ロボスクエア、「第28回ヒューマノイドカップ」開催
~優勝はCavalier、ROBO-ONE認定権はHAUSERとAutomo05
4月5日(日)、福岡市早良区百道浜にあるロボスクエアで、二足歩行ロボットによるバトル大会・第28回ヒューマノイドカップ大会が開催された。
今回のヒューマノイドカップは第15回ROBO-ONEの認定大会となっており、九州・沖縄在住のロボットビルダー(九州地区のホビーロボットの活性化のため)2名が第15回ROBO-ONEに進出できた。
ロボスクエアの入っているTNC放送会館「パヴェリア」。奥に福岡タワーが見える。 | 大会前の計量。写真は今回一番身長の高かったサラマンダー | 独特な構造のリンク脚で参加者の間で話題となっていたIGNIS.02V2 |
●26台が参加した予選
今回のヒューマノイドカップには、26台の参加があった。そのうち九州圏外からの参加者は2台だけで、九州圏内(今回は福岡県と佐賀県)から24台もの参加があった。これはヒューマノイドカップの歴史の中でも初めてのことで、九州ロボット練習会の努力が実を結んだといえるのかもしれない。
予選のファイヤーアタックは、スタートラインからスタートし、パンチカーペット上に置かれたペットボトル3本を倒してから、2分以内にスタートラインまで戻るタイムを競う競技だ。試技は2回行なわれ、良い方のタイムで順位を決定する。
この競技のタイムの上位16台が決勝のバトルトーナメントに進出し、また自動的にトーナメントの組み合わせも決定する。
決勝に進出した16台は次の通り。
1位 automo05(hoypong) 15秒19
2位 スーパーディガーA(ひろのっち) 23秒00
3位 メリッサ・ヘカントレイレス(しゅうせい) 24秒43
4位 HAUSER(クラフトマン) 28秒97
5位 IGNIS.02V2(伊藤慎二) 29秒14
6位 九産大朱鵬(村上) 32秒13
7位 サラマンダー(SHINE) 34秒75
8位 九共大-ZERO(武田真実) 34秒97
9位 九共大-紫電(熊井裕一) 36秒09
10位 マノイ・ノアール(マグネット) 36秒69
11位 BlackRabbit(クボ) 38秒25
12位 スーパーディガーB(しゅんくん) 42秒77
13位 拓歩(八幡高校科学部中村亮太) 47秒79
14位 Cavalier(えまのん) 49秒75
15位 TYRANT MkII(江藤勉) 57秒91
16位 ムーン(CT)1分01秒05
●投げ技が認められた今回のルール
決勝のトーナメントバトルは、3分1ラウンドによる6ポイント制(スリップは1ポイント、ダウンは2ポイントで、6ポイントを奪うと勝ちとなる)で行なわれた。またダウンして10カウント以内に起き上がれなかった場合はKOとなり、負けとなる。
それから2ポイント失う代わりにタイムを取ることもできた(ただし、ダウンカウント中は不可)
今回、ルールで特別に認められたのが「大技」ルールである。第15回ROBO-ONEでは2回戦から投げ技が必須となっており、ROBO-ONE認定権を獲得したロボットも投げ技モーションを持っていた方が望ましいということになった。
しかし、投げ技モーションを作るのは難しく、参加条件に「投げ技必須」とするわけにもいかない。実際、今回決勝トーナメントに参加した機体の中で、投げ技モーションを作ってきたのは、automo05、メリッサ・ヘカントレイレス、HAUSER、サラマンダー、BlackRabbitの5台だけだった。
そこで「投げ技に関しては積極的に認め、投げ技を失敗してもスリップは取らない」ことで「投げ技を推奨」することとなった。ただし、投げ技を成功してもダウンであり、2ポイントを取ることができるのみ。従って試合では投げ技は必ずしも有利にはならない。
複雑な投げ技に関しては投げ技のモーションなのかどうか判定がつかないこともあるため、試合前に参加者から大技申請してモーションを見せてもらい、その技がレフェリーに認められればその投げ技が失敗してもスリップを取らないことになった。
また初心者向けに前転蹴りなど足裏以外の部分がリングに付く攻撃も「大技」として認めることになった。
決勝トーナメントのバトルリング | 試合開始直前の様子 | 別角度から |
●タックルも炸裂した1回戦
1回戦で一番盛り上がったのは、Cavalier VS メリッサ・ヘカントレイレスだろう。メリッサ・ヘカントレイレスは、試合開始早々にCavalierに両足タックルを決めてダウンを奪い、会場を沸かせた。
Cavalierも反撃し、2ダウンを奪う。しかし、メリッサ・ヘカントレイレスは何度もタックルを試み、もう一度タックルを決めてCavalierと同スコアに。だが、最後はCavalierのなぎ払い攻撃の前に沈んだ。
しかし、実戦で見事な投げ技を決めたことは賞賛に値するだろう。
1回戦の他の結果は次の通り。
◎九共大-ZERO VS 九共大-紫電×
◎HAUSER VS 拓歩×
◎九産大朱鵬 VS BlackRabbit×
◎スーパーディガーB VS TYRANT MkII×
◎サラマンダー VS マノイ・ノアール×
◎スーパーディガーB VS IGNIS.02V2×
◎automo05 VS ムーン×
●準々決勝
準々決勝となる2回戦では、Cavalier VS サラマンダーという、今大会屈指の大型機の対決が実現した。試合はCavalierの勝利となったが、大型機同士の戦いということでリングから転落した場合、観客に危険があるのではないかとスタッフがかなりぴりぴりしていた。
実際、サラマンダーがリングから転落しており、これから観客が集まるイベントとしては、大型機に関して何らかの方策を行なう必要が出てくるのかもしれない。
準々決勝の他の結果は次の通り。
◎HAUSER VS 九共大-ZERO×
◎スーパーディガーA VS 九産大朱鵬×
◎automo05 VS スーパーディガーB×
●準決勝とランブル
準決勝の第1試合は、スーパーディガーAとHAUSERの戦い。どちらも九州ロボット練習会の強豪同士の戦いだ。いきなりスーパーディガーAがすくいあげるようなパンチで2ダウンを奪ったが、HAUSERもここから反撃。スーパーディガーAを2回リングアウトで追い込む。しかし、最後はスーパーディガーAのアッパーが決まり、決勝戦に進出した。
準決勝の第2試合は、Cavalierとautomo05の戦い。Cavalierはとにかく攻撃範囲が広く、試合を有利に進めていく。これに対してautomo05は投げで活路を見出そうとするが、Cavalierを投げられず、Cavalierの勝利となった。
アッパーでダウンを奪うスーパーディガーA | HAUSERもスーパーディガーAをリングアウトに追いやる |
長い腕を振り回して攻撃するCavalier | 投げを仕掛けるautomo05 |
準決勝の後にはランブルが2試合行なわれた。1試合目は決勝トーナメントに勝ち残れなかった機体、2試合目は1回戦、2回戦敗退の機体が参加。最後までリング上に残っていた機体が優勝となるルールで実施された。複数のロボットが残っていた場合は、終了時点でリングの中央に一番近いロボットが優勝となる。
1試合目は、ドカレッドとドカブルーの、巨大ロボット同士による夫婦ドツキ合戦となり、ドカレッドが勝利して、夫の面目を保った。
2試合目を盛り上げたのは、今回最軽量機体(1kg以下)のBlackRabbit。ひたすらリング上を飛び跳ねて逃げ回り(途中で頭まで外れていた)、漁夫の利を狙う。そして3台(BlackRabbit、メリッサ・ヘカトンケイル、九産大朱鵬)が残った試合終了直前に中央に陣取ったが、最軽量機体の悲しさで中央から押し出されてしまい、優勝はならなかった。ランブル優勝は最後に中央にいた九産大朱鵬だった。
ランブル第1試合。ドカレッドとドカブルーのどつきあい! | ランブル第2試合。右隅にウサギが一匹(笑) |
●決勝とROBO-ONE認定権決定
決勝戦はCavalier VS スーパーディガーA。どちらも全国大会での優勝経験のある者同士の戦いだ。
試合はどちらもあとポイント1つで負けとなるところまでもつれ込んだが、スーパーディガーAが倒れて、Cavalierの優勝が決まった。
3位決定戦のHAUSER VS automo05は、この時点では勝った方が認定権を獲得できるという重要な試合となった。試合はお互いに激しい攻撃を出し合うものとなったが、最後はautomo05がリング外から転落して決着。HAUSERは第7回YOKAロボ決勝戦でのリベンジを果たした。
決勝戦のスーパーディガーA(左) VS Cavalier | 別角度から | 優勝が決まった瞬間 |
3位決定戦、automo05(左) VS HAUSER | HAUSERの豪腕にゆらぐautomo05 |
今回のヒューマノイドカップが終了した時点では、2位のスーパーディガーAと3位のHAUSERがROBO-ONE認定権を獲得していた。
しかし、スーパーディガーAのひろのっち氏が認定権を辞退。またHAUSERのクラフトマン氏が、ゴールデンウィーク中のスケジュールの都合でROBO-ONEへの参加を一時考慮。そのため認定権の獲得決定が一時的に混乱したが(ROBO-ONE公式ページトーナメント表での変更はこの影響による)、最終的には3位のHAUSERと4位のautomo05が認定権を獲得し、第15回ROBO-ONEへの参加が決定した。
トーナメント表 | 今大会の参加ロボット | 記念写真 |
2009/4/28 22:01