「わんだほーろぼっとか~にばる・ぷち in 第6回 元気のでる ものクリフェスタ2009春」レポート

~ROBO-ONE優勝機から有線の工作キットまでが一堂に会するイベント


 2009年4月29日(日)、多足ロボットも含めたマルチロボット競技会「わんだほーろぼっとか~にばる・ぷち」の第2回大会が、東京ビッグサイト・西3ホールで開かれていた「第6回 元気のでる ものクリフェスタ2009春」内で開催された。

イベント内イベント「ぷち」のパート2!

前回同様、ロボットプロレス用リングを使用。競技開催中はお子さまたちがかぶりつきで観戦

 2008年11月に埼玉県・草加市「草加ふささら祭り」内のイベントとして初めて開催された「わんだほーろぼっとか~にばる・ぷち」は、二足歩行ロボット競技会として定着しつつある「わんだほーろぼっとか~にばる」のスピンオフイベントである。元々は「二足歩行ロボットのみ」となっている本開催の出場資格を「二足歩行以上のロボットであれば参加OK」と緩めた、お祭り色の強い大会で、単独イベントではなく、他イベントの中のブースとして開催されている。

 今回も前回と同様、紅白に分かれてチームの勝利を目指す形式となった。開会式では紅組の代表、「ガルー」のくまま氏が「バッテリが燃えるまでがんばりたいと思います!」と熱さを強調すれば、白組「automo 05(Go-Wan)」のholypong氏は「みんなでがんばりたいと思います!」とチームワークを強調してスタートした。

ポスターは、当日の実況もこなしていた“アニメイダー柳”氏の制作右に白組、左に紅組と分かれて気勢を上げる開会式

ダッシュ! 2000

 予選競技のオープニングは、1m先のパイロンをターンしてスタートラインに戻ってくるまでの時間を競う、シンプルな競技「ダッシュ! 2000」。事前に「強いロボットはパイロンをきちんと回っているかどうか、厳しく取ります」とアナウンスされた。

 本開催も含め、わんだほーの競技は「実力を拮抗させる」ところにポイントがあり、搭載サーボの能力や操縦者が他イベントでどんな実績を残しているかなどを参考にマッチメイクされている。ただ、今回は「ぷち」ということもあってか「こんな対戦が見たい」という企画主導の対戦が組まれていたようだ。

 トップタイムを出したのは、30機中唯一10秒を切って7秒62を記録した紅組「メリッサ・ヘカトンケイレス(クラフトマン)」。同じ「メリッサ」同士の対戦が組まれたが、KRS-4013HVを中心にスピードを重視して組んだことで、圧倒的な差をつけてゴールしていた。

 2位タイムは、途中対戦相手にぶつかってしまってタイムロスをしたのが痛かった「ストライカー(ひろき)」の10秒72。「MAN01(酉旦那)」はゴール寸前で操作を間違えてしまい、10秒97の悔しい3位となった。

 こういった機体の能力がストレートに出る競技は自作機が強いのだが、今回はマノイAT01ベースの「MAN01」、KHR-2HVベースで14秒06を出した「小雪(シムカ)」など、キットベースでも自作機と正面切って勝負ができることを見せてくれた。

【動画】途中で進路を邪魔されてしまった「ストライカー」(手前)。そこに悪気がなければ“運”が悪かったことになってしまう「わんだほー」【動画】「マヌイ(カイン技師)」(奥)対「まりん(かつ)」。ターンに苦労していると、“神の手”ないし“愛の手”がさしのべられる、ゆるゆるなイベント【動画】「サイコロ1号(東京理科大学I部無線研究部)」(奥)対「ローリング・ピラニ(法政大学電気研究会)」という学生同士のマッチメイク。企画モノ対戦か?
【動画】「鏑(mota)」(奥)対「メリッサ・ヘカトンケイレス」【動画】「たかろぼ(原毅)」(奥)対「MAN01」

ボトルトラクション

 毎回、わんだほーの本開催では自重よりも重いかごを運ぶロボットが続出するパワー系競技「ボトルトラクション」。あまりにペットボトルをたくさん積むため、準備の都合もあって本開催では積載本数に制限が設けられている。だが、今回は主催者側からペットボトルが提供されたということで、本数制限は撤廃され、カゴに積めるだけ積んでOKというルールになった(ただし、軽量機救済のための190ml紙パックは6本まで)。

 記録は制限時間1分で“運んだ本数×運んだ距離(最大120cm)”となる。時間を残して120cmを引ききるよりも、たくさんの本数を時間いっぱいまで動かした方がいい場合もある、作戦面も楽しめる競技だ。

 そんな作戦も吹き飛ばしてしまうような、圧倒的な本数を運んだのが「メリッサ・ヘカトンケイレス」。つま先立ちで押すモーションで、24本を30秒たたないうちに押し切ってしまった。操縦者のクラフトマン氏は「もうちょっと行けたと思う。どれくらい運べるのかわからないんですけど、カゴに入らなかったので」と、快記録に笑顔を見せていた。

 だが、その「カゴに入らなかった」という物理的な制約すら超えようとしたのが、ボトルトラクションが大好きという「サアガ(イガア)」だ。「サアガ」はカゴを2段重ねにして固定し、合計31本をグイグイと押す手に出た。コース途中で崩れれば、もう一度スタートからやり直し(もちろん時計は進む)というリスクもあるのだが、ゴールラインのテープにカゴ底面のローラーが引っかかるほどの重さ(雑に計算しても15.5kg)をものともせず、30秒ちょっとで運び切り、ダントツのトップ記録となった。

ちょうつがいこそないが、「メリッサ・ヘカトンケイレス」もボトルトラクション用の足裏を取り付けていた【動画】「鏑」(奥)対「メリッサ・ヘカトンケイレス」。「メリッサ・ヘカトンケイレス」は手にアタッチメントを付けて臨んでいた
「サアガ」がボトルトラクション用に取り付けている足裏。左側がつま先【動画】「サアガ」(奥)対「シグマ(しまけん)」。掟破りのカゴ二段重ねで31本を運びきった「サアガ」

 この競技で輝いたのが、ミニ四駆と同じ130モーターを2個搭載した自作の多足ロボット「オサル(オサル1号)」である。小学生オペレーターはROBO-ONEも含めて前例は少なくないが、小学生ビルダー(しかも企画制作も自分)となると、これはかなり貴重な存在である。この日のために競技ごとの動きを考えてきた成果が出たのか、このボトルトラクションでは8本を押し切って、同組の「おふじゃんびぃZ(B作)」を上回った。

【動画】紙パック5本の「NOVAGON(KENTA)」(奥)対ペットボトル10本の「ガシャペリオンMk-II(SLAN)」。僅差の勝負のようだが、積載本数が違うので記録の差は大きい【動画】「BLACK TIGER NEO(IKETOMU)」(奥)対「竜鬼II(コイズミ)」。記録は下がるが、「竜鬼II」のように、最初に積んだ本数より減らしてもOK【動画】「オサル」(奥)対「おふじゃんびぃZ」の対戦

サイコロシュート

 手段を問わずサイコロを相手のゴールラインの向こうに放り込み、そのサイコロの出目が得点になるという、わんだほーを象徴する競技である「サイコロシュート」。前2競技の得点を基準に並べ替え、「サイコロシュート」はスピードとパワーが同レベルの対戦となる。

 拮抗した2機の試合だからこそなのか、どの組み合わせの試合もめまぐるしく攻守が入れ替わる熱戦になった。特に得点上位の試合は2機がめまぐるしく動くだけではなく、サイコロを持ち上げたり、遠くまで投げ飛ばしたりと、“さすが上位”と思わせられる戦いになっていた。

 そんな中、最高得点を出したのは「ストライカー」。スピードに特化したサッカー競技用の機体ということでパワー系競技のボトルトラクションで得点を稼げなかったものの、サイコロシュートではそのスピードをいかんなく発揮。「BLACK TIGER NEO」を20対0と完封した。

 ルールがわかりやすかったこともあってか、観客からロボットに応援の声が一番飛んでいたのも、このサイコロシュートだったように感じた。

【動画】「サアガ」(左)対「メリッサ・ヘカトンケイレス」。相手にきちんと蹴らせない、互いに一歩も引かない戦い【動画】「ガルー」(右)対「automo 05(Go-wan)」。シュート数では「ガルー」が1本多いものの、得点では9-10と出目に負けた【動画】「BLACK TIGER NEO」(左)対「ストライカー」。自陣ゴールライン直前から相手のゴール外まで飛ばすスローにはどよめきが起こった
【動画】「オサル」(左)対「ファントム(ブラック)」。「オサル」の回転式の腕はサイコロシュートのために付けた装備。結果は6対5で「オサル」勝利【動画】「サイコロ1号」(左)対「ガシャペリオンMk-II」。サイコロは自分でゴールに入っても得点らしい。相手のゴールはもちろんだが、自分のゴールでも……

ROBO-ONEバトル

 3つの予選競技が終了したところで、総合得点の上位4名によるROBO-ONEバトル(つまり格闘)対戦が行なわれた。

 予選の1位はスピードを活かしてダッシュとサイコロシュートで得点を稼いだ「ストライカー」。2位に注目の6脚ロボット「シグマ」、3位が九州から参戦した「automo 05(Go-wan)」、4位に前回「ぷち」のチャンピオン「サアガ」となり、1位対3位、2位対4位の準決勝からスタートした。

 準決勝第1試合では、スピードに優る「ストライカー」が「automo 05(Go-wan)」を翻弄するように動くが、「automo 05(Go-wan)」のほうは慌てず騒がず、ジャブを放ちながら間合いを確かめる。膠着状態にも見えたが、次第に手数が増えてきた「automo 05(Go-wan)」がついに1分半あたりで「ストライカー」をとらえ、最初のダウンを奪う。そこから一気に試合が動き、攻勢に出た「automo 05(Go-wan)」が終了間際にも2ダウン目を奪い、勝負を決めた。

 第2試合は6足ロボット「シグマ」に対し“投げの鬼”と言われる「サアガ」が技をかけられるのかに注目が集まった。開始直後から何度となく「シグマ」の脚を抱え込んだ「サアガ」だが、なかなかうまく投げることができず、逆にじわじわと追い詰められ、リングアウトで1ダウンを先取される。その後も投げを打とうとするが、ことごとく失敗した「サアガ」は、2分過ぎに作戦を切り替えて「シグマ」を逆に押し出し、1-1のタイに戻す。互いに有効打は出せないと分かったためか、勝負はどちらが押し出すかの争いに変わり、残すところ10数秒。そこで「シグマ」が一瞬の操作ミスでコーナーポールに引っかかってしまう。隙をうかがっていた「サアガ」がそれを見逃すはずもなく、再びのリングアウトで2-1と「サアガ」がリード。そのままタイムアップとなった。「シグマ」制作者シマケン氏は「鳥かごみたいに、サアガを抱え込めるかもと試したんだけど、無理でした。格闘戦ができて勉強になりました」と、収穫があったことを伝えてくれた。

【動画】準決勝第1試合。「ストライカー」(右)対「automo 05(Go-wan)」【動画】準決勝第2試合。「シグマ」(右)対「サアガ」
【動画】決勝戦。「automo 05(Go-wan)」(左)対「サアガ」

 決勝は「サアガ」と「automo 05(Go-wan)」。投げに来る「サアガ」を振り切ろうとする「automo 05(Go-wan)」だったが、猛烈ながぶり寄りに踏ん張りきれず、押し出されてリングアウト。1ダウンを奪われる。間合いに入ろうとする「サアガ」に「automo 05(Go-wan)」もパンチを当てるのだが、低重心のサアガには有効打とならず、そのパンチが引っ込んだところで懐に飛び込まれ、すんでの所で投げを切るという試合展開では流れはなかなか変わらず、終了直前にもダウンを奪われ、「サアガ」が優勢勝ちで総合優勝を決めた。

 紅白対抗戦の方は、272対245で紅組の圧勝。勝利チームには特製メダルが贈られ、個人総合優勝の「サアガ」にはトロフィーが贈られた。

【動画】トーナメントに進めなかったロボットが参加するランブル。カオス状態だわんだほー史上最年少のビルダーであろう、小学校4年生の「オサル」くん。競技に真剣に挑んでいるのが伝わってくるロボットの作りと、「すごい楽しかった」と言う、照れた笑顔が印象的だった

「手作り」でつながった縁

 今回、なぜ「元気のでるものクリフェスタ」に「わんだほー」が出張することになったのか。その答えは、九州から参加していたクラフトマンこと栗元一久氏が持っていた。

 「元々、このイベント(ものクリフェスタ)のスタッフに知り合いがいて、その縁で2年前のイベントに出たことがあるんです。そのときは2台でしたけど」(栗元氏)

 栗元氏が経営するクラフトハウスは、九州のロボットビルダーにとってロボットパーツの供給や交流の中心となる存在だが、レザークラフトやシルバークレイなど、ハンドメイドのモノ作りスクールなども行なっている。ロボットもまた工作の1ジャンルとして考えられるのだから、不思議なことではない。

 「今回はもう少し大きなイベントにしたいということで、いろんなイベントのビデオを見てもらった上で、“わんだほー”がいいですね、という話になったんです」(栗元氏)

 その“知り合い”である、モノクリフェスタ運営事務局の陶山孝一氏は、「なぜ“わんだほー”になったのでしょうか?」という筆者の問いに、明快な答えを出してくれた。

 「それは、“わんだほー”というイベント自体が手作りだったからです。実際に観戦に行って、これならと思ったんです」(陶山氏)

 確かに“わんだほー”は、イベントを運営するプロではない、ロボットビルダー自身がロボットビルダーのために作る、手作り運営のアットホームイベントとして知られている。そこが決め手だったのだ。

 “わんだほー”の委員長、石川康弘氏は「成功かどうかは、見に来た人が判断してくれると思います」とコメントしてくれたが、少なくとも筆者は、大がかりなメインステージのショーに負けないくらい、子供たちが真剣にロボットに声援を送っていた姿が印象に残っている。何より、常連の参加者も、初参加のビルダーからも、一様に「一日楽しかった」という感想を聞くことができた。ROBO-ONEの上位入賞者、ほとんどノーマルのロボットキット、さらに有線操縦の工作キットまでが楽しめる、懐の深いイベントともいえるのではないだろうか。

 次に“わんだほー”が行なわれるのは、7月半ばの予定。場所はまだ未定ということだが、決定次第公式サイトにアップされるので、楽しみにチェックしておこう。

【動画】愛知万博で開催された世界からくりコンテストの最終審査に残った高橋耕也氏の作品が複数展示されていたものクリフェスタの一角。農産物からロボットまで、手作りのものなら何でもOKといった具合で、さまざまな即売ブースが並んでいたモノ作りの体験ブースも。「わんだほー」も初日(28日)には同じ場所でロボットの体験操縦会を行なっていた


(梓 みきお)

2009/5/11 20:21