富士通、並列プロセッサ搭載の画像処理モジュールを開発

~リアルタイムで詳細な3次元認識が可能に


 富士通九州ネットワークテクノロジーズと富士通研究所は7月24日、物体の動きや形を高速に認識できるロボット向け画像処理モジュールを発表した。小型で低消費電力なモジュールとなっており、小型ロボットへの搭載も可能だ。発売は同日より開始されている。

開発した画像処理モジュール。左がNTSC、右がIEEE 1394用モジュールは基板2枚構成。上段は共通で、下段のみ異なるサンプルプログラムの動作画面。3次元で認識されている

 この画像処理モジュールでは、ステレオビジョンによる物体の3次元認識が可能。提供されるのはモジュール本体のみで、カメラは別途用意する必要がある。インターフェイスによって、NTSCカメラ用の「NXV1-NTSC-PCB」(315,000円)、IEEE 1394カメラ用の「NXV1-1394-PCB」(367,500円)の2種類が用意される。

デモでは、IEEE 1394接続のカメラが2台使用されていたカメラが接続されているのはこれ。中にモジュールがある

 画面上の2,400領域から特徴点(明るさが大きく変化する点。物体の角など)を抽出し、動きベクトル検出や奥行き検出などの処理を行なう。これまでの同様の製品では、リアルタイムで処理できるのは数百カ所程度が限界であり、小さい物体が認識できない問題があったが、新製品では画面が細分化されており、人間の手の動きまで分かるようになった。

赤い点で示されているのが特徴点。中央の人物が両手を前に出しているこのときの画面(これは上から見た位置関係になる)。手も認識している画像処理LSI「MB87Q0530PBG-GE1」(200MHz)が搭載されている

 独自アーキテクチャの画像処理LSI「MB87Q0530PBG-GE1」(200MHz)を搭載することで、高速な演算処理を実現した。このLSIは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「次世代ロボット共通基盤開発プロジェクト」(2005年~2007年)において開発したもの。256個のALUを搭載しており、Core 2 Duo/3GHzの3倍以上に相当する性能があるという。

 CPUはPowerPC 440EPx(666MHz)、OSはLinux(kernel 2.6.27)を搭載した。画像処理ライブラリ、サンプルプログラムなどの開発環境も提供されており、購入したらすぐにアプリケーションの開発を始めることができる。モジュールの消費電力は13W。外部インターフェイスとしては、LAN、RS-232C、USBが用意されている。

 富士通はサービスロボット「enon(エノン)」を開発しているが、社会の中で、ヒトと共存して役に立つロボットを実現するためには、人間と同じように、物体を3Dでリアルタイムに認識することが必要となる。「このモジュールにより、地図生成や障害物回避が可能になる。いずれenonにも載せていきたいと考えている」(富士通研究所の森田俊彦氏)という。


(大塚 実)

2009/7/24 21:47