「第5回全日本学生室内飛行ロボットコンテスト」レポート

~重量わずか200g! 超小型飛行ロボットの技術系競技会


ロボットテクノロジーも利用した超小型計量飛行機がその性能と操縦技術を競い合った

 9月19日(土)、20日(日)の2日間に渡り、幕張メッセの第9ホールを舞台に、社団法人日本航空宇宙学会主催による「第5回全日本学生室内飛行ロボットコンテスト」が開催された。第4回大会までは大田区産業プラザにて単独で開催されてきたが、今年は開催場所を移すと同時に、日刊工業新聞社およびモノづくり推進会議主催の「モノづくり体感スタジアム」の中のイベントの1つとして、「全日本折り紙ヒコーキ大会」と「モノづくり体感ワークショップ」とともに実施された。全国の高校、高専、大学、大学院、そして海外の大学3チームを含めた全48チームが参加した大会の決勝の様子をお伝えする。

全日本学生室内飛行ロボットコンテストとは?

 全日本学生室内飛行ロボットコンテストは、2006年1月に第1回が開催され、ほぼ年1回のペース(第3回、第4回はどちらも昨年に半年ほどの間隔で続けて開催された)で開催され、今回で第5回を数える学生が対象のモノづくり系競技会だ。学生に対する航空工学教育の推進のため、室内での遠隔操縦が可能な航空機を設計・製作し、コンテスト本番では飛行の腕前も競う内容となっている。1チームは操縦者1名と補助者4名以内で競技を実施する。航空機の技術コンテストの意味合いが強いが、カメラを含むセンサーを搭載することが可能なほか、今回のミッションでは救援物質に見立てたお手玉を決められた地点に投下するといった要素もあり、ただ飛行できればいいというわけではなく、メカニズム的に工夫する必要があるのが同コンテストの特徴だ。

 機体レギュレーションは、今回は固定翼のみとし(飛行機型のみで、ヘリコプターや飛行船などはなし)、もちろんオリジナルの自作機であることも条件となっている。機体重量は、救援物質のお手玉を除いた離陸時の空虚重量が200g以下。かなりの軽量性が求められるのが特徴といえよう。動力は電動モータを使用し、プロペラで推力を得る。動力源はバッテリだ。部品の改良やオリジナルで製作した部品の使用も認められているが、安全性に配慮しているかどうかが機体審査やプレゼンテーションにおいて厳しく審査されるようになっている。

 また制御方式は、市販のラジコン送受信機を使用した遠隔操縦となっている。改造は禁止だ。そのほか、本番機と同型の予備機の計2台までの参加が認められている(機体審査は両機ともに行なう)といった点や、安全性の面(突起物にはカバーを装着し、目標確認などにレーザーポインターを使用することを禁止するなど)もチェックされる形だ。

飛行機らしい形状をした機体の一例。神奈川工科大学航空研究部の「Leaf」はセスナ機風こちらも飛行機らしい機体。久留米工業高等専門学校機械工学科の「リンリン号」はグライダー風こちらも飛行機らしい部類に入る。名古屋工業大学機械工学科の「N2-09」
こちらは飛行機と凧を合わせたような雰囲気の秋田工業高等専門学校専攻科の「Mayfly4」上下二枚の主翼が両端でつながって、円柱状になっているのが特徴の韓国KAISTの「ICARUS-FW」こちらも円柱状の主翼で、しかも4つも装備した名古屋大学のpoop。後ろにも飛ぶことが可能!

 続いては、競技ルールについて。競技エリアは、10m四方のスタート・フィニッシュエリア、それに隣接する30m×10mの操縦エリア、スタート・フィニッシュエリアとは反対側で操縦エリアと隣接する30m×25mのミッションエリアで構成される。第9ホールの5分の1ぐらいの面積を使用して行なわれた。

 スタート・フィニッシュエリア中央には幅1mの滑走路が10mの長さで描かれており、ここから離陸して飛行を開始する。ミッションエリアには、半径5mの円が3つ(A、B、C)と、ゲートが2つある。3つの円は、救援物質に見立てたお手玉を投下する目標地点で、中心点に近ければ近いほど得点が高くなる。お手玉の重さは12~15gで、3個を一度に運んでもいいし、まとめて運べない場合は一度帰還して積み直して再発進することも可能だ。ゲートは2本のポールで構成されており、どちらのゲートでも構わないので、最大3回までポールに接触せずに通過できれば得点がプラスされる形だ。操縦者は操縦エリア内から飛行ロボットを操縦し、墜落などがあった場合以外は、ミッションエリアには入ってはならないルールとなっている。

競技エリア。幕張メッセ第9ホールの4分の1から5分の1ぐらいのスペースを利用していたスタート・フィニッシュエリアの滑走路救援物資投下地点の目印となる半径5mの円。3つある
円の中心には目立つように水色のターゲット用の小型の円があり、この上に落とせればかなりの高得点ゲート。2カ所に立っており、どちらのゲートを利用してもいい

 最大飛行時間は3分で、飛行回数は2回。実際には1回目が予選であり、2回目は決勝に当たり、1回目の上位チームのみが進出できるルールだ。今回は、17チームが決勝に進出した。競技内容としては、救援物資の投下を3カ所に行なうほかに、前述のゲート通過、3秒間の水平手放し飛行、そして最大3回までの宙返りがあり、最後に帰還(スタート・フィニッシュエリアで止まれれば帰還、滑走路上できれいにストップできればさらにボーナス得点を得られる)となっている。救援物質の投下は定められたミッションだが、それ以外はパスしても点が伸びないだけだ(救援物質に投下しないと、残りの3つのミッションには挑戦できない)。

 ただし、帰還できないとどれだけ得点が上でも、決勝への進出は不可能というルールだ。また、墜落ではなく瞬間的ではあったとしても接地してしまうと減点となる。ただし、壁への接触は接地とは見なさない形だ。そのほか、事前にミッションを行なう順番を伝える必要があり、実際に開始する前に審判に伝える必要もある。

 得点の計算式は、『得点=(1,800(cm)-「円Aの中心地点からの距離(cm)」-「円Bの中心地点からの距離(cm)」-「円Cの中心地点からの距離(cm)」)+「ゲート通過回数」×100+「宙返り回数」×100+「手放し飛行(1回)」×300-「着地回数」×50+「離陸加点」+「着陸静止加点」』だ。

 ミッションエリア内でサークル外に救援物資が落下した場合は500cm扱い、同様に操縦エリアに落下した場合は600cm、スタートエリアから輸送できなかった場合700cmとなる。離陸加点に関しては、滑走路内離陸の場合に100点が加点される。着陸静止加点は、滑走路着陸静止の場合が200点、スタート・フィニッシュエリア内に着陸静止の場合は100点を加点する。フルマークした場合は3,000点だ。

 この飛行競技のほか、プレゼンテーションも重要なポイントとなる。国際的な活躍を学生たちにしてもらいたいことから、すべて英語によるポスター(A1サイズまで)での発表となる。ポスターには機体のコンセプト、設計方法、製作方法、安全性に配慮したか(自作部品の使用、衝突に対して)に関する記述を必ず含める必要がある。これらポスターを審査員が審査して回り、評価要素の1つとなるわけだ。

予選は48チームが参加

 今回は全51チームがエントリーし、その内3チームが棄権したため、全48チームが予選に参加。参加チーム数が多いため、予選は初日と、2日目の午前中の2回に分けて実施された。海外チームは、韓国のKAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)、インドネシアのInsutitut Teknologi Bandung(バンドン工科大学)、台湾のNational Formosa University(国立虎尾科技大学)の3チームだ。機体名と参加チームは以下の通り(機種名/チーム名)。アルファベット順、続いて五十音順だ。

【予選参加チーム】
・Angel Flight/Dept. of Automation, National Formosa University
・bardiche/青森職業能力開発短期大学校
・Booing707 Joyfull-200/中日本航空専門学校
・Bul-Bul 2.0/Insutitut Teknologi Bandung
・C-1WS/早稲田大学宇宙航空研究会
・Challenge Fluid 02号/木更津工業高等専門学校
・Egret/大阪府立大学大学院工学研究科航空宇宙海洋系専攻
・HYKY/東京都立産業技術高等専門学校航空宇宙工学コース
・ICARUS-FW/Department of Aerospace Eng, KAIST
・KROMA-T/山口大学工学部機械工学科
・K-wave/名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻
・Leaf/神奈川工科大学航空研究部
・Libellen-09/日本大学大学院理工学研究科航空宇宙工学専攻
・Mayfly4/秋田工業高等専門学校専攻科
・Mayfly5/秋田工業高等専門学校
・Mr.すみっち号/山口大学大学院理工学研究科
・N2-09/名古屋工業大学機械工学科
・NRJ1/東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻
・NRJ2/東北大学工学部機械知能航空工学科
・poop/名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻
・ProgressIII/慶應義塾大学理工学部機械工学科/ロボット技術研究会
・Sky-α/東海大学工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻
・T-09/早稲田大学
・Windmill/金沢工業大学工学部航空システム工学科
・YCF/静岡理工科大学理工学部機械工学科
・YSE_ChallengeSpirit/横浜システム工学院専門学校システム工学科
・あめんぼ/東京大学航空宇宙工学専攻
・いときゅう/九州大学工学部機械航空工学科
・インスィーダ/帝京大学理工学部航空宇宙工学科
・カジノフライト/東海大学工学部航空宇宙学科
・ガルーダ/帝京大学理工学部航空宇宙工学科
・コスモデルタ/青森職業能力開発短期大学校
・茂弐号/東北大学
・シュヴァルベ/埼玉県立新座総合技術高等学校電子機械科
・震電・改/大阪産業大学飛行ロボットプロジェクト
・すーぱーぽんぽん号/東京大学工学部航空宇宙工学科
・せとちゃん/首都大学東京システムデザイン研究科航空宇宙システム工学域
・聖美也/早稲田大学基幹理工学部機械航空学科
・ちくわ天/日本大学理工学部精密機械工学科
・丁カラス/東京大学大学院工学系研究科
・ツッケロ/早稲田大学理工学部機械工学科
・トビウオ1号/鹿児島工業高等専門学校機械工学科
・ハイライト/新居浜工業高等専門学校
・隼/金沢工業大学工学部航空システム工学科
・飛脚/東京都立産業技術高等専門学校航空宇宙工学コース
・ひよっこ/久留米工業高等専門学校翔同好会
・ふってふってFIT/福岡工業大学ものづくりセンター飛行ロボコンプロジェクト
・リンリン号/久留米工業高等専門学校機械工学科

決勝には17チームが進出

 決勝は2日目の午後に実施された。予選で、まず帰還まできちんと行なえたチームで得点による順位を決定し、帰還できなかったチームはその後から順位を決定。要は、決勝に進出するためには、途中がどれだけよくてもしっかりスタート・フィニッシュエリアに着地しなかったら意味がないというわけである。そのため、決勝に進出した下位のチームよりも得点をゲットしているにも関わらず、予選落ちとなったチームもいくつかある。

 決勝に進出したのは、全部で17チーム。17というと少々半端な数だが、それには理由がある。決勝進出には、両予選の上位5位までの計10チームが無条件で進出できる。続いて、残ったチームのそれぞれ上位5~10チームを選出し、予選順位を決定。得点で見た時に予選17位までと18位以降では大きな得点差(400点以上)があったことから、17位までを決勝進出とした。また、決勝に進出したチームは、決勝、予選どちらも帰還した場合は、得点の高かった方が最終得点とでき、それで総合順位が決定するという、ここでも少し変わったルールが採用されている。要は、もし決勝で得点が伸びなかったとしても、予選の得点がブッチギリの高得点で1位だった場合、決勝でどのチームもそれを越せなければ、優勝となるというわけである。決勝進出17チームは以下の通り。得点順で掲載した(決勝の飛行順とは別)。

【決勝進出17チーム】
・ 1位:Mayfly5(メイフライ・ファイブ)/秋田工業高等専門学校/2739点
・ 2位:Libellen-09(リーベレン・ゼロキュー)/日本大学大学院理工学研究科航空宇宙工学専攻/2668点
・ 3位:Mayfly4(メイフライ・フォー)/秋田工業高等専門学校専攻科/2533点
・ 4位:T-09(ティー・ゼロキュー)/早稲田大学/2484点
・ 5位:Egret(イーグレット)/大阪府立大学大学院工学研究科航空宇宙海洋系専攻/2467点
・ 6位:カジノフライト/東海大学工学部航空宇宙学科/2374点
・ 7位:ICARUS-FW(イカロス・エフダブリュー)/Department of Aerospace Eng, KAIST/2330点
・ 8位:隼(ハヤト)/金沢工業大学工学部航空システム工学科/2284点
・ 9位:リンリン号/久留米工業高等専門学校機械工学科/2262点
・10位:Leaf(リーフ)/神奈川工科大学航空研究部/2089点
・11位:Bul-Bul 2.0(ブルブル・トゥーポイントゼロ)/Insutitut Teknologi Bandung/1933点
・12位:あめんぼ/東京大学航空宇宙工学専攻/1766点
・13位:Windmill(ウィンドミル)/金沢工業大学工学部航空システム工学科/1634点
・14位:ひよっこ/久留米工業高等専門学校翔同好会/1433点
・15位:N2-09(エヌツーゼロナイン)/名古屋工業大学機械工学科/1356点
・16位:poop(プープ)/名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻/1351点
・17位:ちくわ天(チクワテン)/日本大学理工学部精密機械工学科/1302点

全48チームの頂点に立ったのははたして!?

 この競技では、トーナメントやリーグ戦のような形は取っておらず、決勝進出チームがすべて飛び終えた後、集計を行ない、結果は表彰式で発表するというスタイルなので、先に順位を発表し、その後にフライトの様子を動画で紹介したい。まずは、10位から7位までだ。10位「N2-09」は、予選15位から800点以上獲得してジャンプアップし、トップ10入りを果たした。9位「隼」は、予選から1ランクダウン。決勝時の得点は予選時よりアップしているのだが、上位にそれよりも大幅にアップして抜いていったチームがあるというわけだ。8位の「ICARUS-FW」は韓国KAISTの宇宙工学専攻のチームの機体だ。こちらも予選時の順位より1ダウン。決勝は調子が悪く、予選時の半分以下の点数となったため、予選時の点数で最終順位8位となった。7位の「カジノフライト」もやはり1ダウン。点数自体はわずかに決勝で7点ほどアップしているのだが、予選順位をキープできず。

 なお、得点は予選と決勝の内の高かった方のもので、予選の方が高いチームの場合は、決勝時の得点をカッコ内に合わせて表記している。また、最後の順位は予選での順位を表し、矢印は予選時より上がっていれば「↑」、下がっていれば「↓」、変わっていなければ「-」だ。

【最終順位10位~7位】
・10位:N2-09/名古屋工業大学機械工学科/2,168点/15位↑
・ 9位:隼/金沢工業大学工学部航空システム工学科/2,328点/8位↓
・ 8位:ICARUS-FW/Department of Aerospace Eng, KAIST/2,330点(1,185点)/7位↓
・ 7位:カジノフライト/東海大学工学部航空宇宙学科/2,381点/6位↓

10位の名古屋工業大学機械工学科の「N2-09」金沢工業大学工学部航空システム工学科の「隼」
KAISTの「ICARUS-FW」東海大学工学部航空宇宙学科の「カジノフライト」

 続いては、最終順位6~4位を紹介。ここから上は表彰もされ、協賛メーカーによる副賞も与えられる。6位は双葉電子工業賞、5位はOBK賞、4位は大森学園賞となっている。双葉電子工業やOBKは、同コンテストの協賛企業で、4位の大森学園は、生徒たちが運営のサポートを行なっていた学校。ゲート通過の成功時に旗を上げたり、救援物資の中心点からの投下位置までの距離を計測したり、判定のサポートを担当していた。

【最終順位6~4位】
・6位:T-09/早稲田大学/2,484点(1,611点)/4位↓
・5位:リンリン号/久留米工業高等専門学校機械工学科/2,524点/9位↑
・4位:Libellen-09/日本大学大学院理工学研究科航空宇宙工学専攻/2,668点(1,269点)/2位↓

6位は、早稲田大学の「T-09」【動画】決勝でのT-09の飛行の様子5位は、久留米工業高等専門学校機械工学科の「リンリン号」
【動画】決勝でのリンリン号の飛行の様子4位は、日本大学大学院理工学研究科航空宇宙工学専攻の「Libellen-09」【動画】決勝でのLibellen-09の飛行の様子

 6位は予選時より2ランクダウンの「T-09」。予選4位という位置は、表彰台か否かの瀬戸際なので、かなり決勝では力が入ってしまったのではないだろうか。点を伸ばせず、予選時の得点で最終順位が決まった。9位からのジャンプアップで、他チームを軒並みランクダウンさせたのが、5位の「リンリン号」。250点以上決勝で得点をアップさせ、微増や減点してしまったチームを抜き去って入賞圏外から5位をもぎ取った。4位は、「Libellen-09」。予選時は、トップの「Mayfly5」との差がわずかに71点で2位だったため、こちらも力が入ってしまったのだろう。決勝での得点は半分以下に激減してしまい、点を伸ばせず。表彰台圏外に落ちてしまった。この辺りに来ると、かなりハイレベルな闘いといえる。

 続いては、3位の発表。JAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)賞を獲得したのは、秋田工業高等専門学校の専攻科(高等専門学校の専攻科は、高等専門学校を卒業すると進める、学士の学位も取得できる課程)の生徒たちのチームによる「Mayfly4」! 予選は2,533点で3位通過し、決勝ではさらに168点も伸ばして2,701点でとし、3位キープとなった。逆に見れば、それだけ高い得点を上げても上へ行けなかったことから、相当ハイレベルな闘いだったことがわかってもらえることだろう。ベスト3以上の機体については、簡単ながら特徴を紹介させていただく。Mayfly4はアスペクト比が低く、正方形に近い翼を有していることが外見的なポイント。翼の形状を正方形に近くすることで、低速飛行での安定性が増すので、救援物資の投下でそれだけ狙った場所に落としやすくなるということになる。実際、物資A~Cのそれぞれの中心からの投下地点までの距離の合計は予選時が317cmで5番目、決勝時の199cmは予選と合わせても2番目という高精度だった。惜しむらくは、着陸時に滑走路上で止まれなかったこと。止まれていれば100点が加算されて2,800点台に入っていただけに、結果を大きく左右していたに違いない。また、決勝での飛行順もトップバッターだったことは、少々不利だったのではないだろうか。もう少し後ろの順位で飛べていれば、緊張の具合も違っていたかもしれない。

空中静止に近い低速状態から救援物資を投下できるMayfly4(練習中の様子)【動画】決勝でのMayfly4の飛行の様子

 続いて2位は、予選5位からジャンプアップした、大阪府立大学大学院工学研究科航空宇宙海洋系専攻の「Egret」! 予選時の2,467点から2,735点にまで一気に得点を伸ばし、2位の座とモノづくり体感スタジアム賞を獲得した。特に、決勝時の救援物資の投下精度の高さは抜群で、合計で165cmという、予選・決勝通じて最も高い精度を記録した。個別に見れば、決勝出場機体の中では、Mayfly4が物資Cで31cmを記録しているが、Egretも同じく物資Cで34cmを記録している(ちなみに、全機体の内、最も中心に近かったのは、東京都立産業技術高等専門学校航空宇宙工学コースの「飛脚」が予選時に物資Bで記録した8cm)。

 これで後はMayfly4同様に着陸時に滑走路上で停止できていたら、2,800点台に入っており、すでにどのチームが1位か読者の方は消去法でおわかりだと思うが、その上に行けていたはずである。実際、滑走路上に着陸はしたのだが、機体が滑走路に刺さった状態になり、滑走路上に着陸成功とは見なされなかったという本当にわずかな不運があった。また機体の特徴だが、主翼の間に大きな空間があり、これによって横(ロール軸)方向の安定性を実現しているそうだ。

大阪府立大学大学院工学研究科航空宇宙海洋系専攻の「Egret」。2つのプロペラを持つ【動画】決勝でのEgretの飛行の様子

 そして、優勝機体の発表。予選時に得点2,739点を記録し、決勝では自分たちも含めてどのチームも突破できなかったことから、そのまま秋田工業高等専門学校の「Mayfly5」が優勝となった。優勝チームには日本航空宇宙学会賞が贈られる。前述したように、先輩たちのMayfly4が3位だったことから、秋田工業高等専門学校は1-3フィニッシュを達成した形だ。大会でも屈指の大きさと、安定感を誇る機体だ。主翼のアスペクト比は、Mayfly4が0.7なのに対してMayfly5は1.0で、ほぼ正方形に近い。2,739点を取った機体に対し、課題を挙げるのは難しいのだが、物資Aが42cm、同Bが74cmと二桁台だが、物資Cが145cmとやや離れてしまったところぐらいか。離陸はもちろん、着陸も滑走路上で文句なし。接地ゼロ、ゲートと宙返りはともに3回、手放しも成功と、これ以上点を上げろという方が無理難題というほどの高得点である。しかし、結果として2位のEgretとの差はわずかに4点。3位の同門Mayfly4も38点しか離れていないため、EgretとMayfly4の操縦者がもし着陸を完璧に決めていたら、優勝はわからなかったというところである。まさに激戦だったといえよう。

秋田工業高等専門学校の「Mayfly5」。Mayfly4の弟分といえるが、兄に接戦の末に勝利した【動画】決勝でのMayfly5の飛行の様子
Mayfly5を製作した秋田工業高等専門学校の生徒たちの表彰式の受賞の様子大会終了後、バックステージにおいて全メンバーで記念撮影。おめでとう!

【最終順位3~1位】
・3位:Mayfly4/秋田工業高等専門学校専攻科/2,701点/3位-
・2位:Egret/大阪府立大学大学院工学研究科航空宇宙海洋系専攻/2,735点/5位↑
・1位:Mayfly5/秋田工業高等専門学校/2,739点/1位-

 なお、決勝に参加したチームの最終順位11~17位は以下の通り。

【最終順位11~17位】
・11位:Leaf/神奈川工科大学航空研究部/2,089点(1,502点)/10位↓
・12位:Bul-Bul 2.0/Insutitut Teknologi Bandung/1,933点(1,919点)/11位↓
・13位:あめんぼ/東京大学航空宇宙工学専攻/1766点(1,104点)/12位↓
・14位:ひよっこ/久留米工業高等専門学校翔同好会/1,637点/14位-
・15位:Windmill/金沢工業大学工学部航空システム工学科/1,634点(1,110点)/13位↓
・16位:poop/名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻/1,351点(558点)/16位-
・17位:ちくわ天/日本大学理工学部精密機械工学科/1,302点(1,218点)/17位

 また予選敗退チームを含め、複数の賞が設けられた。そちらは以下の通り。

・ベストプレゼンテーション賞(三菱電機賞):あめんぼ/東京大学航空宇宙工学専攻/最終順位13位
・ベストデザイン賞(エアバス・ジャパン賞):リンリン号/久留米工業高等専門学校機械工学科/最終順位5位
・ベストデザイン賞(日本航空賞):ちくわ天/日本大学理工学部精密機械工学科/最終順位17位
・ユニークデザイン賞(ベストテック賞):poop/名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻/最終順位16位
・ユニークデザイン賞(ダッソー・システムズ賞)インスィーダ/帝京大学理工学部航空宇宙工学科/最終順位19位(予選敗退)
・ベストクラフト賞(三菱重工業賞):隼/金沢工業大学工学部航空システム工学科/最終順位9位
・ベストパイロット賞(ヒロボー賞):Bul-Bul 2.0/Institut Teknologi Bandung/最終順位12位

 以上、第5回全日本学生室内飛行ロボットコンテストをお送りしたが、いかがだっただろうか。200gという機体重量になると、ホバリングというか、まるでハチやチョウ、鳥のような実機の飛行機では絶対に見られないフワッとした飛び方を見られて、非常に面白かった。生物の羽ばたきを応用した飛行システムを研究している大学や研究機関もあるそうだが、こういう柔らかい飛び方を実機に取り入れることができたら、騒音と排ガスをまき散らす非エコロジー的な現在のジェット機などのイメージを変えられるのではないかと思うのだが、いかがなものだろうか。こういう飛び方のできるパーソナルフライトシステムが開発されてみんなが空を飛べるようになれれば、渋滞問題とかも解決できるだろうし、空を飛ぶ爽快感がストレスを軽減するのに役立つに違いない。ぜひ、このふぃ~んという柔らかい感じで飛ぶ飛行ロボットたちの感覚を、近未来型エンジニアの学生さんたちには忘れないで社会に出てからも実機の開発に役立ててほしいものである。



(デイビー日高)

2009/10/20 18:47