「筑波宇宙センター特別公開」レポート

~水ロケットの工作・打ち上げ体験や宇宙ロボット試作機の展示など


 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、4月18日(土)に茨城県つくば市にある筑波宇宙センターの特別公開イベントを開催した。筑波宇宙センターは普段でも見学が可能だが、特別公開では、普段では見ることができない施設を見学できるだけでなく、さまざまな体験イベントや展示、講演会などが行なわれるため、人気のイベントであり、毎回多くの来場者が訪れる。今年は天候にも恵まれ、来場者は1万8,011人にも達した。

 開場は10:00からだが、子供に大人気の水ロケット教室に参加するなら(対象は中学生以下)、10:00に着いたのでは遅すぎる。今回は、10:00から12:00と、13:30から15:30の2回に分けて「工作+打ち上げ体験」と「打ち上げ体験のみ」が行なわれた。定員はそれぞれ200名ずつで、合計800名が体験できるが、特に人気が高いのは「工作+打ち上げ体験」で、9:00には長蛇の列ができ、整理券があっという間になくなってしまった。工作+打ち上げ体験をしたいのなら、遅くとも9:00には現地に着きたいところだ。

筑波宇宙センターのシンボルともいえるH-IIロケットの実物。さすがに迫力があるH-IIロケットの後部
8:40頃のロケット会場の様子。まだ並んでいる人は少ない。右側の打ち上げ体験のみには誰も並んでいない9:10頃には行列がかなり長くなった

 水ロケットは、ペットボトルロケットとも呼ばれるが、その仕組みは単純だ。ペットボトルに水を入れて、そこに多量の空気を送り込み、空気の圧力によって水を勢いよく噴出させることで、その反動で上空に発射されるというものだ。うまく作れば、200m近くも飛ぶという。広いスペースがないとなかなか試しにくいが、自分たちで作った水ロケットが一斉に発射される様子はなかなか壮観だ。

【動画】並んでいる間に退屈しないように、9:00過ぎくらいから、スタッフが水ロケットの打ち上げデモンストレーションを開始打ち上げ体験用に用意された水ロケット9:15頃に午前中(10:00から12:00)の分の整理券を配り始めた。この時点でほぼ定員の200名(中学生以下の子供のみ対象)に達していたようだ
【動画】新型のH-IIBロケットを模した水ロケットの打ち上げデモンストレーション。4本のペットボトルから同時に水を噴射させている【動画】パラシュート付き水ロケットの打ち上げデモンストレーション。2機打ち上げたが、右側はパラシュートがうまく開かず失敗筆者は8:40くらいに並びはじめて、14番目の整理券をゲット
受付で、ノーズコーンに使う色画用紙と4枚の羽を受け取る。色は各種用意されているので、好きなものを選べるこれが水ロケットの材料。この写真には写ってないが、ペットボトルも受け取る水ロケットの作り方の説明。子供でも読めるように、難しい漢字は使われていない。5、6人の参加者ごとにJAXAのスタッフが1人付き作り方を教えてくれる
まず、ノーズコーンとなる色画用紙を線に沿って切り、★印が重なるように丸めて円錐形にするおもりの役割を果たす粘土をノーズコーンに詰める新聞紙を丸めて粘土の上に乗せ、ガムテープで落ちないように固定する
ノーズコーンをペットボトルのおしりの部分にガムテープで固定したら、羽にはさみで切り込みを入れる。丸い穴のところまで切り込みを入れればOK4枚の羽をペットボトルにガムテープで取り付ける。羽がペットボトルに対して平行になるようにして、等間隔に取り付けることがポイント羽をつけたら水ロケットは完成
完成した水ロケットをチェック係のところに持って行き、チェックしてもらう。OKなら、ホログラムシールを貼ってくれる水ロケットに水を入れてもらう。水を勢いよく後ろに噴出させ、その反動でロケットが発射される水を入れたら、Oリング付きのキャップをはめてもらう
これが発射台。JAXAスタッフによる手作り品だスタッフに水ロケットを発射台に取り付けてもらう水ロケットを発射台に取り付けたところ。取り付けが完了したら、自転車用空気入れを使ってペットボトルの中に空気を入れる
この自転車用空気入れを使った。圧力はかなり高めにする【動画】カウントダウンにあわせて、レバーを引くことで、水ロケットが発射される

 また、別の場所では、より気軽にできるかさ袋を利用したロケット(手で投げて飛ばす風船のようなものだが)の製作教室も行なわれており、こちらは小さい子供が喜んで投げていた。

S-3の建物内では、かさ袋ロケットの製作教室をやっていたかさ袋ロケットの作り方は非常に簡単だ。手で投げると結構よく飛ぶ

各種のロボットが展示されていた宇宙ロボット実験室

 S-1の建物では、宇宙ロボット実験室と題し、JAXAが現在開発中のさまざまな宇宙ロボットが展示されていた。JAXAでは、宇宙飛行士と一緒に作業を行なったり、宇宙飛行士の代わりに作業を行なうロボットを、アストロボット(Astrobot=Astronaut+Robot)と名付けている。アストロボットの例として、高出力精細ロボットハンドや四足歩行ロボット、宇宙ステーション用の大型ロボットアームなどの展示やデモが行なわれていた。

宇宙ロボット実験室では、宇宙で活躍するロボットの研究を行なっている開発中の高出力精細ロボットハンド。宇宙飛行士並の器用さと握力を実現することが目的高出力精細ロボットハンドは、マスタースレーブ方式でコントロールされる
【動画】高出力精細ロボットハンドを動かしているところ。操縦者の手の動きにあわせて動く宇宙用四足歩行ロボット。微小重力の宇宙空間を安全に移動する技術の研究が行なわれているテンセグリティと呼ばれる棒材とワイヤーを組み合わせた構造を採用したロボット。軽くて大きな構造を作れることが特徴
精細作業用協調ロボットシステム。小型軽量なロボットアームや精細作業用ハンドを備えたロボットが複数で協調作業を行なうことを目指している故障衛星をロボットアームによって捕獲するための模擬試験装置
宇宙ステーションロボットアーム。操縦体験も行なわれていた人工衛星「おりひめ」「ひこぼし」に搭載されたロボットアームの遠隔制御訓練用設備

 また、国際宇宙ステーションでの「宇宙飛行士支援ロボット実証実験」(2012年打上予定)用として開発が進められているEVA支援ロボットの展示も興味深かった。このEVA支援ロボットは、船外プラットフォームに取り付けられ、宇宙空間で作業を行なうものだが、無重力空間を移動するために、3本以上のテザーを船外の手すりにひっかけて、テザーの長さを調節することで、空間内を自由に移動するというものだ。

国際宇宙ステーションでの「宇宙飛行士支援ロボット実証実験」用に開発が進められているEVA支援ロボットの仕組みEVA支援ロボットは、ロボット本体から3本以上のテザー(ヒモ)を張り、テザーの長さを調整することによって空間を移動する【動画】CGによって作成されたEVA支援ロボットの活躍シーン

人工衛星関連や「きぼう」関連の展示も人気

 人工衛星ゾーンでは、「かぐや」の3D映像を楽しめる手作りドームのプチ・プラネタリウムや、超高速インターネット衛星「きずな」を使った衛星中継の実験、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」に搭載されているものと同じカメラでの記念撮影などが行なわれていた。また、全部で9種類の人工衛星カードが配布されており、子供たちが一所懸命に集めていた。

 宇宙ステーションゾーンでは、国際宇宙ステーション(ISS)で稼働している日本実験棟「きぼう」や宇宙ステーション補給機(HTV)のエンジニアリングモデルをガラス越しに見ることができた。宇宙服の展示も行なわれており、一緒に写真を撮る人が多かった。また、「きぼう」の運用管制室の見学も行なわれていたのだが、こちらは長蛇の列で見学を断念してしまった。

2009年1月23日に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」ができるまでの様子を紹介するパネルいぶきの模型いぶきは、二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスを計測することができるが、その原理の解説と、赤外線サーモグラフィの実演
いぶきに搭載されているものと同じカメラ(機体周辺をモニターするためのサブカメラ)で、来場者の記念撮影を行ない、プリントアウトしてもらえるサービスが人気だった衛星からの電波を跳ね返すために地上に設置されるコーナーリフレクタの実物地球観測衛星「だいち」から見たコーナーリフレクタの様子
超高速インターネット衛星「きずな」の模型左がHTV(宇宙ステーション補給機)のエンジニアリングモデル。右に写っているのは「きぼう」船内実験室のエンジニアリングモデルISSの一部を構成する日本実験棟「きぼう」船内実験室のエンジニアリングモデル
実際にスペースシャトルに搭載されて宇宙を旅してきた実験装置。これは温度勾配型電気炉同じく、スペースシャトルに搭載された実験装置。こちらは無担体電気泳動装置国際宇宙ステーションの現在の様子
船外活動(EVA)用の宇宙服。船外活動ユニット(EMU)と呼ばれる。約7時間のEVAが可能だ通称オレンジスーツと呼ばれる、打ち上げ/帰還用与圧服(LESスーツ)。1986年のスペースシャトルチャレンジャー号の事故の後、開発された与圧服であり、スペースシャトルの打ち上げ/帰還時に着用し、緊急避難時の気圧低下や温度差から宇宙飛行士を守る

ロケット打ち上げ時の轟音体験や家族で楽しめる売店

 構造試験棟では、H-IIAロケット打ち上げ時の轟音を体験できるデモを行なっており、人気を集めていた。H-IIAロケットの打ち上げ時は、安全のために半径3km以内への立ち入りは禁止されているのだが、その3kmギリギリの地点で録音した音を再現するというもので、映像もスクリーンに映し出されるため、実際に打ち上げを見ているような臨場感と迫力が感じられた(もちろん、実際の打ち上げはもっと空気が震えるような迫力があるのだろうが)。3km地点での騒音レベルは113dB程度だが、雷鳴に似た感じに聞こえた。

 打ち上げの際には騒音だけでなく、大きな振動が伴うが、その振動を利用したおもちゃや実験を紹介する「振動おもちゃコーナー」も人気があった。振動する物体をたわしに取り付けてレースを行なったり、細かく振動する鉄板の上に塩の粒をまくと不思議な模様が出てくる実験など、子供たちで賑わっていた。また、ソーラーパネルの紹介コーナーでは、ソーラーカーの体験操縦も行なっており(重量制限あり)、行列ができていた。

構造試験棟では、ロケット打ち上げ時の轟音を体験できるデモを行なっていた身近にあるさまざまな音のレベル【動画】H-IIAロケット打ち上げ地点から約3km離れた地点での騒音の様子。打ち上げから10秒近く遅れて音が伝わってくる。騒音レベルは最大で113dB程度
【動画】こちらはNASA提供のスペースシャトル打ち上げ時の音響。離れた地点での音ではなく、実際に乗組員が聞いている音を録音したもの。こちらの騒音レベルは最大で115dB程度C-3の建物前で開催されていた「振動おもちゃコーナー」。電動ハンディマッサージ機などをたわしに取り付け「ブルブルたわしレース」などを行なっていた【動画】ブルブルたわしレースの様子。コースは左右にカーブしているが、振動と重力の力で走り抜けることができる
細かく振動する鉄板の上に塩の粒をまくと、不思議な模様ができてくるという実験【動画】振動板の上に塩をまくと、塩が勝手に動いて規則正しい模様が描かれるソーラーカーの体験操縦もやっていた

 食堂の前には売店が出ており、唐揚げやフレンチポテト、名物のロケットパンやH-II焼などが売られていた。来場者が多いので、13:00過ぎにはロケットパンやH-II焼などは売り切れてしまっていた。お土産などにするつもりなら、早めに買っておいたほうがいいだろう。

 筆者は今回初めて、筑波宇宙センターの特別公開に行ったのだが、なかなか楽しかった。本レポートで紹介したのは、ごく一部の展示やデモだけで、他にも面白そうな展示はたくさんある。家族で楽しめるイベントやデモが多数行なわれており、子供連れも多かった。大人も子供も、無料(民間の博物館などではないので当然だが)で楽しめるのも嬉しい。筑波宇宙センターの特別公開は、毎年春と秋に1日ずつ行なわれているので、興味を持った人は是非行ってみてはいかがだろうか。

食堂の前の出店では、名物の「ロケットパン」や唐揚げなどが販売されていた「H-II焼(今川焼)」が気になったので、1つ買ってみたH-II焼の正体は、今川焼にH-IIの焼き印が押されたものだった


()

2009/4/27 22:32