川田工業、上体ヒューマノイドロボット「HIRO」を発表

~研究開発用として今秋から販売開始


HRP-2 Promet(左)とHIRO

 川田工業株式会社とゼネラルロボティックス株式会社(GRX)は11日、人間サイズの上体ヒューマノイドロボット「HIRO」を共同開発したと発表した。今秋より学術研究機関向けに販売を開始する。価格はハンドや2眼ステレオカメラなどがセットされるフルスペック仕様で777万円、オプションを除いたベーシック仕様では567万円。

 川田工業ではこれまで、産総研などと共同でHRP-2、HRP-3、HRP-4Cなどの二足歩行ロボットを開発しており、ヒューマノイドロボットハードウェアプラットフォームとして「HRP-2 Promet」のレンタル事業も展開。メンテナンスや改造などを実施してきた。今回のロボットではそれらのノウハウを活かし、より安価で人間の動作範囲に近い実践的な研究を可能にするために開発されたという。

 同社はではHIROを人間サイズの研究用ロボットプラットフォームのスターターセットとして位置づけ、次世代ロボットの課題となる人間との共存環境下で協同作業が可能なロボットの研究開発と実用化を加速させていくという。

上体ヒューマノイドロボット「HIRO」フルスペック仕様では2眼ステレオカメラとハンドを搭載
ロボットハンドによるデモをするHIROロボット台座を装着したHIRO

 外観は人間の上体を再現した双腕のロボットで、自走能力は無い。本体下部のロボット台座には手押し移動用のキャスターを備える。本体サイズは50×50×157cm(幅×奥行き×高さ、台座含む)、重量85kg(HIRO本体20kg、台座部ほか65kg)。

 HIRO本体の自由度は首部×2、腕部×6(片腕)、腰部×1の全15カ所。フルスペック仕様での構成では、ロボットハンド×2(片手あたり4自由度)、頭部カメラ(2眼ステレオ視)、ハンドカメラ×2などを搭載。本体はアルミニウム合金鋳物のフレーム構造となっている。ベーシック仕様ではカメラやロボットハンドのほか、首部の2自由度やロボット台座などが省略される。

 ボディには「ロボットスーツ」と呼ばれる専用の着衣を装着。人間との協同作業においてむき出しのメカよりもスーツを装着していたほうが違和感がないため、着用させているという。人間とは異なる可動範囲であることから、スーツの素材には伸縮性の高いものを採用。スーツの前後に廃熱用のメッシュを備える。またカラーリングなどはオプションで変更可能になる予定。

 また、スーツの下のロボット本体には各部に緩衝材が装着され、人間との接触時のダメージを軽減している。

 アームは片腕で最大2kgの重量物を持ち上げることが可能。手先では最大100N(約10kg)前後の操作力を出せるという。手先の移動速度はA4用紙(297×210mm)の中心を基点とし、外周軌道を描いたあと再度中心位置へ戻るまでの距離(約1,400mm)を移動するのに約2秒間。繰り返し作業の位置決め精度は20μm以内。

 コントロールソフトウェアはGRXが開発を担当。同ソフトウェアはNEDOの推進する次世代ロボット研究開発プロジェクトで開発中の移動作業ロボットにも採用される予定という。また産総研らが開発中のRTミドルウェアへの準拠も検討中。シミュレーションソフトウェアにはOpenHRP3を採用している。

 HIROは、5月12日~17日まで神戸国際会議場で開催されるIEEE International Conference on Robotics and Automation(ICRA 2009)および、5月24日~26日に開催される福岡国際会議場で開催されるロボティクス・メカトロニクス講演会(ROBOMEC 2009)で展示・デモを予定している。



(清宮信志)

2009/5/11 19:22