅーんって下がって、ぴゅーと行く」作戦通りの走行

 NXTの高速走行には、PID制御が必須となっており、かなりのチームがPID制御の検討をしている。R-GRAY ++((株)ソフトウェアコントロール関西支社)はPIDのパラメータの導入後まで書いている。P値とD値の指定を変えたら、ふらつきがなくなったようすを記述している。こうしたデータを書くと検討した結果がわかり、効果のあることが伝わる。

 EIW@ER((株) 永和システムマネジメント)も、ポイントをちゃんと押さえた記述だ。限界感度法というPIDのパラメータを決める手法があり、それに基づきパラメータ推定をし決めた過程までまで書いている。「PID制御はこのあたりまで記述すると、価値が高くなる」と水野氏はアドバイスした。

R-GRAY ++((株)ソフトウェアコントロール関西支社)の要素技術【動画】R-GRAY ++((株)ソフトウェアコントロール関西支社)の華麗なトレースEIW@ER((株) 永和システムマネジメント)。限界感度法によりパラメータ決定

 速さへのこだわりを記載したチームもあり、面白い内容だったそうだ。猪名寺駅前徒歩1分(三菱電機マイコン機器ソフトウェア(株))は、ハイパーダッシュというタイトル記述している。ブースト制御という形で、走行体を前に傾けると、前進の速度を上げバランスを取ろうとする特性を利用し、スピードアップする内容だ。

 猪名寺駅前徒歩1分は、トレジャーハントやツインループの検討もしっかりやっている。トレジャーハントを実際に走って、各アクティビティを分けて考えている点と、光センサーのログデータを取って、アクティビティ図に照らし合わして記述している。論理の手順が整っているという点と、課題を抽出してから問題点にチャレンジしている点が高く評価されたそうだ。

 誠ギガブレイク(個人)もスピードアップに対する検討を細かく行なっている。前傾姿勢を取らせたら姿勢制御ができなくなったとか、カーブで光センサーがラインを見失っているとか問題点が出たそうだ。そこで、高速走行を実現するための走行を検討している。どういう技術を使っているのかは、企業秘密なのか間に合わなかったのか記載されていないのが残念だという。

 灰色検知についても実際の対策として面白い内容を書いているそうだ。PID制御では、通常走行していると灰色マーカーが検知できない。エッジ走行すれば検知できるが、バランスを崩しやすい。また、検知速度が遅く精度がよくないため、灰色マーカー情を通過せずに検知できない場合もある。そこで、検知精度を上げるために、エッジ走行の改良をした。その結果、光センサーの値がどのように変わったを表記し、効果をグラフで示している。改良のアイデアと実際のデータが絡んでいて、制御の説明方法として良かったという。

 実際の走行を見ても、この2チームの走行は速かった。モデル審査会は事前に実施されるため、評価する時点では点がつけられないが、こうしたモデルを書いて本当に速いというのを評価したいと水野氏は語った。

猪名寺駅前徒歩1分(三菱電機マイコン機器ソフトウェア(株))のブースト制御【動画】アウトコースが猪名寺駅前徒歩1分。難所をクリアしつつ65.4秒でゴールした猪名寺駅前徒歩1分のトレジャーハントとツインループ攻略
誠ギガブレイク(個人)のスピードアップの検討【動画】アウトコースが誠ギガブレイク。45.5秒でゴールイン誠ギガブレイク(個人)の灰色マーカー検知の対策

表彰式。関西地区大会からは、NXT5チーム、RCX1チームが全国大会へ出場

 総合順位の受賞規定は、「モデル審査結果の評価がC+ランク以上で、かつ走行競技部門で1回以上完走すること」と定められている。

 NXT部門で誠ギガブレイク(個人)、RCX部門は、RITS_TT(リコーITソリューションズ(株))が、それぞれ優勝に輝いた。NXT部門は上位5チーム、RCX部門は優勝したRITS_TTが11月18日にパシフィコ横浜で開催されるチャンピオンシップ大会へ出場する。

 誠ギガブレイクは、「全国大会に向けて、走行とモデルと戦略の3つをブラッシュアップし、横浜に関西旋風を巻き起こせるようなチャレンジをしてきたい」と語り、RITS_TTも「関西代表として、恥ずかしくない成績を残したい」と抱負を語った。

【NXT部門】
順位チーム名所属走行順位モデル評価
1位誠ギガブレイク個人2位B
2位誠レーシングチーム旭情報サービス(株)1位C+
3位くろしお個人3位B-
4位NeonBlueフルタニ産業(株)4位B-
5位電子くん神戸電子専門学校5位B
【RCX部門】
順位チーム名所属走行順位モデル評価
1位RITS_TTリコーITソリューションズ(株)2位B-
2位True→Go!!神戸電子専門学校4位B-
NXT部門総合優勝。誠ギガブレイク(個人)RCX部門総合優勝。RITS_TT(リコーITソリューションズ(株))チャンピオンシップ出場チーム


(三月兎)

2009/10/16 16:49