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「第26回日本ロボット学会学術講演会」が開催
~展示ブースレポート


神戸大学の六甲台キャンパス 工学部
 9月9日~11日までの3日間、神戸大学工学部キャンパスにおいて「第26回日本ロボット学会学術講演会」が開催された。主催は社団法人日本ロボット学会、共催は神戸大学工学部・工学研究科。

 「Seeds 発掘! 我が研究室のRT」をメインテーマに、ロボット工学関連の研究者が一同に会し、ロボットが幅広く産業で用いられ社会に役立つための技術や知見等を発表した。同講演会には、ロボットの要素技術に関する製品や、学習ロボットキット、サービスロボットの展示も行なわれていた。本稿では、出展企業のブースを紹介する。


初級者向けのロボット学習キットが充実

 学生やロボット開発初級者向けのロボット学習キットが、数多く展示されていた。二足歩行型や車輪型、電子工作が必要なものやセンサー系オプションが充実しているものなど、学習ジャンルやレベルに応じたキットがあった。

 近藤科学株式会社は、二足歩行ロボット「KHR-1」に搭載可能なC言語プログラムに対応した小型マイコンボード「KCB-1」と、その応用例としてアームロボットを紹介した。

 KHR-1は、教示機能でロボットのポーズを複数つくり、パラパラアニメのようにつなげれば動かすことができるという簡単なプログラミングが魅力だが、大学等の授業で教材として活用するには、C言語でプログラムをしたいという要望があったそうだ。

 ロボットのモーション全てをC言語でプログラミングするのは難易度が高いが、KCB-1を用いることで、歩行やパンチ、起き上がりなどの基本モーションは従来のGUIオペレーションで作成し、センサーの値でどのモーションを呼び出すかをC言語で記述できる。

 まず、しっかり動くロボットを作ってから、モーションを呼び出すトリガー部分だけをC言語で記述するため、初級者でも比較的容易に自律ロボットの製作が可能になるという。

 このKCB-1を用いたアーム型ロボットは、アームを回転した時に逆演算でハンドの位置を計算して、常にハンドを正面に対して水平に保つデモンストレーションを行なっていた。


【動画】KHR-1の頭部に超音波センサーを搭載。自律でターゲットに向かうデモンストレーション 【動画】KCB-1のデモンストレーション用のアームロボット。ハンドを正面に向けたまま、アームを動かすように逆演算している KCB-1。ルネサステクノロジ製M16C/Tinyマイコン搭載。タイマーやAD変換器およびシリアルポートを装備。アセンブラおよびC言語で開発可能。サイズは30×35mm(幅×高さ)

 スマッツ株式会社のブースには、2008年7月に発売されたスピード競技用の車輪型自律走行ロボット「ロボスプリント専用キット」が展示されていた。

 ロボスプリントは、長さ8m、幅45cmの直線コースを速く走り、規定されたゴールエリアできっちり停止する競技。キットは、前方に突き出たアームに光センサーを搭載し、床面の白線を検出してトレース走行が可能。基板の組立にハンダ付けが必要で、電子工作からプログラミングまで学べるロボットキットになっている。価格は3,990円。

 同社は、今後このキットを使ったワンメイクレースも企画していきたいという。


スピード競技用の車輪型自律走行ロボット「ロボスプリント専用キット」の完成例 電子工作からプログラムまで、ロボット製作を一貫して学習できる

 株式会社JAPAN ROBOTECHの「RoboDesigner」は、タッチセンサー、アナログ赤外線センサー、アクチュエータなどの部品を自由に組み合わせてオリジナルロボット製作ができるキットだ。

 GUIでプログラミングできるタイルプログラム環境TiCollaで、初級者もアルゴリズムを習得でき、組んだプログラムをC言語へ翻訳も可能。高専や大学等の授業にも多く使用されている。2008年9月1日に2相出力のエンコーダ付DCモータ「RDO-29BMA」が新発売され、フィードバック制御の学習も可能になった。


JAPAN ROBOTECHのRoboDesigner。多くの教育機関で活用実績がある RoboDesigner専用ソフト「TiColla」のハードウェア設計画面。実機の入出力設定を行なう

 松江高専が開発したH8マイコン習得キット「ビーグル&アニマルロボ」も展示されていた。H8マイコンを中心に、DCモータ・サーボモータ・赤外線距離センサーの制御方法やデータ取得方法を基礎から学ぶ目的の教材になっている。マイコン制御にはC言語を用いており、プログラミング学習の入門キットとしても使用できる。

 ビーグルモードはDCモータで制御し、アニマルモードはサーボモータ制御。コントローラーから赤外線距離センサーの信号を送り、ビーグルとアニマルの切り替えが可能。


松江高専が開発したH8マイコン習得キット「ビーグル&アニマルロボ」 株式会社AAIジャパンの研究開発・教育用の小型移動ロボット「e-puck」。視覚センサー系が充実しており、認知・認識の学習向き。サイズは直径10cm、高さ5cm、重量約100g ビー・エル・オートテック株式会社の学習用ロボットキット「VariBo」。フレームの組み合わせ次第でオリジナルロボットを製作できる

リアルタイム画像解析システムやセンサー類の展示

 ロボット要素技術関連では、リアルタイムで画像解析するシステムやセンサー類が充実していた。

  株式会社ライブラリーは、ロボットや人間の行動解析などに活用される、リアルタイム計測ソフトウェア「Radish」のデモをギガビットイーサネット接続カメラと組み合わせて行なっていた。

 ラジコン模型の四方にギガビットイーサネットカメラ「ひまわり GE60」を配置し、LAN経由で取り込んだ画像から模型につけた反射マーカーを検知し、リアルタイムで位置を計測するデモンストレーション。カメラは8台まで増設可能で、複数カメラを使用することで、死角になったマーカーの位置も計算して追跡が可能。ターゲット全自動登録機能を有し、計測と同時に画像も保存する。


反射マーカー(白い○部分)を付けたラジコン玩具の周囲に4台のカメラを設置 【動画】ラジコンの動きをリアルタイムで計測する。カメラの前に遮蔽物を置いても、逆演算でマーカー位置を表示できる

 映像機器を扱うナックイメージテクノロジーは、リアルタイム3次元動作解析システム「MAC 3D System」による反射マーカーをセットした手の動きを正確にキャプチャするデモンストレーションを行なった。

 同システムは、PCモニタでキャプチャの範囲をモニタリングしながら、カメラの配置やキャリブレーションの結果をリアルタイムに確認できるのが特徴。データ収集、関節モデル表示、CGキャラクタ表示など全てのリアルタイム処理が可能。

 同社のモバイル型「アイマークレコーダ EMR-9」は、データ記録にSDメモリカードを採用している。視野映像、注視点データ、瞳孔径データおよび音声を記録できる。コントローラーが約500gに軽量化され、屋外の移動計測に便利になった。ネットワーク機能も搭載されており、複数台のEMR-9の視野映像モニタリングや制御も行なえる。


【動画】株式会社ナックイメージテクノロジーのリアルタイム3次元動作解析システム「MAC 3D System」 人の視線を定量的に計測する「アイマークレコーダ EMR-9」。ヘッドユニットは約75g、コントローラーが約78×140×62mm(幅×奥行き×高さ)、約500gと小型化され移動計測が便利になった 高感度センサーを搭載した、小型一体型・耐Gハイスピードカメラ「MEMRECAM GX-1 Plus」。サイズは100×230×100mm(幅×奥行き×高さ)。自動車の衝突実験や照度が得にくいアプリケーションでの活用に有効

 株式会社画像技研は、ハードウェアレベルからユーザプログラム可能な統合画像処理プラットフォーム「PXIO(PCI Express対応プログラマブルセンサーインターフェイスボード)」を展示。

 「PXIO」は、オンボードFPGAでリアルタイム画像処理をユーザーが自由にカスタマイズ可能。画像処理用IPは、オプションで提供している。ノートPCには、カードバスI/FでノートPCに接続できるカメラインターフェイスボード「UPIO-CI」がある。高速なカードバスにより、高フレームレート・高解像度の画像処理がノートPCでも可能になる。

 旭光電機株式会社は「FST(フレキシブル・センサ・チューブ)」を使ったマスタースレーブシステムの展示をした。

 このマスタースレーブシステムは、神戸大学工学部 大須賀教授らと共同研究中の瓦礫内探索ロボットの位置探索用「FST(フレキシブル・センサ・チューブ)」を使ったもの。5cm間隔に配置した各間接が1つずつのポテンションセンサーを持ち、長いチューブ全体の軌跡と先頭の位置情報を取得できるシステム。

 従来のマスタースレーブシステムと異なり、ユーザーの体格を規定せずに子どもから大人まで装着できる点が特長。

 有限会社追坂電子機器は、筋電センサーでロボットをコントロールするユニークな展示をした。両腕に筋電センサーをつけ、腕を動かした時に発生する微弱な筋電信号をコントローラーに送りロボットを動かしている。


統合画像処理プラットフォームPXIO 【動画】「FST(フレキシブル・センサ・チューブ)」をマスタースレーブに応用したシステム。先端を動かすと、軌道をPCで確認できる 【動画】有限会社追坂電子機器の筋電センサーを使ってロボットを動かすデモンストレーション

 株式会社丸富精工は、岐阜大学 川崎・毛利研究室などと共同開発をした多指ハプティックインターフェイス「HIROIII」を展示した。アームは6自由度、ハンドは15自由度の計21自由度をもち、広い操作空間で動かすことが可能。

 ユーザーが球状磁石のついた指フォルダを装着し、ロボットアームの指先に磁石を合わせると、バーチャルな物体の触感や重量の感覚を得ることができる。モニタに映る回転する多角形を触ると、指先にごつごつした振動が伝わってきた。

 「HIROIII」の指先に搭載されているセンサーは、株式会社テック技販の3軸力覚センサーだ。ひずみゲージ式世界最小クラスの高精度センサーで、接触面に発生するせん断力と垂直力(X,Y,Z)の3分力の検出が可能。


【動画】多指ハプティックインターフェイス「HIROIII」。バーチャルな物体の形状や重量を指先で感じることができる 株式会社テック技販の小型3軸力覚センサー ゼネラルロボティクス株式会社が2008年10月に発売する実時間Linux搭載 SH4Aボード。サイズは92×55mm(幅×高さ)。予定価格99,750円

素材から実用ロボットまで多彩な展示

 ロボットのフレームや外装などに使われる材料やその切削マシン、そしてロボットの展示もあった。

 村田機械株式会社はロボットハンドや、航空宇宙機器、スポーツ用品などに使用されている複合材料を展示した。

 複合材料とは、カーボン繊維+エポキシ樹脂、ガラス繊維+エポキシ樹脂など二種類以上の素材を合わせ、単一素材では得られない強度や剛性などを発揮するもの。素材の組み合わせにより、軽量高強度を高めたり震動減衰性を向上するなど用途に応じた材料を作ることができる。

 ローランド ディー.ジー.株式会社は、小ロット生産に適した切削RPマシン「MDX-40」の実演を行なっていた。

 ロボットのフレームや外装の形状は、複雑な3Dをしていることが多く、データ上では把握することが難しい。切削RPマシンを使って、削り出すことで、形状・大きさ・寸法を確認できること、マシンの扱いが容易なこともあり、導入する研究室が増えているという。

 同機は、市販のCAD・CGソフトに対応し、プロッタ感覚で切削加工が行なえるのが特長。設計したデータの形状を、外注に出さずに確認でき、プロダクトデザインや試作加工に重宝する。


村田機械株式会社の組紐の技術を生かしたカーボン繊維強化複合材料。立っている円筒は、左の金属と同じ強度を持つ ホビーユーザーにもMODELA愛好者は多い。Roland MDX-40は73万2,900円

 株式会社相愛のブースには、オムニホイールで全方向移動可能な歩行訓練機「歩行王(あるきんぐ)」が展示されていた。

 人は歩行の際に前進だけでなく、横・後・斜めへの歩行や方向転換など基本動作を組み合わせて複雑に動いている。「歩行王」は、ユーザーに応じて移動距離、移動速度をパネルで調整し、全方向への移動訓練を効率的に行なう。価格は262万5,000円。


全方向移動型歩行訓練機「歩行王(あるきんぐ)」。740×900×1,000mm(幅×奥行き×高さ)。重量約58kg 「歩行王(あるきんぐ)」の操作パネル。コース運転で、ユーザーの状態に適した速度調節・訓練プログラムを選択できる オムニホイールにより狭い場所でも自由自在に動き、切り返し操舵なしに目的場所までスムーズに移動可能

 サスティナブル ロボティクスでは、2008年12月発売予定の2群3脚式ツインフレーム型移動ロボット「HEXA LEGS」を展示した。

 自由度は、上下に動く脚が1軸×6、並進用に1軸、回転に1軸の計8軸。脚を上下方向にスライドし、従来の車輪型では対応できない40cm程度の段差を乗り越えたり、荒れた斜面なども移動可能。RS232Cで方向と速度を指定するだけで、ロボットに搭載した接地センサー、傾斜センサー、接触センサーで自律的に地面の状況を判断し、本体を常に水平に保って移動する。最大歩幅は約30cm、30度の斜面を登坂できる。平地の歩行速度は1分間に2m。最大搭載重量は約20kg。

 財団法人新産業創造研究機構NIROのブースには、神戸RT研究会会員の有限会社ピノキオのコーキングロボットや、明興産業株式会社の床下点検ロボットが展示された。

 明興産業株式会社のブースには、複数の無線LANルーターを配置し網目(メッシュ)状にネットワークを構築できるメッシュ型無線LANネットワークシステム「RMRシリーズ」の導入と検証事例がパネル展示された。

 無線メッシュルーター「RMRシリーズ」は、電源を入れるだけで自立的に無線LANネットワークを構築する。アクセスポイントまで有線ケーブルの敷設が必要な従来の無線LANとは異なり、アクセスポイント同士が自立的に無線通信を行うので、有線ケーブルの敷設を最小化できる。そのため、広いスペースや屋外の設置が容易なのが特徴。


ツインフレーム「HEXA LEGS」。600×600×900mm(幅×奥行き×高さ)、重量約30kg 有限会社ピノキオの壁面吸着移動方式外壁目地・クラック等のコーキングロボット。階上からつり下げて遠隔で壁を補修する

明興産業株式会社の住宅における閉塞空間を監視・検査するレール軌道型移動ロボット シンクチューブの屋外用無線メッシュルーター

URL
  日本ロボット学会
  http://www.rsj.or.jp/
  第26回日本ロボット学会学術講演会
  http://www.org.kobe-u.ac.jp/rsj2008/
  神戸大学大学院工学研究科・工学部
  http://www.eng.kobe-u.ac.jp/


( 三月兎 )
2008/09/16 17:12

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