ノモケンの「素組でロボット」
バンダイ 1/100スケール MG「MS-07B グフ Ver.2.0」(その2)

~固定武装に合わせた柔軟なポーズ付け、さらに「A」型にも換装

Reported by 野本憲一

 このコーナーは「ロボットのプラモデル」を組み立てて、その姿やギミックを中心に紹介していく。作り方は、塗装などをせず、あえてキットのまま組み立てていく“素組(すぐみ)”に限定。ここでは模型としての仕上がりを高めるよりも、キットを手早く楽しむことを優先させるのだ。

 最近のキットは、成型色(パーツの素材色)だけでもかなり色分けされていて、無塗装でも見栄えのする姿に仕上がるものも多い。また、塗装の剥がれを気にせずに動かして遊ぶこともできるのもメリットだ。購入した模型を貯め込まずドンドン組むためにも、レッツ素組!


 前回に続き、1/100MG「MS-07B グフ Ver.2.0」を製作、完成させる。

 すでに頭から腰までの上半身を製作し、今回組み立てるのは腕、脚と武装となる。腕や脚部は外観の再現はもちろんだが、それを崩すことなく、可動範囲を広く確保している点が近年ガンプラのもっとも進化しているところ。そのための仕組みが分かるように紹介していこう。

 モビルスーツ「グフ」の特徴は固定武装。通常のモビルスーツが腕(手)で武装を構えて戦うのに対して「グフ」では「ヒート・ロッド」や「フィンガー・バルカン」など、武装が腕に内蔵されている。それらの再現もこのキットの見所だ。さらに、劇中ではその固定武装がなく、ザクやドム用の武装を持って戦うシーンもあった。このキットでは「初期型(MS-07A)」として、その状態も再現できるようになっている。

 こうした点に注目しつつ、後編の製作に入ろう。

パッケージ
バンダイホビー事業部 1/100スケール マスターグレードモデル「MS-07B グフ Ver.2.0」。価格は3,990円
前回までの組み立て
頭部、胸~腹、腰までを製作した。モノアイ、コクピットハッチが可動、上半身は前後に屈伸もできる

脚部

 モモから足首まで内部フレームを組んだのち、外装をかぶせるように組んでいく。

股関節軸パーツ
モモの上部に付く股関節パーツ。手前の「L」型部品の軸を板状ポリパーツで受ける
股関節軸
組み立て後。半球状の部品から股関節軸が出ている。この軸は上下にスイングする。下側にモモに繋がる軸もある
モモ~スネ、内部パーツ
関節を受け持つフレームパーツ群。写真中央部がヒザ関節。そこにモモ、スネ側のフレームが接続する。さらに外装形状を反映した「内部メカ」パーツを被せる
スネフレーム
スネフレームパーツを後ろ側から見たところ。左はヒザアーマー用フレームでスネ内に「パチン」とはめ込み可動する。右は内部メカで外装の取り付けを支える
ヒザ関節組み立て
ヒザ関節はモモ、スネ側フレームの先端軸、ヒザアーマーフレーム、モモ内部のシリンダーの4軸を左右のパーツで挟み込むスタイル
モモ組み立て
フレームの前側(写真右)に格子状のメカパーツを被せる。この際に股関節軸を受けるポリパーツも封入。さらに左右のメカパーツも取り付けてモモ内部は完成
スネフレーム
スネ側にもフレーム左右にメカパーツを付ける。さらにヒザアーマーは下にこのようなパーツが付くが、これはスネ外装を付けた後にはめ込む
スネフレーム完成
モモ~スネまでのフレームが完した。単なる関節フレームではなく、「外観を反映した内部メカ」となっているのが分かるだろう
足首パーツ
こちらは足首のフレームパーツ。上側の4パーツが足首関節。下がツマ先~カカトの足首全体となる
足首内部
足首側を組んだところ。ツマ先側は上下に振れる。中央の丸は足首関節の受け。その前後にシリンダー状パーツがある
足首関節
組み上げた足首関節。上側はピッチ、ロール軸、下はボール状で可動する。前後のシリンダーパーツの取り付けもボール
足首内部完成
足首関節を取り付けた状態。前後のシリンダーは足首可動に合わせて伸縮する。メカの再現と隙間を埋める役割がある
モモ外装
モモの外装パーツ。モモは前後に大きく分割。半円状パーツは股関節軸用
股関節軸外装
股関節軸部の外装は後面側のみ
モモ外装取り付け
モモは前後からはめ込む。内部メカ部のミゾや前後パーツのピンで合わせる
スネ外装
スネ外装は前、左右と後面の上、すその5パーツに分割。合わせ目に違和感がないように配慮されている。ヒザアーマーも独立している
スネ外装取り付け
スネ前後外装を付けた。ヒザアーマーの下側フレームパーツはここで取り付け
すそ外装取り付け
スネ左右のパーツを付けたら「すそ」パーツを後ろからはめる。ミゾが切ってあり、左右のパーツを挟み込む
足首外装パーツ
足首部分の外装パーツ。足裏はつま先の平面部が別パーツになっている
足首完成
ブルーのパーツは上から、グレーのパーツ下からそれぞれフレームに取り付け足首の完成
モモ、股関節の取り付け
脚部各ブロックが出来たところでそれぞれをつなぐ。まずはモモ先端に股関節軸を差し込む
足首接続
足首側はスネフレームの下端を足首関節にはめ込む。
脚部完成
完成した脚部。外装は左右対称。ヒザ関節の後ろは可動範囲を広く取るために切り欠いた形状になっている
フレーム状態との比較
外装内のスペースを埋めるように密度の濃いものになっている
【動画】脚部は可動の様子を動画で確認。柔軟に動く足首や、ヒザ曲げでのアーマー移動の様子に注目股関節の接続
股ブロックに股関節を差し込む。腰アーマーを大きく開くと取り付けやすい。組み立てでもアーマー可動が生きる
股関節接続2
股関節軸はポーズ付けでの肝なので中にしっかり押し込んでおくこと
頭部~脚部完成
上半身と脚を取り付けた姿。脚部正面ではモモからヒザアーマーに連なるラインも綺麗に再現されているのがわかる

腕部

 「グフ」の特徴が集約された腕部の製作。基本部分は左右共通だが、前腕の一部や、手首が左右で変更される。

肩アーマーパーツ
大型のスパイクを持つ肩アーマー。ここも内部パーツとの二重構造。中央のグレーのパーツは肩ブロックへの接続ポイントとなる
アーマー組み立て
アーマー全体を組んだ後にスパイクを差し込む。湾曲したスパイクは2段階になっている。左右貼り合わせではないので、丸断面がずれる様なことはない
アーマー完成
完成した肩アーマー。フチの反りなど連続する曲面で滑らかに再現されている
アーマー内側
中央の突起で肩ブロックからの接続軸(ボール)を受ける。この接続は「ザクVer.2.0」よりも簡潔にまとめられている
腕部全パーツ
左から肩ブロック、上腕、前腕までのパーツ群。構造的には「ザクVer.2.0」準拠だが、グフはヒジアーマーがないので前腕部はシンプルな作りになっている
肩関節内部
肩ブロック内部を組んだところ。ここは「ザクVer.2.0」と全く共通
肩外装取り付け
肩ブロックの完成。関節部の切り欠きが大きく、可動範囲を広く取れるようになっている。上面はアーマーで隠れるので外観も損なわない
ヒジ関節組み立て
ヒジ関節は上腕、前腕の先端の軸とヒジアーマー(に相当するパーツ)を左右から挟み込む
腕フレーム完成
上腕、前腕側にメカパーツを被せ、手首接続用ポリパーツを付けて腕部フレームの完成
腕外装パーツ
上腕、前腕とも2パーツで覆う。円形パーツ前腕側につく。
腕外装取り付け
上腕~前腕(左右共通部分)が完成。前腕の開口部は「ヒート・ロッド」が装着されるところ。ここから左右別に組んでいく
ヒート・ロッド基部部品
写真左がヒート・ロッドを装備する部品3点。青いカバーとグレーのロッド基部、さらにロッドの先端パーツ。隣は装備しない腕の開口部を塞ぐためのパネル
ヒート・ロッド基部組み立て
ヒート・ロッドを装備する右手の組み立て。外装を取り付ける前にロッドの基部パーツを上腕メカに差し込んでおく
ヒート・ロッド基部組み立て2
前腕の外装をつけたらロッド先端パーツを基部につけ、カバーを被せる
ヒート・ロッド基部完成
ヒート・ロッドが内蔵された右前腕の完成。ヒート・ロッド先端がちらりと見える状態になる
右手首パーツ
右手首はザクなどと同様の指。各指の付け根がボールジョイントで、親指以外は第二関節でも分割し、可動する。中指から小指の境目で切り離せばそれぞれ独立可動もできる
右手首組み立て
手首の甲側から。四角枠パーツに手首軸をとおして前腕に接続する
右手首完成
綺麗な「グー」の手から「銃の持ち」などひろく対応する可動指。MGシリーズでは標準と言っていい仕様
左前腕
ヒート・ロッドを装備しない左手前腕はそこを埋める用にパネルパーツを取り付ける。緩い曲面だが一体パーツのように綺麗に収まる
フィンガー・バルカン、パーツ
左手首の「フィンガー・バルカン」用パーツ。各指がそのまま機関銃の銃身になっている。指はボールで接続される
フィンガー・バルカン組み立て
指のボールジョイントは節を密着させて真っ直ぐ固定。少し引き出すとボールを活かして曲げられる
左手首完成
完成した左手首。写真は人差し指、中指は真っ直ぐに。薬指、小指は関節部を引き出した状態
手首、前腕比較
左右の腕の違いを比較。前腕は共通化しているがどちらも違和感のない仕上がり。左手首は銃などは持てないので手の平の「-」突起などはない
腕部完成
完成した左右の腕。肩ブロックに胸からの軸をとりつければ全身の完成となる
【動画】ヒジ関節は折り曲げるようにまで動く。外観上はヒジアーマーは無いのだが、それに準ずる内部メカパーツがヒジ関節に連動して動いている

グフ本体完成

 遂に完成したグフ本体。まずはその外観を各面から確認。

全身 前
頭部や肩の球面、角の立った脚部、緩やかなカーブを描く面など、造形的なメリハリも見事に再現している
全身 斜め
肩アーマーが胸に少し被り、肩を寄せた様な設定画のイメージに近い姿
全身 後ろ
大型のランドセルが目立つ背面

武装

 グフに装備されるヒート・ロッド、シールド、ヒート・サーベルの組み立て。

ヒート・ロッド パーツ
ヒート・ロッドはボールと受けが一コマになっているパーツをひたすらつないでいく。前端部の4コマのみ専用品であとは同じパーツが44コマある
つなげて切る
各パーツを全部切ってからつなぐこともできるが、落としたり無くしたりしないように、連結させつつ切るように説明書では推奨されている
ヒート・ロッド完成
全コマつなぎ合わせたヒート・ロッド。各コマを密着させれば直線的になり、少し引き出せばクネクネと動かせる。全長は約23cm
ヒート・ロッド完成2
蜷局を巻くようすると直径3cmほどにまとまる
腕に接続
腕への接続は、ヒート・ロッドの末端を前腕側の先端パーツ(同色)にそのまま差し込む
手首で持つ
接続したヒート・ロッドに指を添える。こんなポーズも決まる
シールドパーツ
腕に取り付けるシールド。左から前面に重なる2パーツとのぞき穴部。右は裏面と腕への取り付け部のパーツ
シールド裏面
腕への取り付け部はシールド中央部で回転する。前腕のミゾにはめる形で左右どちらの腕にも装着できる
シールド表
パーツの重ね合わせ滑らかに繋がり、綺麗な色分けとなる。のぞき穴には内部には放射状のスジ彫りまで施されている
ヒート・サーベルパーツ
ヒート・サーベルは柄(グリップ)の部分が2パーツ。そこに大型の発光部分(クリアーオレンジ)を取り付ける。発光部分は未使用時には取り付けない
ヒート・サーベル完成
発光状態のヒート・サーベル完成。未使用時を再現する場合は発光部分のみを取り外す
シールドへの収納
グリップだけの状態ではシールド裏にこのように収納できる

グフ完成

 各武装も装着して完成比した「グフ Ver.2.0」。アクションポーズとともにその姿を堪能しよう。

全身
右手にヒート・ロッド、左腕にシールドを装備し、さらに首を回してモノアイが少しずらした姿。“悪役”っぽさにじみ出ている
後面
同じ姿の後面。ポーズ付けではヒート・ロッドを自然に曲げるのがポイントになるだろう
フィンガー・バルカン構え
肩を前に振って左腕を構えると腕の軸線と顔が近くなり、より“狙っている”感がでる
スタンド接続
別売の「アクションスタンド」との組み合わせての飛翔ポーズ。腰アーマーを後ろにずらしてモモを大きく上げている
サーベル構え
ヒート・サーベルを構えた姿。肩関節が前方に移動できるので、両手を添えて構えられる
手首アップ
左手の指は大きくは曲がらないが、添えている感じを出すことはできる
ヒート・ロッド送出
ヒート・ロッドを振りだしたポーズ。ヒート・ロッドは軽い力で動くので実際にこの状態では保持できない。写真は見えない向きに針金を貼って撮影してみた
ヒート・ロッド構え
ヒート・ロッドを振り上げたポーズをとってみた
フィギュアとの対比
パイロット「ランバ・ラル」のフィギュアを手の上にのせハッチを開いたコクピットに近づける。実際にあったらどう乗り込むかイメージが膨らむ

初期量産型、グフ「A」タイプを作る

 「MS-07B グフ」として完成したところから両手首が通常タイプの「MS-07A グフ 初期量産型」に組み替えてみる。この場合、ヒート・ロッドやフィンガー・バルカンを使用しない。

腕の変更パーツ
変更点は各腕のみ。右腕はヒート・ロッド用のパーツを外し、パネルで塞ぐ。左腕は手首パーツを通常タイプの手の平に交換する。変更点の組み立ては反対側の腕で行なっているのと同じ
腕の変更後
組み替えを行ない、両腕とも同じ形状になった。
グフ「A」タイプ完成
初期量産型グフの全身。腕のみの変更だが、すっきりした印象を受ける。この状態なら手持ち銃が欲しい
マシンガン構え
そこで、「ザク Ver.2.0」のキットからザクマシンガンを拝借して持たせてみた。両手持ちポーズもできる

 2回に渡って紹介してきた1/100 マスターグレードシリーズ「MS-07B グフ Ver.2.0」。機体の特徴を余すことなく再現している点、広い可動範囲、劇中の雰囲気を高いレベルでまとめ上げた造形など、「ファーストガンダム」世代にとっては満足度の高い製品といえるだろう。

 最後に「ザク Ver.2.0」との対比で今回は終了。

ザク Ver.2.0との比較
似て非なるザクとグフ。並べてみると各部形状だけではなくボリューム感もかなり違う

(C)創通・サンライズ


野本憲一(のもと けんいち)
職業:プロモデラー。1967年新潟市生まれ。プラモデルやトイ、ガレージキット等の原型製作に携わると共に、模型専門誌ライターとしても活動すること20余年。著書に模型製作テクニックをまとめた「NOMOKEN(野本憲一モデリング研究所)」(ホビージャパン)がある。




2009/8/11 17:59