影木准子の海外ロボットニュース ダイジェスト
日本の国外ではどんなロボットが活躍し、話題になっているのだろうか。これから毎月1回、米国を中心とした海外の主なロボット関連ニュースのダイジェストをお送りする。
●容疑者拘束でロボット活躍
まず今月は、一般紙の社会面をにぎわせたこのニュース。事件のあった地元、ロサンゼルスの日刊紙LAタイムズによると、シークレット・サービスから逃走し、連邦ビルの駐車場で車の中に立てこもっていた男性を取り押さえるのにロボットが活躍した。大手ブログBoing Boingでロボットの写真を見ることができるが、これによると、このロボットは軍事大手Northrop Grumman社の「Remotec」というロボットらしい。ロボットは車の窓を割って催眠ガスを繰り返し吹き込んだ。それでも男性は出てこなかったため、最終的には警察がテーザー銃を使って引きずりだした。
●無人機などが大集合
今月はワシントンでAUVSI(Association for Unmanned Vehicle Systems International)の主催する展示会があった。無人の航空機、車、船に関しては世界最大の見本市という。ロボット系ブログのBotJunkieが現地に取材に行き、レポートしている。ここやここ、ここで写真も多数見られる。
●ジョージア工科大学の新ロボット
ジョージア工科大学のAndrea Thomaz助教授はHRI(Human Robot Interaction、人間とロボットのインタラクション)の研究に使用する新しいロボット「Simon」を発表した。同助教授はこのほど、Technology Review誌の「2009年 ヤング・イノベータ(35歳未満)」の1人に選ばれた。同助教授のブログによると、Simonは上半身ロボットで、身長約170cmの女性のサイズ。映像をYouTubeで見られる。
●他を「だます」ロボット
ロボットの研究で知られるスイスのEPFLの発表した研究内容も大きな話題になった。Technology ReviewやWIRED、Popular Scienceなどが報じている。
実験の内容を簡単に説明するとこうだ。人工ニューラルネットワークを搭載する複数の小型のロボットに「食べ物を獲得せよ」というゴールを与える。床に配置されたリングが「食べ物」で、各ロボットはこのリングの近くにいる時間が長いほど高得点をもらえる。また各ロボットは青い光を発するようになっており、他のロボットはこの光をカメラによって検知できる。食べ物の周囲にロボットが複数固まると、そこから発せられる青い光の量が増え、他のロボットにも食べ物の在りかが分かり、ますます集積する。しかし食べ物の周囲のスペースは限られているため、ロボットは場所取りで競うことになる。
最も高得点のロボットのニューラルネットワークをコピー・結合し、次世代のロボットに搭載するということを繰り返す。すると、50世代目までには、食べ物にありついたら光を発することをやめるロボットが現れ始め、数百世代となると、食べ物に到着したロボットは全く光を出さないようになった。これは他のロボットに食べ物の場所を知らせないためであると研究者たちは考えている。論文が近く発表される。
●英国の農業ロボット
英国のハイテク・ニュース・サイト、The Registerによると、英国のNational Physical Laboratory(NPL)は、カリフラワーやレタスの収穫時期を見極めることのできる視覚システムを開発するという。これまで作物の収穫作業を担っていた移民労働者が減少しているため、収穫を自動化するのが目的だ。記事によると、作物を実際に刈り取ることのできるロボットを実現する技術はすでに産業界が持つが、どれを採るべきかを検出する技術がないため、NPLに開発委託する。
●ネット長者の資金がロボットに?
マサチューセッツ工科大学(MIT)のロドニー・ブルックス教授がMITの職を休職し、昨年設立したロボット・ベンチャー、Heartland Roboticsは米ロボット業界で注目の的だが、このほど同社が700万ドルの資金調達を実施した。MIT周辺のハイテク企業情報に詳しいXconomyとMass High Techによると、出資元はネット小売の巨人、Amazon.comの創業者兼最高経営責任者、ジェフ・ベゾス氏の個人資産投資会社の模様。米証券取引委員会(SEC)提出された報告書によると、Bezos Expeditionsの責任者がHeartland社の取締役に就任しており、これはこの投資会社がHeartland社に投資した結果と見られる。
●日本のロボットで注目されたもの
今月は東京大学 大学院情報理工学系研究科の石川小室研究室のロボットが大きな注目を浴びた。
AP通信が野球をするロボットのデモに関する記事を流し、それが米国各地の新聞紙面、媒体で使われたため。また、同研究室の高速多指ハンドに関する記事が人気ブログで相次ぎ取り上げられた。米国のブロガーたちの手によりYouTubeにアップロードされた画像に世界中からアクセスが集中した。これやこれなど。
名古屋のラーメン店、「名古屋総本家 ふぁーめん」のラーメン調理ロボットもその一つ。ここやここなどで取り上げられ、一躍有名に。YouTubeで一番見られているこのビデオにはハングルの字幕が。
2009/8/31 20:18