芝浦工大と日本科学未来館、「東京ベイエリアロボフェスタ」開催【展示レポート編】

~芝浦工業大学の各種ロボットと産総研の女性ロボ「HRP-4C」が展示


多くの来場者が訪れた開場の模様

 6月27日、第6回東京ベイエリア産学官連携シンポジウム「東京ベイエリアロボフェスタ ~ロボットを通じた人材育成を考える」がお台場にある日本科学未来館にて行なわれた。ここでは当日行なわれた芝浦工業大学の各ロボット関連研究室による展示と、「HRP-4C」の静展示についてレポートする。

 土曜日の日本科学未来館だけあって、多くの子供たちを含む人々が来場していた。会場ではロボット作り体験のほか、教材として用いられている「ボクサー」ロボットを操縦した競技体験などが実施されていた。そのほか、各研究室がデモンストレーションやパネルで研究を紹介していた。

芝浦工業大学ロボット関連研究室の展示

 ロボティクス研究室は、メカトロ教材やロボットのナビゲーション技術の研究の一環として、ライントレースロボットなどをデモしていた。機能情報工学研究室は生活サポートシステムとしてロボット技術を捉え、居住者の行動を把握する為のセンサー統合システムを出展していた。また知能情報処理研究室はロボカップシミュレーションリーグを解説していた。

子供たちによるロボット作り体験の模様【動画】来場した子供たちによるロボット競技体験の様子ロボット技術者育成の一環としてライントレースロボットを紹介
機能情報工学研究室の居住者の行動を把握するためのセンサー統合システムセンサー情報を統合し自己組織化マップを使うことでデータを分類、ライフログ的に使う知能情報処理研究室はロボカップシミュレーションリーグを解説
このチームの特徴は防御をあまり考えず、とにかく攻めて行くためにドリブルを積極的に行なうことだそうだ

 流体パワーシステム研究室は空気圧アクチュエーターを使った二足歩行ロボットのジャンプをデモ。まだ制御技術は特に入れていないとのこと。ぴょんぴょん音を立てて飛び跳ねる姿は会場では大人気だったが、出展側としてはほとんどロボット耐久試験状態だったとのこと。

 機械情報システム研究室は、ハプティック・ヴァーチャルリアリティの研究を展示。仮想物体に対する手応えを提示するシステムを出展していた。

【動画】流体パワーシステム研究の空気圧アクチュエーターを使った二足歩行ロボット開発コンセプト【動画】機械情報システム研究室の仮想物体に対する手応えを提示するシステム

 モーションコントロール研究室は、ロータリーエンコーダーを使って力センサーなしで物体を把持するロボットや、積極的に姿勢を変えることで急加速・急減速して移動する倒立振子型ロボットの研究等を出展。そのほか、内視鏡ロボットや小型飛行船の制御の研究も行なっているという。

 複合情報システム研究室は「グリーンネットワークユビキタス技術」と銘打ってプラグごとに電力を計測できる消費電力計測システムを出展していた。

力センサーなしで物体を把持するロボット軽量で安価にできることが特徴だという倒立振子型ロボット
内視鏡ロボットの研究も複合情報システム研究室の消費電力計測システム

 ニューロリハビリ工学研究室は、空気圧人工筋を使って負荷を減らした歩行訓練システムを出展。脊髄損傷患者を対象に想定したシステムで、マッキベン式の人工筋肉を使って、着用者の股関節を受動的に歩行しているときのように動かすことで、神経系へのニューロリハビリの効果を狙う。特徴は人工筋肉を用いているため、水陸両用で用いることができるところ。プール内でのトレーニングにも用いることができる。会場では実際に空気を入れて人工筋肉の働きを確認することができた。

 福祉ロボットシステム研究室が出展していた上肢疾患用患者シミュレータは、MR(磁性流体)ブレーキを使って、カクンカクンとしか動かないように固まってしまう「歯車様固縮」という患者の状態を再現するロボット。理学療法師のトレーニング用に用いる。今後は、肘関節中心が、より人間らしく楕円を描くように改良していくという。

 またカテーテル誘導用トレーニングシステムは、カテーテル手術を行なうためのトレーニング用機器。カテーテルの直動操作が可能で、ER流体を使って、たとえば血管壁にぶつかったときの感触を提示する。

空気圧人工筋を使った歩行訓練システムMRブレーキを使った「患者シミュレータ」カテーテル誘導用トレーニングシステム

 マイクロメカトロニクス研究室ではマイクロ流体を扱うための小型デバイスを出展。血液などを分析するための携帯型小型検査デバイスの実現を目指している。ポンプやバルブ、ディスペンサー、分注などを行なう各種チップを既に開発済で、「簡易検査の少し上」くらいの精度の検査を目指しているそうだ。長谷川忠大准教授によれば技術的な課題はもうなくなっているが、実用化するためには、安価に大量生産する製造方法が必要だそうだ。

マイクロ流体を扱う各種のチップを既に開発済指の上にのる極少サイズ

 ヒューマン・ロボット・インタラクション研究室は、「つくばチャレンジ」に出場した屋外自律移動ロボット「PAR-NE07r」を出展。形状はくじらをモチーフにしているそうだ。前回はGPSに頼りすぎたことと、移動機構の不調で苦戦したが、今後はRTミドルウェアを基盤にRTコンポーネントで処理モジュールを開発し、またチャレンジするという。会場でも水川氏が学生にプレッシャーをかけていた。

屋外自律移動ロボット「PAR-NE07r」モチーフはクジラ

 機構学・ロボティクス研究室からは上肢・下肢の作業支援をする機器が出展されていた。四肢が不自由な人の介助作業や運搬作業などの重作業支援用の機器だ。どちらもアクチュエーターは体幹に近い部分に持って来て、力センサーを使って力の補助を行なっている。上半身用の補助機は電動車イスあるいは下半身補助用の機器に繋げて用いる。脚を補助する機械のほうは、機械に足の動きをある程度まかせるような感覚で足を上げると、うまく歩けるそうだ。

 またこれ以外に脚部密着式歩行補助機も開発を進めている。こちらは装置の上に服を着せられるようなものを作ることを目標としている。まだまだ大きいが、トルクを発生させるものは背中に背負う形とし、ピアノ線をよじって作られている「フレキシブルシャフト」を使ってトルクを伝達させてリンクを動かしている。詳細は研究室のWebサイトを参照されたい。田中英一郎准教授は、地道な部分の解析をきちんと詰める事に主眼を置いて教育を行なっているという。

下半身の動きをサポートする機器脚部密着式歩行補助機。曲げられるフレキシブルシャフトでトルクを伝達する

 内村裕准教授らは、ネットワーク経由で力覚フィードバック通信ができるシステムをデモ。あまり視覚が使えない水中土木作業用のユンボなどの遠隔操作に使えるのではないかと考えているそうだ。マスター側を動かしてスレーブ側でスポンジを触ると、堅さの違いが分かるくらいリアルな感触が伝わって来た。来場した高校生たちもその感触に驚いていた。

 そのほか、災害時に使うために無線ネットワーク網を自分で維持しながら移動できるロボットや、手先に外力が加わっても安定して動けるヒューマノイドの研究を行なっているという。従来のZMP概念を拡張することが狙いで、「ROBO-ONE」などのホビーロボットの動きも面白いと感じているそうだ。

ネットワーク経由で力覚フィードバック通信ができるロボットシステム【動画】硬さの違うスポンジをさわるとその違いが分かる【動画】ヒューマノイドロボットのデモ

 情報システム工学研究室は、家庭用のバイオフィードバック機器で脳波を計測してAIBOをコントロールする研究を出展。ソフトウェア工学研究室は、レゴマインドストームを使った「ETロボコン」の紹介と同研究室の取り組みを紹介していた。

脳波を使ってAIBOをコントロールする研究。解説しているのは大倉典子氏懐かしのAIBOは来場者にも人気【動画】ETロボコンの紹介も行われていた

 このほか、システム工学部准教授の佐藤晟(あきら)氏が長年開発を続けて来た巨大二足歩行ロボット「ASSHY(アッシィ)」のほか、産総研の「HRP-2」のモックアップと、「HRP-4C」の実物が静展示されていた。「ASSHY」は映画「20世紀少年」にも登場したそうだ。「HRP-4C」はボディ・頭部とも2台あるが、この「HRP-4C」はファッションショーで開場挨拶を行なったモデルで2号機にあたる。どちらのロボットも動かない静展示のみだが、多くの人が写真を撮影していた。

巨大二足歩行ロボット「ASSHY」HRP-4CとHRP-2も静展示「HRP-4C」頭部のアップ
ロボットセミナーで製作されたロボットたちロボット教材を用いた取り組みの紹介もパネルでロボット教育セミナーのロードマップ
参加者2万人突破が次の目標

 内村裕准教授によれば、芝浦工大は「テニスのサークルは3つしかないが、ロボット関連のサークルは8つある」のだそうだ。非常にロボット関連の活動が盛んな大学だという。当日も、これはあくまで記者の個人的な感覚だが、出展ブースで解説を行っていた学生さんたちのモチベーションもかなり高いようで、皆さん熱心に解説してくれた。

 ロボット技術はここ20年、30年間で大きく進歩した。だがその一方、身近なところでのロボットの応用は遅々として進まず、ほとんど変化していないため夢のままだ。それだけロボットの期待値は高いとも言える。次の20年、30年のロボットの歴史を、彼らの情熱と地道な努力が作り出してくれるに違いない、と期待する。



(森山和道)

2009/6/29 15:58