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通りすがりのロボットウォッチャー
ロボットは人間を伝承できるか?

Reported by 米田 裕


 結局のところ、「反応」なんじゃないやろか? 外界からの力でも信号でも、なんでもいいけど、それに対応する反応系を持っていて、なにかを返してくるのが生き物と違うんでっしゃろな。

 だから、人がロボットに求めているのは、「外界への対応」ということになるわけや。

「人型ロボット、役にたつか?」

「たたへん。わしらの真似するようにしてあるだけやし」

「とにかく『人真似』をしたロボットはうけるよってな」

 今から40年前のSFにこのような内容を見つけた。「人真似」をするといっても、なかなかむずかしい。人も「外界への対応」をする生き物だからだ。

 この「外界への対応」をうまくやったものが、ロボット競争というレースでは先を走っているように感じさせる。

 現在のところ、人に造られたもので、反射神経レベル以上で反応するということを、うまくこなすロボットはなかなかいない。

 昆虫型ロボットは、脚が地面に着いたときのフィードバックでせわしなく脚を動かし、なんとか地形に対応しようとする。しかし、そこに知性は感じられない。

 これは話題なった「BigDog」なんかも同じだよなー。

 やはり、話しかけたら応えてくれないと可愛くないのだ。仲間ではないのだ。お友達でもないのだ。って力むものでもないか。

 僕には子供はいないが、甥だの姪だのは4人いる。すでにかなりの自分の遺伝子が残っていると考えていい。

 小さい頃から見ていると、口をきくようになる前は、子猫や子犬の可愛さとあまりかわらない。この頃はゴハンをくれる人になついているし(笑)。

 ところが、話すようになり、話しかけたことに反応するようになると、犬猫レベルからいっきに「人」になる。

 こうしたことから、少しでも会話となる受け答えができるようになること。言ったことがわかるようになること。これがロボットの当面の目標かもしれない。


女性アンドロイドにあこがれる気持ち

 関東地方だけかもしれないが、東京ガスの「エコウィル」という製品のコマーシャルはアンドロイドが出てくる物語だ。

 主人公が、電池切れの女性型アンドロイド(本来ならガイノイドですぞ)を道で拾うところから始まる。

 「エコウィル」というのは、小型ガスエンジンで発電と、その排熱で湯を沸かすシステムだ。

 拾った女性アンドロイド、もといガイノイドに充電してやるのだが、「電気代お支払いします」というガイノイドに、家で発電しているから電気代はいらねーよと主人公は太っ腹な対応をする。

 さらに湯も沸かせることから、「ミストサウナ入らない? あ、ロボットだから水はダメか」と主人公が言うと、ガイノイド、いや、映像では結局のところ女性タレントなんだが……は主人公の手を握り、イメージを投影して。主人公の「はだか姿」をかいま見る。

 そして、ほほを赤く染めるのだった。

 「あれ、赤くなっている」と主人公が言うと、その反応を隠すかのように、主人公をどつく。ガイノイドは人よりも力持ちという設定のためか主人公は吹っ飛んでいくという内容だ。

 CM制作男性陣の描くガイノイドへの想いが凝縮されているなぁと分析しながら見てしまう。

 まずは、どうして道ばたにガイノイドがいるのか? その昔、ソニーが発売するかもしれないとしていた「QRIO」は、乗用車1台分の価格とも言われていた。

 安く考えて2~300万円あたりだろうか。そして、世の中には数千万円~億単位の自動車も存在する。

 実物大のガイノイドとなれば、それなりの金額だろう。おつかいへ出すのも、かなりびびってしまう(笑)。


 僕の知っている自転車乗りの人は、百万円を超える自転車(カーボンフレームやパーツを使うとと高いのだ)に乗っているが、外で公衆トイレに行くときも、いっしょに持って入るとのことである。

 高い物を持つと、盗まれないかが心配になるものだ。チェーンキーなどをしていても、あっという間に切られて、ワゴン車に載せられて盗まれてしまうのではないかと不安になる。

 だから、トイレでも片手では自転車を持ち続けるとのことである。

 そうなると、たぶん、億に近い金額のガイノイドを1人で外へ出せる人は太っ腹じゃのう。

 でも、野良ガイノイドを作れる社会という設定では、それほど高い物ではないのだろう。今や乗用車が道に停めてあっても、誰も見向きもしない。

 同じように、ロボットがそこらにへたりこんでいても当たり前になっているのかもね。

 そういう考えとは別に、野良ガイノイドがあちこちに居て、それを拾ってくることを裏返して考えてみると、男は異性をタダで手に入れたいと思っていることになる。

 男は、メシだのデートだのプレゼントだの、いろいろと面倒な手順を踏み、それなりの金額を使ってガールフレンドやら恋人を手に入れるわけだが、本来なら面倒だからやりたくないと思っているわけだ。

 できるなら、子猫や子犬のように道ばたに居て欲しい。こうした想いが道ばたに座るガイノイドなのだね。

 動けなくなっているガイノイド、推定重量70kgとして、どうやって家まで運んだのだろう?

 「お姫様だっこ」なんてしようと思うなら、「HAL」とか「マッスルスーツ」は必要だ。でも、主人公の根性のなせる技なのかもしれないね(笑)。

 さて、さっさとガイノイドは手に入った。電気も提供してしまうが、CMではガイノイドの電力供給口はお腹にある。壁についているコンセントのように、四角く大きい。

 腹部は屈伸をしたりするのに動く部分だから、これではとても邪魔になるのではないかと思う。

 電力供給口は、普段動きの少ない場所に設けるものだろう。

 ASIMOの場合には、背中にある。まー、バッテリを背負っているからだけどね。後ろへ後ずさりしながら充電ステーションへと背中を押しつけ、端子がのびてくるという仕組みだ。

 ガイノイドの場合、やっぱりお尻のちょっと上あたりに充電口があるのがいいように思える。

 誰もが見る可能性のあるTVCMでは、お尻に電源端子を差し込むなんてのは表現的に無理だろうけど。


生身が怖い若者はロボットに期待する

 はい、ここからは空想のお話ですね。空想といってもあるかもしれない未来のお話ですね。

 現在でも、本物の女性がダメという男性がいますね。アニメやマンガ、フィギュアなどの女性ならばOKだが、生身はいやという輩ですね。

 一方、音声の方でも「初音ミク」みたいに、自分の調整で、自分の思う通りに歌わせることのできるツールが出現していますね。自分でパラメーターをいじることを「調教」とか言っているようですね。

 もうちょっと妄想を進めてみましょ。ガイノイドが道ばたに落ちている世の中では、男が(女でもいいけど)自分でガイノイドを買ってくることもできるようになっていると考えるのが論理的ですね。

(とここで手のひらの指を2本ずつ中指を中心に開く)

 そして、その時代では、人工子宮により、人間が生殖に直接関与しなくてもよくなっているほどの未来だとしますね。

 現在の男女間の関係、子供との関係は、その未来ではどこまで維持されるのでしょうね?

 今の男性でも、生身の女性よりも、人形が好きだという人がいっぱい出てきましたねー。

 南極1号じゃないけど、ダッチワイフとして出発した代替品は、いまや南極28号となって、夜の町にガオー! じゃない、人生のパートナーとして考える対象とまでなっているんですねー。まぁ、いやらし、いやらしぃですねー。

 そのダッチワイフ、失礼、現在はラブドールというんですね。は、精巧な作りでもって、外観的にはかなり本物そっくりですねー。

 だが、動かないし、反応をしないんですね。これは寂しい、寂しいですね。

 ここに入ってくるのは、ハイ、ロボット技術ですね。近い未来、ラブドールにはロボット技術が入ってくると予言しておきましょう。

 理想の女性モデルをオーダーメイドできるなら。それがサラリーマンの生涯分の給与の半額で、月賦可能なら。

 欲しい人は買いますねー。

 これは男性だけの話ではなくなりますねー。女性も、理想の男性としてのアンドロイドを買うようになりますね。

 ハイ、こわい、こわい、こわい、人類の未来のお話ですね。

 ハイ、サヨナラ、サラナラ、サヨナラ。


礼儀作法も刷り込み可能?

 というように、淀川長治さんの口まねをしながら、つらつらと考えてみるに、最初に書いたように「反応」なんじゃないのと思うのだ。

 「愛」とか「礼」とか「感情」も反応系のなせるものかもしれない。データ化されていれば、それをロボットに刷り込むこともできるだろう。

 もう、うろおぼえで正しく覚えているかもわからないのだが、今から30年ほど前に読んだ日本のSFで、女性型アンドロイドと女性の比較を行なっているものがあったと思う。

 当時、1970年代は「ウーマンリブ」運動がさかんで、「女性の社会進出」「男女同権」などのスローガンを掲げて、かなり戦闘的となった女性たちが社会に進出していた。

 その前の時代の学生運動が男主体だった反動というか、学生運動時にも女性は差別されていたことに対する怒りが噴き出たものといえる。

 自分たちの主張を認めさせるために、男に対して敵意を向けてくる時代だった。

 そうした時代の小説なのだが、作品名も思い出せないし、作者も内容についてもうろ覚えだ。覚えている内容は、たぶん京都の祇園あたりが舞台となっていたと思う。

 若者男性2人が芸妓に接待されているのだが、実は彼女たちはアンドロイド(ガイノイド)であるという内容。

 世間では女性解放運動が盛んで、若者たちは女性が怖いと思っている。

 そこでお茶屋遊びへ連れ出すのだが、そこに居るのは、長い伝統をふまえ、女性としての礼儀作法を身につけたガイノイドたちだった。

 京都の芸妓に伝えられる「文化」を人間の女性は忘れ、社会的闘争に走っている。その女性らしさの「歴史」を脈々と伝えているのはロボットなのだ。

 その姿に、若者たちは惹かれていく。

 女性には女性にしかできない役割があるが、生殖から自由になったときに女性は何をしていくのか?

 ロボットでも女性の「心情」を受け継ぐことができるというのに。という内容であったと記憶している。

 こんな内容で書きそうなのは小松左京さんぐらいしかいないと思うが、ショートショート類を含め700篇以上も作品がある。片っ端から本を引っ張り出して調べてみたが、締め切りの迫っているこの短い時間では探し出すことはできなかった。

 「女性」が「女性」であることは、生殖を抜いてしまうと、その情緒的行動や風習や作法などの歴史の伝承であるという。それが「女性らしさ」になるという。

 そして、そのような記憶や動作の伝承は、ロボットにも最初から刷り込めるとしているわけだ。

 そのものズバリの作品が今のところ見つからなかったので、ひょっとすると複数の作品から合成された記憶かもしれない。


人類の静かな終末

 もはや、お湯をかけて3分というインスタントラーメンで育った世代も、孫がいてもおかしくなくなった。

 その孫たちの一部は、現在「おたく」と分類される者たちになっている可能性は大きい。アキバへ通ったり、ラブドールを購入しているかもしれない。

 人生の伴侶が、人間である必要もなくなる時代も早く到来するかもしれない。

 それには、生殖が機械によって可能になる技術が必要だけどね。

 それよりも、人は長生きをするようになった。そして、老いると身体の運動機能が衰えていく。これが問題となりつつあるわけだ。

 現在の老齢者による老齢者の介護などを見ていると絶望的な気分になる。80歳が90歳を介護するなど、これは無理だと思える。

 こうした問題の解決として、人生の伴侶の片方がロボットである時代が、近い未来にはやってくるだろう。

 人間同士で結婚し、最後は介護ロボットに見てもらうとすると、介護ロボットを手に入れる裕福な財力が必要だ。

 生身の人間がいやで、老後の介護までを考えるなら人間とロボットで結婚する選択も出てくるだろう。

 ロボットの代金は一生かけて払っていくことを条件に、若いうちにパートナーとなるアンドロイドやガイノイドを手に入れる。

 いつしか、子供を持つということもなくなっていく気がする。

 生身の男女は一生くっつくこともなく、ロボットを伴侶に暮らし、ロボットに最後を看取ってもらう。子供は残さない。

 それが幾世代も進めば、いつしか、人類のいなくなった世界で、野良ロボットたちが「思い出」だけを持ってたたずむ未来がやってくるかもしれない。

 人類の文化や歴史や心情を伝承しているロボットたちは、寂寥を感じるだろうか?


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URL
  東京ガス
  http://www.tokyo-gas.co.jp/
  エコウィル
  http://home.tokyo-gas.co.jp/ecowill/index.html




米田 裕(よねだ ゆたか)
イラストライター。'57年川崎市生。'82年、小松左京総監督映画『さよならジュピター』にかかわったのをきっかけにSFイラストレーターとなる。その後ライター、編集業も兼務し、ROBODEX2000、2002オフィシャルガイドブックにも執筆。現在は専門学校講師も務める。日本SF作家クラブ会員



2008/09/26 00:14

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