早稲田大学とJAXA、宇宙航空分野で包括的な連携協力

~大学では7例目、私立大としては初


 早稲田大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、研究開発・人材育成など幅広い分野で協力していくことで合意、5月29日、連携協力協定を締結した。これまでも、早大が中心となって開発したセンサーがJAXAの人工衛星に搭載されるなど、個別分野での協力は実施されていたが、一層強化していく。

署名する早大の白井克彦総長(左)とJAXAの立川敬二理事長調印後、笑顔で握手する両者

 従来の協定は、早大の理工学術院とJAXAの総合技術研究本部・航空プログラムグループ間のように、部局レベルだった。しかし、国際宇宙ステーションでの実験が本格化するなど環境が変化、技術分野だけでなく、人文科学・社会科学など幅広い分野での協力が必要になってきたことから、これまでの協定は発展的に解消、早大・JAXAの組織間協定に格上げした。

 協力する分野は「研究開発・教育・人材育成などに関わる、相互協力が可能な全ての分野」(早大・堀越佳治常任理事)だという。今後は連絡協議会を設立し、具体的な協力内容について詰めていく。検討されている連携事業は以下の通り。

・産学官連携による共同研究の推進
・研究者の相互交流
・研究施設・設備等の相互利用
・教育・人材育成の推進、相互支援
・研究資源の相互利用

 両者による共同研究プロジェクトとしては、H-IIAロケットで打上げられる小型副衛星「WASEDA-SAT2」、日本実験棟「きぼう」を利用する「高エネルギー電子、ガンマ線観測装置(CALET)」がすでにスタートしており、さらに、月惑星探査、宇宙機の構造、航空分野に関する研究なども検討しているそうだ。また、附属高校との連携など、宇宙教育の促進にも力を入れる。

 JAXAは、2007年8月の東北大学との協定を皮切りに、東京大学(2007年10月)、京都大学(2008年4月)、名古屋大学(2008年7月)、筑波大学(2008年9月)、北海道大学(2008年10月)と順次締結、早稲田大学で7大学目となる。私立大学では初だ。ただし今後については「数よりも成果」(JAXA・立川敬二理事長)として、連携先の拡大はスローダウン。「これまで締結した大学とのフォローアップをする。それぞれの大学の特徴を活かして成果を出していきたい」(同)という。

 こういった提携には、「宇宙開発全体の基盤を支える活動は、JAXAだけではとても無理。大学等の基盤研究が広く支えてくれることが大変重要」(JAXA・井上一理事)という背景がある。特に科学分野では、宇宙科学研究所(現JAXA宇宙科学研究本部)の時代から「大学共同利用システム」という、大学等の研究者が自主的にミッションを提案する手法が採用され、成果を上げてきた。

 記者会見では、JAXAの立川敬二理事長と早稲田大学の白井克彦総長が、「早稲田大学の英知を頂いて、日本の宇宙開発を進めていきたい」(JAXA・立川理事長)、「理工学部の再編をやって2年。目玉の1つとして航空宇宙分野があるが、この協定でより内容が充実する。我々にとって非常に大きな意味がある」(早大・白井総長)と、それぞれ期待を述べた。



(大塚 実)

2009/6/1 13:14