二足歩行ロボットバトル大会「ロボファイト10」レポート【ORC編】

~優勝はガーゴイル・ミニ。ROBO-ONE出場権は、ヨゴローザが獲得!


ロボファイト10 ORCバトルトーナメント 決勝戦

 大阪産業創造館にて開催されたロボファイト10の2日目は、自作の大型機がメインのORC(オーバーレギュレーションクラス)バトルトーナメントを実施した。今回のORCは、2010年3月に開催される、第17回ROBO-ONE決勝出場権の認定大会になっている。ROBO-ONE出場権獲得を目指し、各地から22体のロボットが集まった。

 トーナメントを制して優勝したのは、吉田ファミリア氏の「ガーゴイル・ミニ」だった。吉田ファミリア氏は、8月に開催された第3回、第4回 ROBO-ONE GATE IN 郡山で第17回ROBO-ONE決勝出場権を得している。したがって、出場権は、準優勝のdauto氏が獲得した。

【動画】恒例のロボット巫女AMATERAS(のむむ氏)の安全祈願ORC参加者記念撮影岩気裕司氏(ロボットフォース代表)

市販キットも、巨大ロボットも全力で戦う

 バトルは3分1ラウンド6ポイント制、3ダウンKOルール。トーナメントの1~3回戦で敗退したロボットは、敗者復活戦トーナメントに出場する。敗者復活戦トーナメントの優勝者は、本戦トーナメントの3位と同等の賞を得る。ORCは、ROBO-ONE出場権がかかっていることもあり、SRCと比べるとバトルの本気度が格段にアップするが、“参加者が1日中ロボットで楽しむ”というホビーロボット精神は貫かれている。

 ロボファイト独自のルールとして、発射体の使用が許可されている。これはロボットを破損しない程度の威力をもった飛び道具を、相手ロボットのボディ正面に命中させるとダウンを奪えるというものだ。このルールによって、小さなロボットであっても巨大ロボットと戦えるのだ。

 今回も、自作ロボットと一緒に京商MANOIのどすぐろいの(POTATO氏/大同大ロボ研)や、ヴイストンのRobovie-Xに発射体を搭載したRobovie-XSF(zeno氏/realmotor大工大)が出場していた。

【動画】ゴーレムくん(人形つかい氏/まじかる☆マリオネット) VS どすぐろいの(POTATO氏/大同大ロボ研)。ゴーレムくんは、初めて無線操縦で動いた【動画】Robovie-XSF(zeno氏/realmotor大工大) VS 花蓮弐式(リュウ太郎氏/大同大学ロボット研究部)。発射体でダウンを狙うRobovie-XSF

 トーナメントでベスト4に進出したロボットは、YOGOROZA(dauto氏/つかみ隊)、で・か~る(道楽、氏)、レグホーン(NAKAYAN氏)、ガーゴイル・ミニ(吉田ファミリア氏)。いずれも、ROBO-ONEの出場経験を持つ強豪ロボットばかりだ。準々決勝の試合は、動画で紹介しよう。

【動画】YOGOROZA(dauto氏/つかみ隊) VS BARON(かろと氏/大同大学ロボット研究部)。BARONも善戦したが、最後の粘りに経験の差が現れた【動画】White Dwarf(えまのん氏) VS で・か~る(道楽、氏)。で・か~るが背面姿勢を取ると、White Dwarfのパンチが、上半身の上を空振りしてしまう
【動画】レグホーン(NAKAYAN氏) VS 建御雷神 type.F(ロボ研Aチーム氏/ロボット研究部)。type.Fは、試合直前に腕の配線が断線。急いで修理したが、最後のダウンでまた切れてしまった【動画】ガーゴイル・ミニ(吉田ファミリア氏) VS ハンマーヘッド(A4氏/大阪産業大学歩行ロボットプロジェクト)。巨体のガーゴイル・ミニからダウンをい、ハンマーヘッドのパイロットのA4氏がガッツポーズで喜んだ

 準決勝の第1試合は、で・か~る(道楽、氏) VS YOGOROZA(dauto氏/つかみ隊)。で・か~るは背中を思いっきりそらして、腰を二つ折りにしたような不思議なポーズで移動する。姿勢からは想像できないような、速いスピードで動き回り、観客の笑いを誘っていた。姿勢が低いため、正面からのパンチが当たらずに、苦戦した相手は多い。

 しかし、そんなで・か~るは、YOGOROZAにとってはまたとない標的だった。試合開始早々、たかたかと近づいてきたで・か~るを、YOGOROZAは下からすくい上げるようなパンチでリング外へ放り投げた。で・か~るには、低い位置からのアッパーが有効で、立て続けにダウンを浴びていた。

 第2試合は、レグホーン(NAKAYAN氏) VS ガーゴイル・ミニ(吉田ファミリア氏)。吉田ファミリア氏のロボットは、今大会で一番大きいにも関わらずロボット名は「ガーゴイル・ミニ」。実は、「ガーゴイル」は第15回ROBO-ONEに出場した身長75cmのロボットの名前だ。第16回大会のレギュレーションに合うように腕や足を短くしたバージョンを「ガーゴイル・ミニ」と名付けたそうだ。ミニといっても、身長65cm、体重3.8kgの巨体だ。

 対するレグホーンも、2年前は「大型ロボット」に分類されていたが、ロボットの巨大化が進んで今は普通サイズに見えてしまう。このレグホーンの頭部がちょうど、ガーゴイル・ミニの腕の高さだったのが災いした。両手を広げたガーゴイル・ミニの腰を捻ってパンチを放つと、レグホーンがあっけなく倒されてしまう。立て続けにダウンをくらい、試合時間、わずか25秒で勝負が決まった。NAKAYAN氏は「頭を外したくなりました……」とぼやいていた。

 勝者の吉田ファミリア氏は「レグホーンには今までさんざんやられていたので、初めて勝てて嬉しい。次に決勝で対戦するdautoさんとは1勝1敗。ROBO-ONE14回大会では負けているので、今回は勝ちたい」と決勝に向けて意気込みを語った。

【動画】YOGOROZA(dauto氏/つかみ隊) VS で・か~る(道楽、氏)。で・か~るは、奇妙なモーションで観客の人気を集めた【動画】レグホーン(NAKAYAN氏) VS ガーゴイル・ミニ(吉田ファミリア氏)。圧倒的な強さでガーゴイル・ミニの勝利

 3位決定戦は、レグホーン(NAKAYAN氏) VS で・か~る(道楽、氏)の対戦となった。レグホーンは見た目はキャラクタ系の可愛いロボットだが、サイドパンチや両手はり倒しなど、多彩な技を持っている。で・か~る対策に有効な、翼ですくい上げるようなパンチを連発してダウンを奪った。スピードを活かして、リング内を走り周り、身を張って観客の笑いを取るで・か~る。最後は、リングの際まで走りこみ、一瞬止まったのちに、操作ミスが原因で自らリングアウトした。観客と一緒に笑いながら、思わずリングにつっぷす道楽、氏だった。

 決勝戦は、ガーゴイル・ミニ(吉田ファミリア氏) VS YOGOROZA(dauto氏/つかみ隊)の対戦。ガーゴイル・ミニは巨体にもかかわらずフットワークが軽い。長い足でサイドステップを踏みながら、伸びる腕で離れたところからパンチを繰り出す。並のロボットは、一撃で吹き飛ばされるのだが、YOGOROZAは耐えた。YOGOROZAも低い位置からパンチを放ち反撃をするが、ガーゴイル・ミニが絶妙なバランスで倒れない。決勝戦に相応しい、思わず応援に力が入る戦いとなった。最後は、ガーゴイル・ミニの大きな爪がYOGOROZAの頭にヒットに派手に倒して、決着をつけた。

 吉田ファミリア氏は、関東のロボットビルダーで、関東はもちろん長井や関西のイベントにも積極的に遠征し活躍している。意外なことに、ロボファイトはこれまでベスト8が最高成績だったそうだ。先月行なわれた第16回ROBO-ONE大会は、直前に機体トラブルに見舞われ棄権を余儀なくされたという。富山で暴れられなかった分、大阪で思いっきりバトルを楽しみ、念願の初優勝も果たし満面の笑顔だった。

【動画】レグホーン(NAKAYAN氏) VS で・か~る(道楽、氏)【動画】ガーゴイル・ミニ(吉田ファミリア) VS ヨゴローザロボファイト初優勝の吉田ファミリア氏
試合後、互いの健闘をたたえる両者第17回ROBO-ONE 決勝出場認定権はdauto氏が獲得ORCトーナメント結果

敗者復活戦トーナメントとランブルで1日中、ロボットを満喫

 敗者復活戦を勝ち上がってきたロボットも紹介しよう。

 敗者復活戦の準決勝の第1試合は、赤風(まつしろ氏) VS unfix MkII(kantarow氏)の対戦。

 赤風の必殺技は、両腕を大きく広げて、相手を挟み込む投げ技だ。必殺技申請をしてあるため、技を決めた時に自分が倒れてもダウンは取られない。しかし、相手をつかみ損ねて、自分だけ倒れればスリップダウンで1ポイント失う。試合開始早々、赤風は、必殺技でダウンを先制した。その後も何回か技を仕掛けたが、ポジションが悪くて途中で投げるのを止めている。しかし、最後はがっしりと掴んで落ち着いて、投げ試合を決めた。

 まつしろ氏は投げ技を、一連のモーションとして登録しているのではなく、「相手を掴む」「投げる」の2つに分けている。つかみ損ねた時は、技を途中でやめることができるので、いたずらにスリップダウンを重ねることがない。この試合でまつしろ氏は、冷静な試合運びで投げ技やパンチを使い分けて、勝利した。

 ちなみにこの方式だと技のスピードがなくなるため、あえてモーションをひとつにまとめている人もいる。レグホーンのNAKAYAN氏は、そのタイプだ。NAKAYAN氏は、スリップダウンのリスクがあるから、投げ技は「ここぞ」という時にしか使わないそうだ。

 準決勝第2試合は、大同大ロボ研のdelraich(Marl氏) VS 花蓮弐式(リュウ太郎氏)による同校対決となった。花蓮弐式が積極的に攻め込んでダウンを奪った。このまま試合の主導権を握るかと思われたが、delraichも激しいパンチで反撃。ダウンの応酬となった。最後は花蓮弐式がスリップして、delraichの勝利。リュウ太郎氏は、「先輩だったので、やりにくかったです……」と、言葉少なに悔しさをにじませた。

 決勝戦はdelraich(Marl氏/大同大ロボ研) VS 赤風(まつしろ氏)の対戦で、勝った方にはトーナメント3位としてメダルが贈られる。赤風が懐に飛び込んできたdelraichに投げ技を仕掛けるが、不発。逆にスリップダウンを取られてしまった。勝ちを急ぐのか投げ技を決めることができない赤風は、いたずらにスリップダウンでポイントを失っていく。最後は、delraichの低いパンチは赤風の脚部をかすめ、バランスを崩した赤風はリング下に転がり落ちダウンを取られKO負けを喫した。

【動画】赤風(まつしろ氏) VS unfix MkII(kantarow氏)。赤風が投げ技を決めて勝利した【動画】delraich(Marl氏/大同大ロボ研) VS 花蓮弐式(リュウ太郎氏/大同大学ロボット研究部)【動画】delraich(Marl氏/大同大ロボ研) VS 赤風(まつしろ氏)。delraichが勝利した

 最後に、全員参加のランブルを実施した。3回に分けて予選をし、最後までリングに残っていた2体のロボットが決勝ランブルに出場できる。決勝戦は、3分間の死闘を終えた時、リング場上にで・か~る(道楽、氏)、ハンマーヘッド(A4氏/大阪産業大学歩行ロボットプロジェクト)、BARON(かろと氏/大同大学ロボット研究部)の3体が横たわっていた。

 ロボファイトのランブルでは、リング端に審判がつけた×マークの一番近くに立っているロボットが勝者となる。時間内に勝負がつかなかったため、3体のロボットが無制限1本勝負の延長戦に挑んだ。その結果、優勝はハンマーヘッドのものとなった。

【動画】ランブル決勝戦。次々とロボットがリングアウトしていく【動画】残った3体で延長戦。時間無制限の真剣勝負ハンマーヘッド(A4氏/大阪産業大学歩行ロボットプロジェクト)。前日活躍したメンバーとおそろいのTシャツ
ORC入賞者

外装をつけたKHR-3HV

 スポンサーデモの時間に、可愛い可愛い女の子ロボットが登場した。ロボットフォース所属の4頭身キャラクターロボットで、名前を「サンビー」という。ベースになっているのは、KONDOのKHR-3HV(サンビーは“3V”が由来)だ。

 背中のラインをすっきりさせるために、基板を頭部に移動し、ボディは前後を逆にしたそうだ。外装をつけていても、KHR-3HVに搭載されているサンプルモーションがそのまま動くのがポイント。台詞をつけて動かすと、サンプルモーションの「えいえいおー」も可愛らしくなる。ロボットフォースでは、こうした市販キットをベースにしたキャラクタロボット受注製作サービスも請け負っている。

【動画】KHR-3HVのデモンストレーション。外装があってもサンプルモーションでしっかり動くKONDOブース
初めてロボットを間近で見る観客がブースで質問をしていたJRブース


(三月兎)

2009/10/21 14:31