「ロボワンゲート イン ナムコランド イーアスつくば」レポート

~「ROBO-ONE GP 2009 IN ナムコランド イーアスつくば」も同時開催


優勝のロボット3体で記念撮影

 サイバーダインスタジオもある、茨城県つくば市研究学園の大型ショッピングモール「イーアスつくば」で、5月2日(土)に第15回ROBO-ONE認定大会の「ロボワンゲート イン ナムコランド イーアスつくば」ならびに「ROBO-ONE GP 2009 IN ナムコランド イーアスつくば」が開催された。認定枠は、トーナメント優勝の電気通信大学 ロボメカ工房のALDIAと、ランブルで優勝したロボットフォースのイージスが獲得。また、ROBO-ONE GPは、アリモプレナが優勝した。

ROBO-ONE公式戦への登竜門としてスタートしたロボワンゲート

ロボワンゲートのトーナメント

 ロボワンゲートは、ROBO-ONE公式戦への登竜門という位置づけで、ROBO-ONE GPを運営するROBO-ONEエンターテイメント事務局が設立したロボット格闘競技大会だ。今回が第1回となる。翌々日の4日に本戦の第15回ROBO-ONEを控える中、貴重な直前の認定大会の1つとして、大阪から駆けつけた選手もいた(もう1つの認定大会は、翌3日開催の「KONDO BATTLE」)。また、韓国からの招待選手として、同国のナンバー1ともいわれるStormwaves Lightの全昌勳(ゾンチャングフン)さんが、勝敗には関係ない形でトーナメント内の1戦とランブルの1戦に参加した。そして第15回ROBO-ONEの認定枠だが、トーナメントの優勝者と、敗者復活戦的位置づけで行なわれるランブルの優勝者の2選手に与えられる形だ。

 参加選手・チームは以下の通りで、大学系のチームが多かったのが今回の特徴。トーナメント表は画像を参照してほしい。なお、前述したとおりにStormwaves Lightは勝敗に関係ないため、ローリングピラニとuru/runの勝者は、自動的に準決勝まで進出できるという、一部特殊なトーナメントとなっている。またランブルだが、トーナメントで敗退した選手が参加するもので、全3回が行なわれる。ランブル1回戦は、トーナメントの1回戦で敗退した4選手が参加し、1選手がランブル決勝戦に進出。ランブル2回戦は、トーナメントの準々決勝で敗退した4選手が参加し、同じく1選手が決勝戦に進出できる。ランブル決勝戦は、トーナメント準決勝の敗退者2選手に、ランブル1回戦と2回戦を勝ち上がった4選手で行なわれる。

・ALDIA(電気通信大学 ロボメカ工房 REP-ALDIA)
・イージス(ロボットフォース・佐々機さん)
・uru/run(うるるん工房)
・Emilio(電気通信大学 ロボメカ工房 REP-Emilio)
・ガーゴイル(吉田功さん)
・ザウラー(KENTAさん)
・Stormwaves Light(Robofactory・全昌勳さん)
・ドリラー(法政大学電気研究会)
・ファントム(J-SKYブラック)
・ラッキースター(法政大学電気研究会)
・龍鬼II(AZM LAB)
・ローリングピラニ(法政大学電気研究会)

ALDIA。可倒式スパイクがすごいイージス。個人的に記者お気に入りの1体uru/run。歩き方を評価されていた
Emilio。この日の最小。かなり小さい機体ガーゴイル。この日一番の大きさStormwaves Light。韓国ナンバー1といわれる機体
ザウラー。コブシを持っており、ボクサーっぽい雰囲気ドリラー。腕側面にドリル風の展開式シールドを備えているが、回転しないのでドリルはハテナ?ファントム。なかなか整った顔立ちの1体。体型的にバランスがよくてカッコいい
ラッキースター。ドリラーとローリングピラニと同門の法政大学電気研究会所属機龍鬼II。バトル中は目が点滅するローリングピラニ。法政大学電気研究会のエースロボット

 Robot Watch初登場の機体の中で、記者的にかっこよかったと感じたロボットは、電気通信大学 ロボメカ工房のALDIA。足首から前方に長大な可倒式スパイクが立っているのが大きな特徴だ。このスパイクを水平方向に寝かせた状態(もちろんリングには接地しない)でロボットが身体を旋回させることで、中国拳法の旋風脚とか、プロレスでいうところの故・橋本真也氏の水面蹴りのような、リングすれすれの低い位置での回し蹴りのような感じになる。また、スパイクを後方にして(つまりロボットの前後を入れ替えて)かかとの延長のようにして闘う姿も何度か見受けられ、状況によって使い分けるようだ。そのほか、両腕には肩からヒジまでを覆うシールドが側面にあるのだが、そのシールドはヒジで折りたたまれた形で上腕とつながっており、伸ばす(パンチを繰り出す)と結構リーチがある。シールド先端は横幅があるので攻撃範囲も広く、使用している金属の厚みもあり、ALDIAのパンチはかなり攻撃力がありそうだ。ロボットだけでなく、強いマシンに共通する「強い=かっこいい」のオーラが漂っている感じだ。

 同じく、電気通信大学 ロボメカ工房のEmilioも初登場。ヒーローロボット系の雰囲気で、グリーン系のボディが鮮やかだ。特徴は非常に小柄で、1回戦第3試合では、ロボワンゲート出場ロボット中で最大のガーゴイルとの“最小”vs“最大”対決を行なった。イメージとしては、SD(スーパーデフォルメ)系だが、肩や顔の感じの雰囲気からすると、「重戦機エルガイム」のヘビーメタルか、同作品のデザイナーの永野護氏がライフワークとしているコミック「ファイブスター物語」のモーターヘッドといったところか。それから、Wiiリモコンをコントローラーにしている点もポイント。現在はまだボタンでしかコントロールできないが、将来的には振るなどWiiリモコンならではの操作方法を採り入れていきたいという。

 そしてバトルのルールだが、3分1ラウンド制で、相手を先に3ダウンさせた方が勝ちという一般的なルールを採用。ただし、スリップは何回してもダウンにはならず、そのほかは第15回ROBO-ONEに準拠している。ランブルのルールはリングアウトすると脱落というもの。3分の制限時間内に最後に残っていた選手が勝利となる。なお、リングはROBO-ONEとは異なり、ボクシングやプロレスなどでお馴染みの四角だ。

ロボワンゲート準決勝戦レポート

 トーナメントは参加選手が12名・チームであることから、シードが4つある構造。1回戦は4試合が行なわれた。その結果は、まず第1試合イージス vs ラッキースターは、前者の勝利。第2試合ドリラー vs ALDIAは、後者の勝利。第3試合ガーゴイル vs Emilioは、前者の勝利。第4試合ローリングピラニ vs uru/runは、前者の勝利となった。

 続く準々決勝戦は、1回戦の勝者とシード選手が対戦。同じく4試合が行なわれた。第1試合イージス vs ファントムは、前者の勝利。第2試合ALDIA vs 龍鬼IIは、前者の勝利。第3試合ガーゴイル vs ザウラーは、後者の勝利。第4試合は、特別試合のローリングピラニ vs Stormwaves Lightで、後者の勝利となったが、前述のとおりローリングピラニが準決勝戦に進出だ。ちなみにStormwaves Lightは、紳士的な挨拶もするかと思えば、対戦相手には首かき切りの“キル・ユー”パフォーマンスもするし、重心を落とした立ち姿といい、さすがは韓国ナンバー1といわれるだけはある(本人は、もっと強い選手がいると謙遜していたが)。その強さもお見せしよう。

この日の“最小”vs“最大”対決の1場面【動画】ローリングピラニ(奥) vs Stormwaves Light
【動画】準決勝戦第1試合イージス(左) vs ALDIA

 そして、準決勝戦。第1試合は、イージス vs ALDIAだ。記者的には、イージスも結構お気に入りの1体で、3月末に大阪のヴイストン旧社屋で行なわれた「第5回ロボプロステーションチャレンジ」のレポート記事でも取り上げさせてもらった。戦車から発展したような、ミリタリー風味のリアルロボット系で、無骨な感じのデザインが特徴だ。体格的には、イージスの方が上回っていたが、試合はまずALDIAが先制。わずか10秒で早くも1ダウンをイージスから奪ってみせた。ALDIAが先制した後は、一進一退の攻防が続く。その攻防で見た感じでは、オペレーターの戦術面の好みの問題もあるかも知れないが、機動力ではALDIAが上回っている感じである。経過50秒ぐらいからリング際での攻防になると、ALDIAはフットワークも軽く動き回り、イージスを押し出してリングアウトで2本目。しかし、大阪からはるばるやってきたイージスも負けてはいられない。リングアウトから復帰して試合再開の直後、真横へのパンチがジャストミート。ALDIAがリング際に近かったとはいえ、リング外まで一気に吹っ飛んでしまうほどの威力だった。これで1-2。試合再開で、両者が間合いを計りながら接近していく。イージスは再び最も横パンチの威力が伝わる位置でALDIAをとらえようとするが、ALDIAは懐に潜り込み、パンチ1発でグラつかせた後、さらにもう1発を入れ、3ダウン目。1分30秒弱での決着となった。

【動画】準決勝戦第2試合ザウラー(左) vs ローリングピラニ

 第2試合は、ザウラー vs ローリングピラニ。体格的にはほぼ一緒のため、好勝負になりそうな雰囲気だ。ザウラーはオーソドックスなスタイルのロボットで、特別な機構などは備えていない。手先がボクシンググローブのような形状になっており、ヒジで畳んでいるシールドを展開するタイプではないため、インファイト型のロボットと思われる。一方のローリングピラニは、今回3体をエントリーさせた法政大学電気研究会のエース機。ALDIAと同じようにヒジでつながっているシールドを両腕側面に折りたたんである機構を採用。そのため、パンチのリーチは若干ローリングピラニよりも長いと思われる。ただし、シールドは先端が扇状ではないため、攻撃範囲自体はそれほど広いわけではない。槍というほど細いわけではないが、とにかく突き刺すようなイメージだ。

 試合は予想通りインファイトの戦いとなる。1本目を先取したのは、ザウラーだ。操作ミスで危うく自爆リングアウトしそうになったローリングピラニが慌ててリング中央へ戻っていく際に、うっかりザウラーに背中をさらしつつ目の前を横切ってしまったのだが、そのスキをザウラーは逃さなかった。ローリングピラニの背中にパンチを入れ、まずは1ダウン。試合が再開すると、至近距離での打ち合いが展開。しかし、またしてもローリングピラニが背中をさらしながらザウラーの前を横切ろうとしてしまい、左パンチを背中に受け、2ダウンを喫してしまう。最後は、追い込まれたローリングピラニが時間も少ないこともありラッシュをかけていくが、そこへザウラーがカウンター気味に右のパンチを入れて3ダウン。これにより、決勝戦のカードはALDIA vs ザウラーとなった。

ロボワンゲートランブルレポート

 トーナメント決勝戦のレポートの前に、続いてはランブルの模様をお伝えする。ランブルの1回戦は、1回戦で敗退した、ラッキースター、ドリラー、Emilio、uru/runが闘った。結果、ドリラーが勝利し、ランブル決勝戦への出場権を獲得。ランブルの2回戦は、準々決勝戦で敗北した、ファントム、龍鬼II、ガーゴイル、そして特別参戦のStormwaves Lightの4選手。ただし、ガーゴイルはザウラーとの準々決勝戦で倒れた拍子に断線してしまい、敗北してしまったのだが、修理が間に合わなかったようで棄権。3選手によるランブルとなった。ここでもStormwaves Lightは別格の強さを見せ、勝利した。しかし、Stormwaves Lightは特別参加のため、2番目に残っていた龍鬼IIがランブル決勝戦に進出となっている。

【動画】ランブル1回戦。ラッキースター、ドリラー、Emilio、uru/runが出場【動画】ランブル2回戦。ファントム、龍鬼II、Stormwaves Lightが出場

 ランブル決勝戦は、1回戦勝者のドリラーと、2回戦の龍鬼II、準決勝戦で敗退したイージス、ローリングピラニの4選手で争われた。この中では、イージスが最も大きく、それに近いのが龍鬼II。ローリングピラニとドリラーはその2体よりは若干小柄だが、圧倒的なほどの体格差はない。序盤の試合展開は、イージスと龍鬼IIがぶつかり合い、ローリングピラニとドリラーもそこに絡んでいかないわけではないが、少し様子を見ながらという具合。徐々に闘いの中心がリング際に移っていくと、50秒ほどの時点で龍鬼IIが押し出されて最初に脱落。これで残る2体は体格的に劣るため、イージスに優勢な状況が訪れたかに見えたが、ドリラーもローリングピラニも法政大学電気研究会の2体。盛んに同会のリーダーの学生さんが両オペレーターに指示を送っており、イージスには分の悪い2対1の状況だ。

 徐々にイージスはリング際に追い詰められ、徳俵に足がかかる状態となるが、そこで2体そろっての連携がうまく機能しなかったのが、勝負の分かれ目。イージスは中央に脱出し、その後も連携があまりうまくいかない2体のうち、まずローリングピラニを脱落させる。1対1だとさすがにドリラーにはきつく、押しまくられてリングアウト。イージスは、はるばる大阪からやって来た甲斐のある認定枠をゲットすることに成功した。

【動画】ランブル決勝戦ランブルで優勝し認定枠をゲットしたイージスとロボットフォースの佐々機さん

ロボワンゲートトーナメント決勝戦レポート

 続いて、トーナメントの決勝戦。ALDIA vs ザウラーだ。本来、成績的にはランブルに回った選手よりも2位の選手の方が上なのだが、2位の選手には認定枠は与えられていないので、本気で勝ちにいかないとならないところが心憎い(?)演出といえるだろう。体格的には身長で見ればザウラー、横幅&前後の厚みはALDIAという具合。パンチのリーチもALDIAで、さらに可倒式スパイクがあるので、そのリーチもある。またスパイクによって重心も低くなっていることだろう。スタイルはいいが腰がやや高い感じのするザウラーとしては、懐に潜り込まれると厳しそうな雰囲気である。なおかつ、ALDIAの攻撃範囲の方がはるかに広いので、ザウラーとしては戦術面での工夫が必要そうだ。

 バトルが始まると、やはりALDIAのラッシュ力が目につく。倒すまでに至らなくても、どんどんザウラーを押し込んでいく。リング角に押し込まれたザウラーは早くもピンチを迎えるが、そこは何とかしのぎ、中央に脱出することに成功する。その後は、作戦を変えたようで、ALDIAと距離を取り、周囲を回りだす。スキを見つけて攻撃しようという作戦のようだ。しかし、ALDIAがそれを完全に見切っており、スキを見せない。なおかつ、ザウラーが移動した瞬間の荷重移動でバランスが不安定なところを攻撃する冷静さも併せ持つ。それにはザウラーもたまらず、40秒を回ったところで1ダウンを喫してしまった。これでちょっと慌てたのか、試合が再開した後も、ALDIAの絶好の射程内で背中をさらして動きを一瞬止めてしまう。打ってくださいといわんばかりの状況を逃さず、ALDIAがクリーンヒットを入れ、ザウラー2ダウン。そこで俄然勢いを得たALDIAは、試合再開後も押し続け、1分過ぎには3ダウン目を奪取することに成功する。もう1つの認定枠は、ALDIAがゲットすることとなった。

 ちなみに、操作していた電気通信大学ロボメカ工房の学生さんによれば、ALDIAはまだ全力で闘っていないそうで、可倒式スパイクも今回はフル活用していなかったという。この記事が掲載される時点で、すでに第15回ROBO-ONEの結果は出ているわけだが、どう闘ったのか楽しみなところである。ロボワンゲート代表として、ALDIAとイージスにはがんばっていただきたい。

【動画】決勝戦。ALDIA(左) vs ザウラー優勝したALDIAと電気通信大学 ロボメカ工房 REP-ALDIAのメンバーのみなさんトーナメントの結果

ROBO-ONE GP1回戦レポート

 ROBO-ONE GPは、ROBO-ONE公式戦の優秀選手のみが出場できる年間複数回にわたって開催される格闘技イベントだ。今年は6戦予定されており、各戦の優勝者と事務局推薦枠2選手の合計8選手が、年間王者決定戦のファイナルに出場可能だ。ファイナルは東京ビッグサイトで11月25日(水)~28日(土)に開催される「2009国際ロボット展」の最終日に、同展内特設ステージで行なわれる。

 今回は2009シーズンの開幕戦で、出場選手は、アリモプレナ(スミイファミリー)、ivre(遊さん)、ペント(なぐさん)、ダイナマイザー(スギウラファミリー)だ。1回戦の第1試合はアリモプレナ vs ダイナマイザー、第2試合がペント vs ivreとなっている。

 第1試合は、干支パワー(?)で絶好調という牛のキャラクターをしたアリモプレナと、完成したばかりというダイナマイザー。試合前にプレゼンテーションも行なわれ、身長60cm・体重4.5kgというアリモプレナはかわいい声でアピールしてお子さんたちにも喜ばれていた。なお、左手と右手を間違えないように、左手に黄色の、右手に赤色の手袋を着けているのが今回のポイント。一方、ダイナマイザーは若干身長が低く身長は54cmだが、体重は少し重くて5kg。ちょうどヨチヨチ歩きをしだしたぐらいの赤ちゃんをイメージした体型だという。また、腰を持たせてあるのが機構的な特徴でもある。より人に近い動きを持たせようとしているようだ。そして手は把持機能を有しており、缶を使ってジュースを飲むようなパフォーマンスを見せていた。しかし、腕を降ろした直後にハプニング。振り下ろす速度が速かったのか、握力が弱かったのか、缶を床に叩きつけてしまい、まるでアリモプレナに向かって「お前もこうしてやるぜ! かかってこいやーっ!!」(記者の妄想の入った超訳)のパフォーマンスか!? とドキリとしたが、オペレーターのスギウラファミリーのお2人が平謝り。まさかの事態で、挑発パフォーマンスではなかったようである。記者的には、この日一番ドッキリしたというか、プロレスっぽいパフォーマンスに見えたので思わずその挑発ぶりに一瞬感動してしまったのであった(スギウラファミリーのみなさま、すみません)。

 試合は、アリモプレナの余裕を持った動きに対し、ダイナマイザーはモーションの調整が間に合わなかったようで、がっぷり四つとはならなかったのが残念。ちょっと長めに歩いたり、攻撃時に腕を大きく振ったりするとバランスを大きく崩して倒れてしまい、逆にアリモプレナも攻撃しづらそう。しかし、ダイナマイザーはアリモプレナが射程内に入ると、足を止めてなおかつ大ぶりしないモーションのパンチで攻撃を開始。アリモプレナも正々堂々と打ち合いに応じる。結果、先にダウンを奪ったのは、30秒時点でダイナマイザーだった。その後は決定打が出ないまま展開していくが、1分30秒を過ぎた頃に再びダイナマイザーにチャンスが訪れる。ダイナマイザーの方が体重がある上に、肩を支点に長い腕を振り回すことで慣性モーメントがかなり発生する様子のパンチは非常に威力がある模様。打たれたアリモプレナの体勢が、クルクルと変わってしまうほどだ。これでアリモプレナはリング際に追い詰められてしまうが、ダイナマイザーは慎重に移動しないとならないため、最後の一撃をすぐに入れられない。逆にリング際を脱出したアリモプレナがダイナマイザーの真横につけると、攻撃をかいくぐるようにしてヒザの辺りに左パンチを入れ、ダウンを奪い返すことに成功した。そのまま決着がつかなかったため、延長戦に突入。延長戦も、ダイナマイザーがスリップダウンをしてしまうが、お互い決定打が出ず、1分がたちまち経過。残り30秒というところで、アリモプレナの右パンチがヒットしてダイナマイザーがダウン。延長戦はサドンデス方式で、1ダウンで決着するため、アリモプレナの勝利となった。

アリモプレナ。干支パワーで活躍中だダイナマイザー。完成したばかりでまだ調整不足のようだが……【動画】問題の空き缶投げ捨て(?)シーン
【動画】ROBO-ONE GP第1試合。アリモプレナ(左) vs ダイナマイザー【動画】第1試合の延長戦

 第2試合は、ペントとivreの闘い。ペントは造られたばかりで、身長体重ともに不明だが、上背は身長27cmのivreとそれほど大きく変わるわけではない。体格は勝っているように見えるが、ペンギン風のかぶり物をしているからであり、それほど差があるわけではないようだ。ペントは下半身に対して上半身を90度ひねってあるのが特徴で、前後左右に動きやすいように足さばきを考慮した仕組みのようだ。ivreは、左手が把持能力のある巨大なグリップ、右手はさいばしで作ったという固定の手先という左右非対称が特徴。大股のゆっくりとした横歩きなどのモーションがとても印象的な1体だ。

 試合は、開始10秒ほどの初接触時にivreがグリップでペントの胴体をガッチリ挟んでそのまま投げ、早くも1ダウンを奪うことに成功。ちなみに、このダウンでivreにも絡んでしまい、両者とも倒れてしまったのだが、その時に取れてしまったのがペントのくちばし。それをレフリーの浅野克久氏が気を利かせて後頭部に貼り付け、どこを向いているのかよくわからない状態になり、観戦している子供たちに受けていた。その後、45秒ほどが経過して、ペントの攻撃に対してカウンター気味にivreの攻撃が決まり、ペントが2ダウンに。しかし、1分30秒ほど経過した時点でペントの攻撃も決まり、1-2に盛り返す。その直後の試合再開のタイミングを狙っていたようで、ivreは右手をいっぱいに伸ばして、まるでフェンシングのような迫力ある突きを繰り出す。大股のモーションを駆使しており、全身を使ったかなりの射程のある攻撃である。この体重がのった一撃が見事にペントをクリーンヒットし、3ダウン。決勝戦は、アリモプレナ vs ivreとなった。

ペント。完成して間もなく、こちらも調整がまだ不足している模様ivre。大柄な機体ではないが、その独特の手先は怖い雰囲気を有する【動画】第2試合。ペント(右) vs ivre

ROBO-ONE GP 3位決定戦&決勝戦レポート

【動画】3位決定戦。ダイナマイザー(左) vs ペント

 3位決定戦は、ダイナマイザー vs ペントだ。試合は、ダイナマイザーの足を止めてのパンチ連打と、ペントの投げ狙いという展開となった。ペントの手先はTの字になっていて、相手を引っかけやすい構造で、両手先を相手の足に引っかけ引っ張って倒そうという作戦だ。しかし、ダイナマイザーはペントよりもかなり重いようで、ちょっとやそっとでは引っ張れない。そこで手を変え、今度は両手を突き出す「かめはめ波」のような打撃技を繰り出していく。これはダイナマイザーには有効だったようで、ダウン。しかし、この後は体重差を武器に徐々にダイナマイザーがペントをリングの角に追いつめていく。しかし、ここでもダイナマイザーが俊敏に移動できないため、リングアウトに持ち込めない。試合は後半に入ると、サーボが熱ダレなどを起こしだしたのか、さらにダイナマイザーの安定感が失われていき、立ってはスリップの繰り返しとなってしまう。残念ながらなかなか勝負にならないまま時間は過ぎ、タイムアップ。1ダウンを奪っていたペントが勝利し、3位の座をゲットした。

 決勝戦は、アリモプレナvs ivre。アリモプレナは牛柄のコスチュームを着用しているため、かなり大柄に見え、細身のivreが体格的には不利そうに見える。体重でも倍近い差があり、アリモプレナが4.5kgで、ivreは2.4kgだ。格闘技の世界で倍の体重差というのはかなり厳しい条件なので、ivreの不利は否めない。しかし、破壊王と呼ばれるivreの先ほどの迫力ある攻撃を見る限りでは、十分通じそうな気もする。特に、フェンシングばりの必殺の突きはアリモプレナにも効果がありそうだ。試合は、守りのアリモプレナと、攻めのivreという展開となる。アリモプレナの安定感が光り、ほかのロボットなら何度かダウンを奪われているのではないかというivreの激しい攻撃を受け止めたり、流したりしていく。やはり体重差が大きいようで、ivreは攻撃力がそのまま自分に返ってきてしまっており、何度もスリップしてしまっていた。その後も、体格差を乗り越えて果敢に攻撃を仕掛けていくivreだったが、1分30秒ほどが経過した頃、遂に弾き飛ばされた拍子にリング外に落ちてしまう。だが転んでもただでは起きないivre。右横にアリモプレナがいる絶好のポジションで試合が再開すると、必殺の突きを繰り出す。が、思った以上に角度が合っていなかったようで、かすりもせず。これが決まっていればわからなかっただけに、何か操作ミスがあって角度が狂ったのか、残念である。そして、この辺りからアリモプレナがギアを入れ替え、攻めに転じていく。すると、体重が強力な武器となり、倒れないにしても、押されてivreはどんどんリング角に追い込まれていってしまう。そのまま結局タイムアップとなり、1ダウンを奪ったアリモプレナが優勝となった。これで、しばらく先だが、ファイナルに出場が決定である。ぜひファイナルでも活躍していただきたい。

【動画】決勝戦。アリモプレナ(左) vs ivre優勝したスミイファミリー

 ちなみに、この後のロボワンゲートとROBO-ONE GPの大会のスケジュールだが、ほぼ併催という形で行なわれていく。ちょっと先になるが、ROBO-ONE GPの第2戦と、ロボワンゲート2「ロボワンゲート イン パナソニックセンター東京」が、7月20日(月・祝)に東京お台場のパナソニックセンター東京で実施される。ロボワンゲート3および4は、「ロボワンゲート イン 郡山」として、8月15日(土)と8月16日(日)にダブルヘッダーで実施だ(会場は福島県郡山市で開催予定)。ROBO-ONE GPの第3戦および第4戦も両日を予定している。

 なお、ロボワンゲート3はサンライズ、ロボワンゲート4はバンダイが主催しており、両日とも優勝賞金が10万円出るほか、1~3位までに各社から賞品が授与されると発表されている。軽量級限定のROBO-ONE GP第5戦は9月26日(土)に予定しており、ロボワンゲート5も9月開催であることから、同日併催が予想される。ROBO-ONE GP第6戦は10月、ロボワンゲート6は未定なので、こちらも10月頃に併催だろう。そして前述したとおり、ROBO-ONE GPのファイナルの年間王座決定戦は11月28日に東京ビッグサイトの2009国際ロボット展内での開催となり、ロボワンゲート7も併催される。年内は、ROBO-ONE GPもロボワンゲートもそれぞれ1戦ずつ12月に予定しており、「ROBO-ONE GP SPINOFF」とロボワンゲート8が予定されている。

 このように、ロボワンゲートはコンスタントに各地で開催が予定されており、ROBO-ONE本戦(もちろんGPも)はレベルが高くて無理という人でも参加しやすいので、諦めていた人はぜひ検討してみてほしい。ROBO-ONE GPのハイレベルなバトルや優秀なロボットも間近で見られるので、勉強になることだろう。



(デイビー日高)

2009/5/7 15:46