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ロボットビジネス推進協議会、ロボ検を開始
~メカトロニクス・ロボット技術者の人材育成指標確立を目指す
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グローバックス、名古屋にロボット専門店をオープン
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研究者たちの「知りたい」気持ちが直接わかる
~理研一般公開でのロボット
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【やじうまRobot Watch】
巨大な機械の「クモ」2体が横浜市街をパレード!
~横浜開港150周年記念テーマイベント「開国博Y150」プレイベント
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【 2009/04/17 】
第15回総合福祉展「バリアフリー2009」レポート
~ロボットスーツ「HAL」や本田技研工業の歩行アシストも体験できる
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「第12回 ロボットグランプリ」レポート【大道芸コンテスト編】
~自由な発想でつくられた、楽しい大道芸ロボットが集結!
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【 2009/04/16 】
北九州市立大学が「手術用鉗子ロボット」開発
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ROBOSPOTで「第15回 KONDO CUP」が開催
~常勝・トリニティに最強のチャレンジャー現る
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【 2009/04/15 】
「第15回ROBO-ONE」が5月4日に開催
~軽量級ロボットによる一発勝負のトーナメント戦
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ヴイストン、秋葉原に初の直営店舗「ヴイストンロボットセンター」、29日オープン
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【 2009/04/14 】
大盛況の「とよたこうせんCUP」レポート
~ロボカップにつながるサッカー大会が愛知県豊田市で開催
[11:34]

「東北大学オープンキャンパス」レポート
~ロボット系研究室ツアーに混ぜてもらいました


 7月30日と31日の日程で、東北大学オープンキャンパスが行なわれた。オープンキャンパスとは主に進学希望の高校生を対象に研究室の研究内容を大学が直接公開するものだが、実際には誰でも参加できる。うち7月30日に行なわれた工学部機械系のロボット系研究室のツアーに混ぜてもらったので簡単にご紹介する。

 ツアー形式の都合上、各研究室での滞在時間は限られており、残念ながらどの研究室もかなりの駆け足での見学だったが、日頃めったに見ることができない大学の研究室の雰囲気に触れ、高校生達は少々萎縮しながらも楽しんでいたようだった。訪問した研究室は全部で4つだ。


ヒューマノイドと宇宙ロボット ~内山・近野研究室

 まずはじめに訪問したのは、内山・近野研究室だ。ドンドンドンと太鼓を叩く音が廊下にまで鳴り響いており、知っている人ならばすぐに「HRP-2」が太鼓を叩く音だと分かる。ロボットのボディのダイナミクスによる力積を使って環境に大きな外力を与える「インパクト動作」の研究の一環として、2005年の「愛・地球博(愛知万博)」でも出展されていたものだ。

 ここではHRP-2が太鼓を叩く様子が紹介されたほか、富士通「HOAP-2」を使った板割り、HRP-2を使った釘打ちなど、ロボットの全身のダイナミクスを利用した運動制御の研究や、ヒューマノイドの膝にバネを入れて運動能力向上とモーター負荷を減らす機構の研究、そして飛行機ロボット(UAV)や、ハプティックなインターフェイスを使った手術ロボット、宇宙ロボットの研究の様子などが、次から次へと紹介された。


【動画】セットアップするHRP-2 【動画】太鼓を叩くHRP-2 【動画】なかなかのバチさばき

【動画】全部で3曲太鼓を叩いた 釘を打たせる研究の様子などはビデオで紹介 実際に釘を打たせたもの。しっかり打ち込まれている

現在開発中のヒューマノイド「才華-4」 航空ロボット

脳外科手術シミュレータの体験もできた 双腕の宇宙ロボットの研究も行なわれている

ダンスロボット、複数台協調 ~小菅・菅原/平田研

 次に案内されたのはダンスパートナーロボットや歩行補助ロボット、協調搬送ロボットの研究で知られる小菅・菅原/平田研。ここでは、やはり万博等でお馴染みのダンスパートナーロボットや、歩行補助ロボット、ブレーキだけで障害物を避けるロボットなどが紹介された。実際に触って体験することができたため、参加者達にも人気があったようだ。

 本誌が特に注目したのは車をロボットで搬送させる「iCART」プロジェクトの紹介だった。石川島運搬機械株式会社との共同研究で、全方向移動メカニズムを持たせた複数台のロボットで車を搬送する。このシステムを使うことで、熟練者にしかできない密集させた状態での駐車などを自動化させることを目指す。現在、2台のロボットで車を搬送する1/2サイズの実動モデルを作製し、研究を続けている。搬送ロボット自体もモジュール機構を採用し、本体とリフト部分を分離、相互に影響しないように作られている。

 搬送は2台のロボットで車を挟み込むようにして行なうのだが、片方のロボットが相手のロボットの動きを予想して動く。これにより荷重が一方向にかかりすぎることを防ぐ。短時間説明を聞いただけでも同研究室のこれまでの成果が各所に活かされてロボットになっていることが分かる。1/1の実動ロボットが発表される日を楽しみにしていよう。


【動画】ダンスパートナーロボットPBDR ダンスロボットの中身 歩行支援ロボット

「iCART」プロジェクト。まず両側から2台のロボットが車を挟み込みように移動してくる ロボットから張り出した2対のバーで、車輪を下からすくい上げるようにして車を持ち上げる ロボットは全方位移動が可能なので横滑りしながら車を移動できる

パッシブな機構で障害物を避けることができる荷物搬送ロボット 協調搬送研究用のロボット。いまはこのロボットを使って研究している人はいないとのこと 研究室の片隅に並んだ2体。こういう風景が見られるのは研究室公開ならでは

マイクロマシンとバイオロボティクスのメディカル応用 ~新井・丸山研究室

 続けて訪問したのは、マイクロマシン技術とロボティクスをメディカル技術へと応用している新井・丸山研究室だ。ここでは、超精密加工技術によって製作されたカテーテル先端のマニピュレーターや脳血管モデル、微小な機械を使った微小空間での液体攪拌、レーザー光による光ピンセットを使った微細操作手法などが紹介された。クローン細胞作りの自動化などを目指しているという。

 見学者たちは「STAMP(Stacked Microassembly Process)」と名づけられた技術で2次元シートを積層して作製された「クワガタ」や、小さな機械部品などに見入っていた。クワガタはフォトリソグラフィを使って高精度でパターンを作製し、それを位置決め用に作られた穴を使って積層。固定したあと、プラモデルのランナーのようなサポート部分を切り離して作製されたもの。将来はこのような技術を使ってセンサーなどを組み込んで機能デバイスを作製することを狙っているそうだ。


バイオプシー(生検)などに使うマイクロアーム テーラーメード人工血管。医療技術トレーニング用ロボット「イブ」に使われているもの

精密加工技術で作られたクワガタ。大きさはほんの数mm ランナーから切り離される前の状態

衛星、マニピュレーター、ローバー ~吉田・永谷研究室

 最後に訪れたのは、宇宙探査ロボットの研究を行なっている吉田・永谷研究室だ。ここではアームを付けた軌道上の衛星の制御や組み立て作業のためのダイナミクス制御、高層気球望遠鏡の姿勢制御、小型衛星開発(スプライト観測衛星)、惑星探査ローバー、それを応用したレスキューロボットの研究などが行なわれている。各研究についてスライドを使った紹介が行なわれた。

 スプライトと呼ばれる発光現象を観測するスプライト観測衛星は2009年の1月、金星を観測する気球望遠鏡は2009年5月末に打ち上げ予定だそうだ。相乗りで打ち上げられることが決まっているスプライト観測衛星については本誌でも以前レポートされているのでそちらをご覧頂きたい。

 気球望遠鏡は、高度30km以上の高高度で望遠鏡観測を行なうことを目指すもの。望遠鏡を精密にコントロールする必要があるのはもちろんだが、望遠鏡を動かすとゴンドラも動いてしまう。それでは像がぶれてしまい高々度観測の意味がない。だがこの研究室では0.00003度の精度で望遠鏡を向ける制御技術の開発に成功したそうだ。

 マニピュレータチームでは故障した衛星の回収などを行なうための技術試験衛星のほか、国際宇宙ステーションの日本モジュール「きぼう」の大きなマニピュレータを使った制御を研究している。これまではシミュレーションを繰り返していたが、完成したら実機を使った実験を行なっていくという。またカメラとグリッパを使って、ハンドレールをシャクトリムシのようにつたって移動していく外壁探査ロボットの研究も行なっている。

 ローバーのほうは、基本的には一般的な地上移動ロボットと同じだ。ロボットは遠隔操作で移動するが、地球からの通信をいちいち待っていたら困ったことになるので、ある程度の自律性が必要となる。また、マップを自分で生成し障害物を認識して移動するわけだが、路面が細かい砂などだと滑ってしまうので、ロボットは自分で計画したパス(経路)をきれいに辿ることができない。それをできるだけ防ぎ、リカバリーしていく必要がある。そのための機構や制御技術の研究である。


吉田和哉教授(右)と永谷圭司准教授(左)が迎えてくれた 互いに自由落下状態にある状態で、ターゲットを突き飛ばさないようにアームを制御するための実験機器 外壁探査ロボット

惑星探査ローバー 【動画】ローバーのデモ

ロボットが獲得した画像を見ながら操作するための没入型VRシステム。自由な視点移動ができる 【動画】レスキューロボットのデモ

 同様のイベントは各大学で行なわれているので、将来、ロボット系に限らず進学を希望している読者は積極的に活用してみることをおすすめする。今回我々はツアーのなかに組み込まれてしまったのだが、一般参加者ならば個別の研究室を訪問してじっくり話を聞くこともできる。直接の研究担当者がいないときもあるが、事前にウェブサイトなどを使って下調べをしておけば、さらに詳しく具体的な話を聞くことができるだろう。

 なお、30日には「『攻殻機動隊 S.A.C.』の世界は実現するか? ロボット・サイボーグ・情報社会の未来を語りつくす!」と題された、SF作家で東北大学 特任教授も務める瀬名秀明氏と、『攻殻機動隊
S.A.C.』や『特務機構隊クチクラ』(マッグガーデン)他の作品で知られるプロダクションI.Gの脚本家・櫻井圭記氏との公開対談も行なわれた。そちらについては後日、別途記事にてレポートする予定だ。


機械・知能系で学ぶ女子学生の会による歯車展示 歯車を興味深そうに見つめる櫻井圭記氏 【動画】マングル歯車。回しているのは櫻井圭記氏。特にお気に入りだった

URL
  東北大学工学研究科・工学部オープンキャンパス
  http://www.eng.tohoku.ac.jp/open/

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( 森山和道 )
2008/08/01 00:14

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