知能ロボットコンテスト・フェスティバル2009開催
~東北の地から、広がりを見せる知能ロボコン
宮城県仙台市にある仙台市科学館において、2009年6月20日(土)、21日(日)の2日間にわたり、知能ロボットコンテスト・フェスティバル2009が開催された。知能ロボットコンテスト・フェスティバルは、ロボット競技会実行委員会、メカトロで遊ぶ会、社団法人日本ロボット学会が主催する第21回知能ロボットコンテストと、小学校の中学年以上を主な対象としたロボコンジュニア2009の2つの競技からなり、小学生から社会人まで、幅広い年齢層の参加者が集まる大会である。
知能ロボットコンテストは自律型ロボットによる競技で、1.8m×1.8mの競技台の上に置かれたボールや空き缶のオブジェクトを、それぞれの色に対応したゴールへと所定の時間内に入れ、その得点によって順位を決めていく。出場するロボットはすべて自律で制御されなければならないため、競技台上で起こりうるさまざまな状況を考慮し、それらに対してロボットをどれだけ「賢く」できるかというのが、競技者の腕の見せ所である。
さらに二次予選と決勝戦では複数の審査員によってパフォーマンス性や技術力、デザイン性などを評価する審査員点が加算されるため、ただ競技をこなすだけでは好成績は狙えない。そのため、シンプルな競技ルールでありながら『勝利の方程式』は存在せず、今年も技術力にデザイン、そしてアイディアに磨きをかけた個性豊かなロボット達が、最後まで行方が分からない熱戦を繰り広げた。
知能ロボットコンテストの競技は、チャレンジコースとテクニカルコースの2つ。チャレンジコースではオブジェクトとして赤・青・黄色の3色のボールを各色5個ずつ、計15個が競技台上のオブジェクトエリアにランダムに配置され、色に対応したゴールにボールを入れると3点、違う色のゴールに入れると1点。競技点のほかにパフォーマンス性・チャレンジ性・芸術性・スピード感を評価する審査員点が加算され、その合計で争われる。
テクニカルコースは今年からルールが大幅に改正。3色のボール・空き缶をそれぞれ各色1個ずつ、計6個のオブジェクトがチャレンジコースと同様にランダムに配置されるようになった。色に対応したゴールに入れることでボールの場合は6点、空き缶の場合は9点、違う色のゴールに入れた場合はどちらも1点となる。さらにロボット自身がスイッチを操作することで競技時間を記録するタイムトライアルが導入され、タイムに応じて競技点が加算。技術性・パフォーマンス性・チャレンジ性・芸術性を評価する審査員点との合計によって順位が決定する。
また、同時開催のロボコンジュニアでは、プラモデルのように簡単に製作が可能なロボット『梵天丸』を用いて、目標位置まで行って帰ってくるなどの簡単な競技を行なう。初めての参加でも「メカトロで遊ぶ会」のメンバーがその場で講習を行ない、随時指導をしていた。
チャレンジコースでは競技点のほかにパフォーマンス性・チャレンジ性・芸術性・スピード感を評価する審査員点が加算され、その合計で争われる | テクニカルコースは今年からルールが大幅に改正された | 同時に開催されるロボコンジュニアでは『梵天丸』を用いた競技が実施された |
●チャレンジコースは安定した競技が勝利の鍵に
計65台のロボットが一次予選に参加したチャレンジコース。今年は高い安定性で堅実に得点を重ねたロボットが上位へと勝ち進んだ。その中でも高校生ながら確実な競技を見せたのが、工大高からくりロボット研究部、東北工大高校からくりチームのロボット『戦艦「長門」』。ベルトで巻き上げて回収したボールをロボット内部で色判別しゴールへと転がり落とすという戦略で、一次・二次予選ともに高得点をマークしてトップ通過。決勝戦ではさらにすべてのボールを正しいゴールへと入れる『パーフェクト』を達成し、チャレンジコース優勝の栄冠を手にした。
名古屋工業大学ロボコン工房、チームYFのロボット『OWARI III』はハンドでロボット内部に取り込んだボールを、砲台から打ち出す仕組み。宙を舞うボールが子どもたちの歓声を得て、チャレンジコースで最高得点となる高い審査員点を獲得し、チャレンジコース準優勝を果たした。
【動画】『戦艦「長門」』の競技の様子。前面のベルトでボールを巻き上げてすべて回収すると、シューターでボールを転がしてゴールする。ゴールの際に流れる音楽もかわいらしい | 【動画】ボールをつまんでは打ち出す『OWARI III』、転がったボールが運よくゴールに落ちるというラッキーな場面も |
●ルール変更のテクニカルコースはレベルの高い争いに
ルールが大幅変更となったテクニカルコースは、昨年よりもやや台数が増えて10台が参加し、一次予選からの開催となった。新ルールに果敢に挑戦する意欲のある、腕に覚えのある競技者が参加し、昨年とは打って変わって見ごたえのある白熱した競技が繰り広げられた。
その中で一次予選・二次予選、そして決勝まで、すべてのオブジェクトを正しいゴールに入れるパーフェクトを3度も達成し、文句なしのテクニカルコース優勝をもぎ取ったのが、東京農工大学ロボット研究会のチーム『ホンキッキーズ』のロボット『くるとがSHIFT』。ハンドでオブジェクトをつかむとロボット後方の収納スペースに入れ、最後にまとめてゴールするという戦略で安定した競技を見せ、ロボット学会会長賞も受賞した。
知能ロボコン「らしい」ロボットを毎年製作してくる常連、もやねのアトリエの今年のロボットは『韋駄天くじら』。10cm四方ほどのコンパクトな機体にレーザレンジファインダを始め多数のセンサーや有機ELディスプレイ等を搭載し、高い技術力をアピールすることでテクニカルコース準優勝・最優秀技術賞・メカトロで遊ぶ会賞を受賞し、常連としての貫禄を見せた。
●双腕に、丸くも長くも……
オブジェクトを回収してゴールするという、非常にシンプルな同じ競技をするはずなのに、ロボットの機能や形、戦略が千差万別でバラエティに富んでいるのも知能ロボコンの面白いところ。外見に機能にと工夫を凝らしたロボットが、今年も会場を沸かせた。
東京農工大学ロボット研究会のチーム『RUR-狭山君』のロボット『つかさたん』はツインテールを思わせる双腕のアームを持ち、両手にオブジェクトをつかむとゴールへと向かい、片手ずつゴールへオブジェクトを投入していく。ロボットに取り付けられたドラえもん風の巨大な鈴が、ハンドが動くたびにシャンシャンと涼しげな音を立てて観客を楽しませた。
近未来的な銀色の円筒型の外観で、出場ロボットの中でもひときわ個性を放っていたのは、渋谷幕張高校物理部のチーム『しぶまく「鷺」』のロボット『hero』。コロコロと転がりつつ、ボールを発見すると外装の一部が開いてそこにかき込むという動きが、外観もあいまってSF映画に登場しそうな雰囲気を作り出していた。
昨年、一昨年とアイディア倒れ賞を連続受賞している茨城工業高等専門学校電子制御工学科は、今年もアイディアは同じながらバージョンが上がったロボット『Driver-II』で参加。ロボット本体とゴルフクラブの間に新たにリンクを追加し、歯車で動力を伝達。振り抜き性能がアップしたが、コントロールが定まらず……。
複数のサーボモータでヘビの動きを再現したのは、茨大ロボ研『team-snake.』のロボット『ブラック★ロックシューター』、青色ダイオードの瞳と黒いボディがクールなヘビ型ロボットである。惜しくも一次予選で敗退したが、本物のヘビのようにリアルに競技台上を這い回る様子は圧倒的なインパクトを会場に与えた。
今年も東北地方のみならず関東・近畿、果ては九州からも多くの参加者とロボットが集まった、『知能ロボットコンテスト』。今年の12月には千葉工業大学で同じルールの大会が開催されるということもあり、これからもますますの広がりを見せるのではないだろうか。
2009/7/6 13:18