東京ユビキタスガイド2009(前編)
~都庁展望室と上野動物園で体験する“ユビキタス”
都庁展望室からの景観とコミュニケータ。新宿高層ビルの情報が多量にすぐにわかる |
4月から東京都庁展望室での運用がスタートしたことで、現在、東京では5つの施設・地域でユビキタス情報サービスが実際に運用されている。都庁展望室のほかには、上野動物園、東京ミッドタウンのユビキタス・アートツアー、伊勢丹新宿店屋上庭園アイ・ガーデン、そして北品川から青物横丁までの(旧)東海道沿いの品川宿エリアの「東海道五十七次ユビキタス計画」(五十三次ではない理由は後ほど説明)の5施設・地区だ。今回、そうした「東京ユビキタスガイド2009」として、まず前編では東京都が推進する「東京ユビキタス計画」と、その計画の一端として実施された実証実験の成果を活用して運営されている都庁展望室および上野動物園のユビキタス情報サービスを紹介。そして後編では、企業によって運営されている東京ミッドタウンのユビキタス・アートツアー、伊勢丹新宿店アイ・ガーデン、東海道五十七次ユビキタス計画を紹介する。また後編では合わせて、牽引役であり、TRONの開発でもお馴染みの東京大学大学院情報学環教授兼YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長の坂村健氏へのインタビューも掲載。今後の展開などをうかがってみた。東京のユビキタス情報サービスの現状と今後の展開をご覧いただきたい。
●情報通信技術的に世の中をもっと便利にしてしまおうというのがユビキタス
まずはユビキタスについて触れておこう。ユビキタスという言葉は、「どこにでも存在する」という意味のラテン語だ。概念としては、誰であろうと何であろうといつどこででもネットワークとコンピュータに簡単につながり、情報支援を容易にしてもらえるシステム、といったものである。人と人、人と物・場所、物・場所と物・場所などが、コンピュータやセンサーを通してネットワークで結びつき、人がその場その場で本当にほしい情報をすぐさま提供してもらえる便利な世の中にしてしまおうというコンセプトだ。
それを実現する手段として、まず身の回りにあるさまざまな物がそれぞれどんな物であるのか、またさまざまな場所がそれぞれどんな場所であるのかといった識別を行なうために、ucodeという固有IDを割り振る仕組みを採用している。ICタグや無線マーカ、赤外線マーカなどをあらゆる場所や物などに埋め込み、それぞれに割り振られたucodeを発信、情報端末を通して物や場所の情報を提供するというわけだ。ucodeは128bit長のコードで、2の128乗≒3.4×10の38乗という膨大な数値である。どれぐらい膨大かというと、毎日1兆の物や場所に固有の番号を割り振ることを1兆年続け、それを1兆回繰り返せるという。しかも、必要に応じて128bit単位で拡張できるという仕組みなので、事実上、無限といって差し支えない。要するに、この世の中にIDを割り振れない物や場所はないといっていいのである。
ユビキタスについては、坂村氏がTRONとワンセットで提唱している概念で、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所を設立して研究開発し、推進している。近年は、コンピュータやセンサーの小型化・低価格化が進んだことで、ハードウェア的に理想的な状況になってきており、実証実験も随分と行なわれるようになっている。また、特定の施設や地域では本格運用もされるようになってきているという次第。そこで今回、東京においてユビキタスシステムが本格運用されている施設や地域を紹介しようということで、各施設や地域を回ってみたというわけである。
ユビキタスシステムの概念図。第5回東京都ICタグ実証実験実行委員会資料より | 実際に使用されている機器など。第5回東京都ICタグ実証実験実行委員会資料より | TRONとユビキタス計画を推進する東大教授の坂村健氏。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所にて |
●東京都が進める東京ユビキタス計画
東京のユビキタスを語る上で、まず外せないのが、「東京ユビキタス計画」だ。同計画は、東京都がYRPユビキタス・ネットワーキング研究所の協力を得て2005年から実証実験を行なっているもの。ユビキタス社会の実現に向けて、日本の情報技術をベースに情報インフラの整備を推進するとともに、国際展開を視野に入れた標準化も目指しているという計画だ。つまり、東京を便利なユビキタス都市にしてしまおう、そしてそこで開発された技術や機器を世界標準にしてしまおうというわけである。また、国土交通省の「自律移動支援プロジェクト」とも連携して進められている。
現時点で、同計画による実験の成果を活用して運用されている施設・場所は、都庁展望室と上野動物園のふたつ。あとは、銀座エリアと都庁を含む西新宿エリアで年に1回、一定期間実証実験が行なわれているという(昨年度末となる今年の2~3月に行なわれ、今年度は10月から行なわれる予定)。そのほかの東京ミッドタウンのユビキタス・アートツアー、伊勢丹新宿店屋上アイ・ガーデン、東海道五十七次プロジェクトはそれぞれ異なる企業が運営しており、YRPユビキタス・コンピューティング研究所製の機器を使っているといった理由から、ゆるやかに東京ユビキタス計画とは関連しているという。基本的には個々の運営会社のサービスである。
使用機器としては、現在はucodeタグリーダもしくはその機能を内蔵したコミュニケータをICタグにかざしたり、設置された赤外線マーカなどに接近させたりすることで、目の前にある展示物や施設、植物や動物といったものの情報を得られるという仕組みだ。前述したように、5施設・地域ともすべてYRPユビキタス・コンピューティング研究所製の機器を利用しているが、開発時期や情報の見せ方などが異なるため、それぞれ形状や機能、性能などがハードウェア的にもソフトウェア的にも若干異なっている。最新のコミュニケータは、今年2~3月の実験を経て、4月から運用(一般公開)を開始した都庁展望室で利用されているものだ。コミュニケータはどのタイプもタッチパネル式になっていて、ボタンや画面上の番号などを触ることで、情報の提示や画面の切り替えなどを行なえる方式を採用している。いわゆる、直感的なインターフェイスになっているというわけだ。
東京ユビキタス計画の今後の予定は、「第12回東京都ICタグ実証実験」が、前述したように今年の10月から再び西新宿と銀座の両エリアで行なわれる。公募モニターではなく、両エリアを訪れる一般人を対象とし、両エリアの3~5軒のホテルで宿泊客に機器の貸し出しを行ない、既に稼働中の都庁展望システムを含めた都庁舎見学コースに拡充したものと、銀座エリアの店舗の案内情報の提供を行なったりする予定だ。ホテルや旅行会社、観光タクシー、店舗など民間の参画を促し、民民の連携を強めることでビジネスモデルの可能性を探るとしている。また、障害者の一人歩きのサポートが可能かどうかの検証や民間企業等に実験エリアを提供し、技術開発やビジネスモデル構築を支援する実験も行なわれる予定だ。
さらにその先の展開としては、2016年の誘致を目指す夏期オリンピックも含めた東京の整備の一環として、競技会場予定地等を中心とした10の地域を重点整備エリアとして、街のユビキタス化を進めていく予定だ。日本語のわからない外国人観光客でも安心して自分たちだけで東京を歩けるようにという言語的・情報的なバリアフリー化の目的もあり、重点整備エリアは外国人観光客が多い、または利用者が多い駅を擁するエリアにもなっている。具体的には、東京、銀座、新橋、臨海(お台場や有明など)、品川、六本木、赤坂、渋谷、原宿、新宿、神宮、池袋、上野、浅草、秋葉原、御茶ノ水、飯田橋の10エリアだ。この中で、浅草や秋葉原などは、過去の実験の舞台となったこともある。こうした首都圏に住む人だけでなく、日本人なら多くの人が知っているような、テレビドラマの舞台にもよくなるような街が、2016年までにユビキタス都市になるかもしれないということで、個人的には楽しみである。
今年10月予定の第12回実験のエリア。第12回東京都ICタグ実証実験実行委員会資料より | 銀座実験エリアの地上と地下の詳細マップ。第5回東京都ICタグ実証実験実行委員会資料より | 重点整備が予定される10地域。「10年後の東京 ~東京が変わる~」より |
●最新のコミュニケータを利用できる都庁展望室
続いては、現在最新の端末が配備されている都庁展望室からだ。第一本庁舎の北塔・南塔どちらの展望室でも利用でき、コミュニケータの貸出・返却カウンターは、第一本庁舎1階の出入口より右手にある「東京観光情報センター」出入り口に設けられている。10台のコミュニケータが用意されており、その場で申し込んで無料で借りることが可能だ(事前予約はできない)。10時から17時まで利用可能で、貸し出し自体は16時30分まで。機器は、コミュニケータ本体と、クリップ式の片耳用イヤフォンおよびボリュームコントローラ、その両者をつなぐコードという非常にシンプルな構成。コミュニケータは、iPhoneのように画面が大きいこと、薄いことなどから先進的なイメージのデザインとなっている。
東京都庁第一庁舎。このツインタワーの最上階の展望室でユビキタスシステムを利用できる | 展望室内の様子。喫茶・食事スペースなどもある | 東京観光情報センター入口にある貸出・返却カウンター |
ユビキタス・コミュニケータ一式 | コミュニケータ本体 | 横方向から、かなり薄いのがわかる |
前端。赤外線の受光部などがある | 後端。ヘッドフォン端子などがある |
コミュニケータを持って窓際に立つと、まず「パノラマ」機能として、その窓から見える景色が画面に映し出される。その中の新宿エリアの高層ビル、新宿中央公園や新宿御苑といった公園、東京西部の山(遙か遠くの富士山も含む)、そのほか首都圏の各種ランドマークにはピン(番号)があるので、それを画面上でタッチして選ぶと、それらについての情報を画像とテキスト、音声などで得られるというわけだ。すべての窓ごとに変わるというわけではないが、見る方位を変えて景色が変化すると、画面に映し出される内容も変化する。仕組みとしては、窓の上部に赤外線マーカが設置されており、そこから発信される場所コードを読み取ることで、見た目と同じ景色が画面に表示されるようになっているというわけだ。
東向きの窓に向かうと、こんな画面 | 実際に窓から撮影した東向きの景観。初期からの新宿高層ビル郡が見える方位だ | コクーンタワーをタッチしてみると、これだけ充実した情報が表示される |
遠くの山々も収録されている。取材した日は、残念ながら雲がかかっていて富士山は見えず | 窓上部(ここはさらにパネルの上側)に設置された赤外線マーカ。これが現在位置を伝える | 1階エレベーター乗り場にもマーカが設置されている |
パノラマ情報以外にも、読み物的な位置づけのコンテンツが複数有る。「音声ガイド」の中には、都庁展望室の景観を総括して案内してくれる「東京パノラマガイド」、建築家の隈研吾氏が東京の建築物を案内してくれる「隈研吾の東京建築探訪」、照明デザイナーの石井幹子さんへのインタビュー「石井幹子が語る東京の“あかり”」、石原慎太郎都知事等が東京に対する思いを話している「東京概要」の4コンテンツがある。そのほか、オリンピックや「緑の東京募金」などについて学べる「都政情報」、最寄り駅になどについての情報を得られ、なおかつカウンターでプリントアウトもしてもらえる「便利情報」もある。
パノラマで収録されている全ランドマークの情報だけでも、非常に盛りだくさんとなっており、実は1回利用しただけでは、全部を読むのは不可能かも知れないと感じるほど。バッテリが最新バージョンだけあって長持ちするようになり、4時間に延びたので(従来機種は2時間ほど)、景色を見ずにひたすら読めばすべてを読了することも可能かも知れない。とはいっても、それも本末転倒な使い方なので、訪れる度に借りて、少しずつ情報を得ていくというのがいいのではないだろうか。
利用してみてまず感じたことは、前述した通り、情報の充実ぶり。近辺の高層ビルについては、都庁展望室の高さから見ると低めに感じるオフィスビルやマンションまでもフォローされており、地上から見て高いと感じるビルはほぼ網羅されているといっていい具合だ。しかも、情報としてはただ名称が収録されているだけではなく、いつ建築されたかなど、細かい情報も得られる。このコミュニケータがあれば新宿高層ビル通になれることは間違いない。そんな人がいるのかどうかわからないが、新宿高層ビルマニア(笑)がいたとしたら、高額な代金を支払ってでもコミュニケータをほしくなるのではないだろうか。
また新宿の高層ビルからの景観といえば、夜景の美しさも外せない。都庁展望室は17時までなので、冬場は終了間際までいればほぼ夜景に近い景色を見られるものの、やはりお目にかかるのはなかなか大変である。でも、コミュニケータは景観を昼夜切り替えられるので、いつでも夜景もチェックできるという仕組みだ。彼女や奥さんを喜ばせてあげるのに、情報収集に使ってみてはいかがだろうか。
また、間接的な形ではあるが、そんなコミュニケータの景観画像と現実の景観を比べると、当たり前だが建設中のビルは高さが変わっていたりして、あれだけ高層ビルが建っている西新宿なのに、まだ成長しているということがわかったりもする。こんな場合でも、画像を差し替えるだけですぐに対応できるので、安価に済む点も運営サイドとしては魅力だという。従来、景観に関する情報は、窓の上側に展示された景観パネルでランドマークの名称のみを得られる形だったが、このパネルを変えるには費用もかかるし、そうそう短期間に替えるわけにもいかない。でも、コンテンツの変更なら比較的容易に行ないやすいというわけだ。
コクーンタワーやドラマ「太陽にほえろ!」でお馴染みの元祖高層ビル群などが見える東側の夜景 | 3つの塔が段々になっている東京パークタワーが見える方向の夜景 |
ちなみに、少しだけ要望を挙げさせてもらうとすれば、貸出・返却カウンターをもっと目立つ場所に設置してみてはどうかというところ。東京観光情報センターを訪れる人のほとんどが、お土産を求めての外国人観光客だそうで、普通、貸出・返却カウンターがあることを知っている人以外はあまり日本人はやって来ないそうである。おそらく、こんな便利な機器があるのを知らずに展望室を訪れている人が圧倒的多数なのだろう。せっかくなので、第一本庁舎入ってすぐの総合案内所など、もう少し目立つ場所で行なうといいのではないだろうか。
もっとも、そうしたらそうしたで、受付の人たちの業務が増えるだろうし、コミュニケータの数が10台では不足する可能性も出てくるといった新たな問題が出てくることも予想される。なかなか簡単にはいかないだろうが、この便利な情報サービスは多くの人に使っていただきたいところだ。
また10月からの実証実験では、東京観光情報センターやトーキョウワンダーウォール(東京都の文化施策のひとつで、アーティスト支援として月ごとに年12人の作品が飾られる都庁の壁面)、議会棟などでも使えるようにし、近隣のレストランや宿泊施設情報などのコンテンツの充実も図るという計画もあるようだ。それから、近隣のホテル、ヒルトン東京、ハイアットリージェンシー東京、京王プラザホテルでも宿泊客にコミュニケータの貸し出しを行うのが決定済みだ。実証実験を行っている最中に、もしこれらのホテルに泊まることがあるようだったら、ぜひ借りてみてユビキタス体験をしてみてほしい。
●貴重な情報や映像も見られる上野動物園のユビキタス動物情報サービス
1882年開園で、日本の動物園としては最も歴史のある上野動物園。その後にオープンした全国の動物園では、サル山を造る際に同園のものを手本にしたそうで、まさに日本の動物園の元祖である。歴史があるだけに、ユビキタスという最新技術とは縁が遠そうな気がするかも知れないが、なんと90台ものコミュニケータを用意し、来園者に対して動物に関する動物情報サービスを行なっている。5カ所の内では最もコミュニケータが充実している施設だ。ユビキタス動物情報サービスが導入された経緯は、2005年10月から11月にかけて東京ユビキタス計画の一環として実施された「上野まちナビ実験」まで遡る。同園はこの時の実験で上野公園とともに対象エリアのひとつとなり、その成果を踏まえた形で、2006年10月より引き続き東京ユビキタス計画の一環として、東京都から依託される形で本格運用がスタートしたわけだ。
上野動物園のJR上野駅側の表門。国立科学博物館などがすぐ近くにある | ゾウのエリア「ゾウのすむ森」は東園の一角にある。この背中側に貸出・返却カウンターがある |
西園は不忍池に面しており、非常に開放感がある。東西両園は徒歩および日本初のモノレールで移動可能 | 現在、一番新しい施設が5月23日にオープンした「アイアイのすむ森」。写真は上野動物園提供 |
ここでもコミュニケータは無料で借りられる。そしてここでは、借りたい台数が多い場合、2日前までにFAXかEメールで申し込めば事前予約することも可能だ。ただし、基本的に動物のいるスペースはほとんどが屋外のため、雨天時の貸し出しは精密機器のために中止となる場合もある。貸出・返却カウンターは、東園入口の表門に近い総合案内所裏手(ゾウのエリアが見える側)と、西園の両生爬虫類館エントランスホールの2カ所だ。ちなみに、上野動物園は、エリアとしてJR上野駅に近い東園と、不忍池に面した西園に大きく分かれている。両者をつなぐのが、昭和32年に開通した日本初のモノレールである(徒歩での両園の往来も可能)。利用時間は9時半から16時30分までとなっており、貸し出し自体は16時までだ。都庁でもどこでもそうだが、貸し出し時は名前などの登録が必要である。
同園で使用されているコミュニケータの構成は、ucodeタグリーダ、コミュニケータ本体、そして本体とコードでつながるクリップ式の片耳用イヤフォン(およびボリュームコントローラ)というもの。コミュニケータはネックストラップ付きのソフトケースに入れられており、子供でも落としたりしないよう首から下げておけるよう配慮されている。
同園のコミュニケータが子供に喜ばれそうなのは、情報を取得するためにucodeタグリーダがコミュニケータから独立していること。腕時計のように手首にはめて使用するのだが、戦隊ものの変身ガジェットとかウルトラマン系の防衛隊の隊員が身につける通信装置のような感じで、時計と比べると大きめだが、それがまた「ラジャー!」とかいいたくなる、マニア心をくすぐるデザインだったりする(笑)。メカ好きの子とか、新しい物好きの子だったら、見た途端に目を輝かせて、「つけさせて!」となることは間違いない。
ucodeタグリーダは、コミュニケータとは無線通信する仕組みで完全に分離しているので、重さのある後者は大人が持って、前者は子供につけさせて上げるという使い方が可能だ。バッテリは約2時間となっており、じっくり見て回ると、東園もしくは西園どちらかですら回りきれないで終わってしまう可能性もある。全動物ごとにICタグが設置されているわけではないのだが、合計で140個もあり、非常に充実しているからだ。ただし、バッテリが切れても交換してもらえるので、その点は安心。
ユビキタス・コミュニケータ一式 | カバー越しだが結構見える。屋外なので雨対策としてカバーは必須 | ソフトケースから取り出してみたコミュニケータ本体 |
前端部分 | 右側面。都庁で使用されている最新バージョンと比較するとちょっと厚め | 左側面 |
手首装着型のucodeリーダ | ucodeリーダの裏面 | 実際に装着したところ |
使い方としては、各種動物のオリやエリアの前にICタグが設置されており、それに手首に装着したucodeタグリーダをかざすことで、情報がコミュニケータ本体に表示されるようになる。また、無線マーカが20カ所に設置されており、そのエリアに入ると自動的に情報が提示されるシステムも用意されている。ただし、こちらは現在一部のみで稼働しているようで、設置されているすべての場所で働くわけではない模様。
また、西園の出入口の池之端門のそばでは、「ひづめをもつ動物たちのあしの秘密」をテーマに、オカピ、キリン、サイ、カバ、シマウマを対象にした通常の情報とは別にユビキタスミニガイドツアーが用意されている。クイズなども楽しむことができ、ここでもまたうならされること間違いなしの情報を楽しむことが可能だ。
利用してみた感想は、ここも情報量が凄いということ。テキストデータ以外にも、園長さんや飼育担当の人などの動物を紹介するもの、その動物の特徴的な動作などをとらえた(いくら目の前にいても、そうした珍しい行動を取ってくれるとは限らない)ものなど、ムービーも充実している。クイズなどもあり、感覚としては、全コンテンツを堪能するには丸1日かかるのではないだろうか。自然の象徴である動物たちを見に来て、同時に最新のテクノロジーにも触れられるという上野動物園は、子供たちの動物好きとメカ(新しいもの)好きの両面を満たしてくれる施設といえそうだ。
以上、まず前編はということで、東京のユビキタス計画と、その計画の一端として行なわれた実証実験の成果を活用して運用されている都庁展望室と上野動物園の情報サービスの特徴と現状、そして利用してみたレポートなどをお送りした。足を運ぶ機会がある時は、ぜひユビキタス情報サービスを借りて使ってみてほしい。続いて後編では、企業が運営している東京のユビキタス情報サービスと坂村氏のインタビューをお届けする。
2009/8/21 21:00