「ポジショニングEXPO」&「VISION Japan」レポート
~超小型超音波モータアクチュエータや光無線利用の映像伝送デモなどを実施
超小型の超音波リニアアクチュエータなどが出展された |
9月30日から10月2日にかけて、パシフィコ横浜で小規模な展示会ではあるが、産業ロボット技術にも関連する位置決め技術の総合展「ポジショニングEXPO」が開催された。同時に、産業用カメラ&デジタル映像技術展「VISION Japan」も併催されたので、合わせて注目度の高い技術や製品などを紹介する。
●指先サイズの超小型超音波リニアアクチュエータ「TULA」
超音波モータを開発しているテクノハンズが、デモンストレーション用に動作させていたのが超音波リニアアクチュエータ「TULA」シリーズ。幼児の指先に載せてもまだ小さく見えるようなほどの超小型で、超軽量、低消費電、無通電時にも保持力が高くて無発熱、停止時には摩擦力にて完全停止などが特徴である。機構的には、圧電セラミックスの振動制御を行なっていること、ガイドと駆動系が一体化されていることなどがポイントだ。シリーズは「35」、「50」、「70」の3種類があり、スペックは以下の通り。数値は左から35、50、70となる。
【スペック】
移動速度(mm/s):3~35/5~35/同左
推力(N):0.06~0.2/0.1~0.45/0.2~1.2
ストローク(mm):3~15/3~22/同左
駆動電力(V):10~30/15~30/25~55
駆動周波数(kHz):80~130/40~80/25~60
電流(mA):3~15/9~15/10~30
消費電力(mW):350以下/400以下/1500以下
TULAシリーズの大きさがわかるよう、10円玉を置いてその上下に動く様子を撮影させてもらったので、日本のものづくり系企業の持つテクノロジーのすごさを改めて堪能していただきたい。しかし、世の中にはさらに小型のものもあるということなので、驚きである。
10円玉と比較すれば、どれだけ小さいかがわかっていただけるはず | 【動画】その動く様子。上下動しているのがおわかりいただけるはずだ | 【動画】TULAの技術を応用して開発した小型の5軸ステージなどの製品を扱っている |
●ヘキサポッド6軸システム「HexaLight M-850」
アクチュエータが何本も接続されている複数軸機器などを見ると、たまらないという人もいるかと思う(記者だけ?)。ドイツに本社を持つピー・アイ・ジャパンが展示していたのが、そんな人ならグッと来ること確実のヘキサポッド6軸システム「HexaLight M-850」だ。完全6軸ステージ、6軸パラレルリンク機構、つり下げなどを含めた設置方法の自由度の高さなどが特徴の1台である。ちなみに、同社では手のひらサイズの小型仕様、真空仕様、天体望遠鏡用、非磁性ピエゾ素子を使用したナノポジショニング仕様など、多数のシリーズを用意。そのほか、ピエゾアクチュエータやリニアモータステージなどを扱っている。
HexaLight M-850 | 【動画】HexaLight M-850の動作する様子 |
●サッカーグラウンドを真横からまるまる撮影できる「超ワイド高精細撮影システム」
続いては、VISION Japanに出展されていた製品。まずは、国立霞ヶ丘競技場などのサッカーグラウンドを、横方向からまるまる撮影してしまうというメガビジョンの「超ワイド高精細撮影システム」から紹介しよう。国立競技場の場合、公式サイト上で芝生が敷かれているサイズは107m×71mとある。画面上では、その芝生よりも若干外側のトラックの一部も見えるぐらいなので、横方向は110m前後の幅があるはずだ。サイズで見ると、決して極端な横長というわけではないが、カメラが設置されているスタンドからの角度だと、縦方向(ゴールライン方向)にパースがかかってつぶれるので、かなりの横長になる。実際には、横縦比が48:9になるそうで、横方向はHDTVの横3面分になるそうだ。
そんな横長のグラウンドをどうやって撮影しているのかというと、ズームマスターレンズと呼ばれる新開発のハイビジョンカメラ用レンズの3倍の精度のあるレンズを用いてグラウンドの様子をとらえ、それを途中で3台のハイビジョンカメラに振り分けて撮影するという方式を採っている。これにより、3台のカメラを使いながらも歪みもつなぎ目もなく映像を撮影できるというわけだ。日韓共催ワールドカップのために開発され、サッカーグラウンドをまるまる映す映像は前例がなかったそうである。
「超ワイド高精細撮影システム」用のカメラ。レンズはハイビジョンの3倍の精度を持つ | ちょうどブースの構造物の陰がかかっていて見づらいのだが、その映像。サイドラインに継ぎ目や歪みがない | 超ワイド高精細撮影システムの構成図 |
●3D立体ハイビジョンライブ映像IP伝送デモ
エフエー システム エンジニアリングと高速光空間通信網推進協議会が協力して行なっていたデモが、「光無線利用3D立体ハイビジョンライブ映像IP伝送」だ。展示会場入口すぐ右手に高速光空間通信網推進協議会のブースがあり、そこには3D映像撮影のため同期発生装置で二眼状態にしたキヤノン製のハイビジョンカメラ「XH G1」で撮影した映像を、同じくキヤノン製の高速光無線通信システム「CANOBEAM」のカメラ「DT-110」で、裸眼で見る限りは安全な国際規格「クラス1M」のレーザー光に変換して送信し、少し離れたエフエー システム エンジニアリングブースに設置されている同じカメラで受信(本来は双方向で通信できる)。そして、同ブース内の立体ハイビジョンテレビで表示するという内容だ。
ちなみに光無線とは、ケーブルの設置が難しい箇所、または地震などの大規模な災害で既存のケーブルが寸断された場合の利用に適しているとされる送信システム。一方のカメラからレーザー光などを用いて送信し、もう片方のカメラで受けるという仕組みで、途中のケーブルが不必要になる。距離は、もちろんピンキリなのだが、CANOBEAMを例に取ると、今回利用されたDT-110は最も安価(カメラ2台の1対向分で180万円強)なタイプなので、20~500m。長距離用の「DT-120」(1対向310万円強)の場合は、100~2,000mとなっている。そして通信速度は、DT-110で25~156Mbps、最高速が出る「DT-150」(1対向515万円弱)で1.485Gbpsだ。高速光空間通信網推進協議会は、こうした特製を活かし、オフィスビル街の屋上に装置を設置し、ビル間高速光通信網を廉価に構築することを目的としている。今回のデモでは、もちろん間に障害物があると通信ができないので、数メートルの高さまでカメラを持ち上げ、わざわざ物を放ったりしない限りは通信をじゃましてしまう心配のないようにしてあった。
そしてエフエー システム エンジニアリングが今回扱っていた部分は、立体映像を作るシステム。二眼カメラでとらえたわずかに角度の異なるふたつの映像を水平方向に圧縮し、肉眼で見ると二重にブレた状態の立体映像(偏光メガネを利用することで立体に見えるタイプ)になるようにする「SideBySideエンコーダ」などを提供していた。
キヤノン製のハイビジョンカメラ「XH G1」を同期させた、立体カメラ。ロボットの顔に見える | キヤノン製の高速光無線通信システム「CANOBEAM DT-110」。こちらは送信側。本来は双方向通信が可能 |
エフエー システム エンジニアリングブースの受信側のDT-110と、ハイビジョンカメラ | デモを実現しているシステムの構成図。割愛したが、H.264の技術なども使用されている |
●真っ暗な密閉空間でも驚くほど鮮明に見えるワテックの超高感度カメラ
ワテックブースでその実力を披露してもらったのが、新型の超高感度カメラ「WAT-250D」。金庫の中に同社の暗視機能のない通常のカメラとWAT-250Dの両方が設置されており、その前(金庫の壁側)にはタカラトミー製「のほほん族」(ゆっくりと首を振っている癒し系キャラクター型ホビー)の2006年版オーシャンブルー仕様が鎮座しているという具合。これでふたを閉め、中の明かりをどんどん暗くしていくと、通常のカメラはもう真っ暗なのに、高感度カメラの映像の方は驚くほどのほほん族がよく見えるという具合。さぞかし高価なのかと思いきや、5万円前後だという。驚きである。
右が「WAT-250D」。左側は暗視機能のない同社のカメラ | ふたを閉めてもライトがついている明るい内は左のカメラの方がきれいなぐらい | しかし、ライトを暗くすると、ご覧の通り通常のカメラはもう何も映せず。WAT-250Dの映像はほとんど変化なし |
以上、ポジショニングEXPOとVISION Japan、いかがだっただろうか。なお、ポジショニングEXPOは来年の開催も決定しており、会場を都立産業貿易センター浜松町館に移して、11月10日から12日まで開催される。VISION Japanは扱いが変わるようで、「レーザーEXPO2010」、「レンズ設計・製造展 2010」、「光ファイバ応用技術展 2010」とともに、4月21日から23日までパシフィコ横浜で開催されることになっている。
2009/11/4 22:05