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理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター、クマ型の介護支援ロボット「RIBA」を発表

〜力覚で介助者と協調、両腕で人間の抱き上げを補助


 独立行政法人理化学研究所(理研)と東海ゴム工業株式会社による連携研究センターである「理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター(RTC)」は、8月26日、介護支援ロボット「RIBA(Robot for Interactive Body Assistance、リーバ)」を開発したと発表し、理化学研究所の名古屋支所にて記者会見とデモンストレーションを行なった。

 「RIBA」は両腕を使って人をベッドや車椅子から抱き上げ、移動し、抱き下ろす一連の移乗作業を行なうことができる双腕型のロボット。完全自律で独立して動くロボットではなく、介助者が「RIBA」を抱き上げ補助ツールとして用いることで、介護の負担を軽減することができるという。

 外見はクマをモチーフにした親しみやすいデザインで、全身が発泡ウレタンやシリコンなどの柔らかい素材で覆われており、触覚センサーが内蔵されている。下半身はオムニホイールによる全方向移動台車。今後改良を続け、数年以内に介護施設でモニター使用し、最終的には、東海ゴムによる商品化を目指す。

 「RIBA」のスペックは、高さ140cm、重量180kg(バッテリ含む)。自由度は片腕7×2、腰2、頭1+2(未使用含む)、台車部4。バッテリはニッケル水素で、駆動時間は1時間程度。全身に介護者とロボットの協調作業を行なうための触覚センサーを持ち、両眼部分はステレオカメラで顔認識、指示者追従ができる。2つのマイクロフォンを使って音声認識、音源定位ができる。ハンドは平手だが、先にはタッチセンサーがつけられており、人が握ると手を振るといった握手的な動作でコミュニケーションできる。

「RIBA」正面。身長140cm 側面。重量は180kg 背面。自由度は全部で23
親しみやすいクマ顔。 眼の部分にはカメラが入っている ステレオカメラによる顔認識機能のデモの様子
頭部側面。マイクが見える 前後に動く肩関節部分。Ri-MANの時の経験を活かしていろいろ改良したという 手先部分。タッチセンサーが内蔵されている
バストショット お姫様抱っこするときのポーズ 台車下部。正面についているのはキャスター
理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター ロボット感覚情報研究チーム チームリーダー向井利春氏

 開発主体である「理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター」は2007年8月に設立された、2012年3月までの時限プロジェクト。理研が2006年3月に発表した同じコンセプトのロボット「RI-MAN」を基盤として、介護現場で活躍できる「人と直接ふれあう人間共存ロボット」の実用化を目指している。

 2006年発表の「RI-MAN」はあらかじめ決められた位置に座っている18.5kgの人形を抱き上げることに成功したが、安全性、可搬重量、関節可動範囲、動作精度などにまだ課題があり、たとえば人形を下ろすこともできなかった。「状況に対する柔軟性が不十分だった」と、RTC ロボット感覚情報研究チームチームリーダーで「RIBA」の開発責任者である向井利春氏は当時を振り返った。

 いっぽう、今回開発された「RIBA」は実際に人を抱き上げられるだけの強度、安全性を持ち、介護される人の位置、姿勢など、環境の変化に対応して作業できる能力を持つ。介護者とロボットがロボットの全身触覚を通して協調作業を行なえる点が大きな特徴だ。

 また全身にネットワークを使った分散処理を採用。dsPICを用いた情報処理ボードを全身に20枚以上使っており、ボード1枚で64素子が載ったセンサーシート1枚を1ms以内に処理できるという。中枢処理系にはCore2 Duo 2.2GHzが使われている。

理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター(RTC)の概要 開発背景は介護力不足を補うこと 「RIBA」の概要
RIBAの仕様 「RIBA」の前身にあたる「RI-MAN」。2006年に発表された。 トサカのついた頭のデザインが当時も話題を呼んだ
分散情報処理 全身に触覚センサー

 実際に抱き上げ可能な限界重量は、まだ実験によって突き詰めてはいないため分からないが、設計上は120kg程度まで支えられるはずであり、これまでに体重61kgの男性を持ち上げたことがあるそうだ。なお、これまでに抱きあげを試したことがあるのは4名。抱き上げられた様子は、見た目は不安定で疲れそうに見えるが、実際には安定しており、抱えられているほうにも非常に安心感があるという。デモの様子をご覧頂きたい。

【動画】ベッドから女性を抱き上げる。介助者がRIBAの腕を取って誘導することで直接操作する 【動画】抱き上げた女性をベッドに下ろす。このときも力覚を通した介助者との協調作業 【動画】車椅子の女性をだきあげる。まずは指示に従い、基本姿勢から車椅子からの抱き上げ姿勢に移行、その後、介助者に誘導されて抱き上げ作業
【動画】抱き上げた女性を介助者と一緒に下ろす。 【動画】別の角度から再び。車椅子からの抱き上げ姿勢に移行、抱き上げ。こちらは足の持ち上げにも注目 【動画】女性を抱き上げた状態で介助者に誘導されてベッドへ移動、移乗させる
【動画】片手を差し出し、握手のような動作 【動画】両腕を差し出した状態でベッドへと前身、後退 【動画】介助者の誘導で前進、腕を動かす模様を横方向から。抱き上げるにつれてRIBAが上体をそらせていく
【動画】ベッドへ下ろす様子を横方向から 【動画】介助者の誘導で腕を動かす様子をアップで。介助者が使うスマートツールとしてのロボットであることがよく分かる だきあげている腕部分
抱き上げている状態で側面から。 ロボットの胸部分にも体重をかけるようにしているという 太い腕で抱かれているようで安心感があるとのこと
あくまで介助者が主でロボットが従 車椅子への移乗の様子 「RIBA」による抱き上げ

 「RI-MAN」はアルミ合金を用いていたが、「RIBA」では前腕に高強度樹脂を用いて構造を最適化することで腕部の重量をおおよそ半分に減らした。また出力比を上げるために、モーターをペアで協調させて用いる「干渉駆動」機構を改良したことで、細い腕で大きな出力を出すことに成功した。干渉駆動機構は各腕に3 組ずつ搭載されている。実際には曲げとひねりの2種類一組の動作を、かさ歯車機構を利用した二つのモーターの差動によって実現している。曲げ、あるいはひねりのどちらかいっぽうだけが必要な場合は、モーター2個分のトルクを合わせた力が出せるようになっていて、肩の振り上げや肘の曲げ伸ばしにパワーを発揮するという。

 「RIBA」は全身を覆う触覚センサを使うことで、操作したい部分に直接ふれて、ロボットに働かせたい力の方向と動きを直感的に合わせることができる点が大きな特徴。たとえば「RIAB」の腕を直接引くことで移動させたり、腕の関節角度を変えることができる。分布型の触覚情報が得られるのでパターン処理ができ、たとえば本来、触られるはずのないときに触られると予期しない接触だと検知して、停止するといった機能を持つ。現状では接触点と押された力しか分からないが、将来的にはねじりのようなせん断力も検出できるようにしたいという。またオムニホイールを使っているため、病室のような狭いところでも動きやすいとしている。

樹脂にすることで軽量化した 120kgを支えられるはずとのこと 干渉駆動機構をさらに改良した

 クマ型のデザインはデザイナーからの複数のデザイン提案に対して開発メンバーたちが投票し、多数決で選ばれた。特に女性受けが非常に良いそうだ。向井氏は「あまり人に似せると不気味になる」と考えて、クマ型を選んだという。なお実際にデザインを行なったイラストレーターの大嶋佳子氏(スタジオmarron)によれば、クマはクマでも「シロクマ」であるとのこと。大嶋氏は、デモのときには抱き上げられるモデルをつとめていた。駆動音も「RI-MAN」よりも低減させて、病院の待合室で許容される程度の音量である53.4dBにおさえた。安全性の検証には、動力学シミュレータも用いている。

 今後は、環境認識能力を上げ、自律性を高める。また人と力のやり取りができる能力を生かして、リハビリなどへの展開も検討していき、現場の要請に合わせて改良していく。最終的には東海ゴムによる商品化を目指すと述べた。

デザイン案から多数決でクマが選ばれた。初期デザイン案ではクマの上にさらにヒヨコ 動力学シミュレータでの検証 今後の予定
理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター連携センター長 細江繁幸氏

 理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター(RTC)連携センター長の細江繁幸氏は、「介護は非常に重要な問題。ロボットを通して少しでも貢献できることはありがたいこと」と述べて、センターの概要を紹介した。RTCの前身は1993年に設立されたバイオミメティックコントロール研究センター(BMC)で、その第2期、2002年ごろにBMC独自のロボットを作ろうということになったのだという。そのなかで開発されたのが人を抱き上げることができる「RI-MAN」である。そして2006年末から東海ゴムと連携研究について協議が始まり、2007年8月、東海ゴムとの連携センターが設立された。なお 2008年9月にBMCは終了しており、その後、ロボット研究はRTCに受継がれた形となっている。

 介護を支援するためには、新規の要素技術が必要になる。直接、人間とロボットが接触するからだ。人間とロボットの動きを協調させなければならない。そのために機能性材料を用いた新センサーやアクチュエータが必要となるし、介護動作の解析・モデル化も必要となる。

東海ゴム工業株式会社 新事業開発研究所 副所長、理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター連携副センター長 加藤錬太郎氏

 東海ゴム工業株式会社 新事業開発研究所副所長で、同連携副センター長の加藤錬太郎氏は、東海ゴム工業株式会社について解説した。同社は制御式エンジンマウントなどに用いられている防振ゴムのほか、免震デバイスなどで知られる企業。新商品・新事業創出の枠組みのなかでの一つとして理研と連携研究をすすめているという。理研の制御・ロボット技術と、東海ゴムの持つ新機能材料技術の融合によって、人に優しく接することのできる介護ロボット実現を目指していると語った。

 また、ロボット開発にあたってセンサーや表面の整形など新規の要素技術を開発する必要があり、実際にさまざまな要素技術が生まれ始めている、と連携研究の意義を述べた。ロボット本体よりも先に、要素技術が市場に出る可能性も高いそうだが、現段階ではまだ公にできるものはないとのこと。また、あくまで「個人的な考え」として「10年以内に数百万円代でロボットを商品化したい」と語った。

BMCからRTCへと続いた理研名古屋でのロボット開発の歴史 RTCでのロボット開発の目的 東海ゴム工業株式会社では人にやさしい介護ロボットの実現を目指す

 会見の最後に、開発リーダーの向井氏は「大事なことは介護者とロボットの協調にある。実際の介護現場でも移乗は必ず何人かで分担して行なう作業だ。そのなかで重量的に一番きついところをロボットが担当するというイメージ」だと、人間とロボットの協調作業であることを強調した。

会見の行なわれた理研・名古屋支所 会見の席に置かれていたRIBAの模型。CADから起こされた正確なもの 台車の下はこうなっている
抱き上げ実験用のダミー人形 腕部のプロトタイプ。RI-MANよりもさらに前のものとのこと 干渉駆動部分


(森山和道)

2009/8/28 02:45

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