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今年一年を振り返る「2006年のロボットシーン総括」

Reported by 森山和道

 「ロボットビジネス推進協議会」が設立され、同じく今年設立されたばかりの「今年のロボット大賞」が選定された。また、最終年度を迎えた「大大特」の発表が終わった。どうやら今年も終わりが近づいてきた。残念ながら、半ば毎年恒例かと思われたホンダASIMOの新発表はもうなさそうだ。

 今年は本誌「Robot Watch」創刊の年でもある。ここで一度、2006年を振り返っておきたい。


2006年のロボットビジネス・シーン

量産されることなく開発中止となった「QRIO」
 昨年終了した「愛・地球博(愛知万博)」のあとを受けた今年のロボットシーンは、やや暗いニュースから始まった。1月、ソニーが2005年度第3四半期(10月~12月)の連結決算発表会のなかで、AIBOの3月末での生産終了を発表。「QRIO」と呼ばれていた二足歩行ロボットも発売されることなく開発中止となった。ソニーは自ら扉を開いた家庭向けエンタテインメント・ロボット市場から完全に撤退してしまった。

 AIBOは世界初の本格的ペットロボットとして、7年間で世界で15万台を売った。しかし、ソニーのような家電メーカーが維持する製品としては、コンシューマロボット市場はまだまだ大きいとは言えなかったのだろう。ソニーのエンタテインメント・ロボット市場からの撤退は、多くの一般メディアでも大きく報道された。

 その後、QRIOをプラットフォームとして使っていたインテリジェンス・ダイナミクス研究所も7月に活動終了した。同研究所は機械知能の研究を行ない、1年に一度シンポジウムを行なっていた。だが来年はシンポジウム開催もないだろう。

 いっぽう、冒頭に触れたように「ロボットビジネス推進協議会」が設立、「今年のロボット大賞」設立など、サービスロボット市場を切り開こうとする試みはまだまだ続いている。ただ取り組みは必ずしも首尾一貫したものではなく、国、産学官連携、企業など、それぞれのレベルでバラバラに進められている印象だ。

 「今年のロボット大賞」をとった住商+富士重工業の掃除ロボットは、ロボット単体として運用されているわけではなく、あくまで清掃システムの一環としてロボットを運用している。また、ALSOKは警備ロボットシステム「Reborg-Q」を開発し、アクアシティお台場で運用を開始した。これもロボットはシステムの一部である。


今年のロボット大賞を受賞した住商+富士重工業の掃除ロボット ALSOKの警備ロボットシステム「Reborg-Q」

 現状、ロボットビジネスを業務の世界で展開するには、まず既存のサービス事業のなかでロボットがどのような価値を提供できるか考えるのが現実的だ。

 なお実用ロボットということでは、洗浄総合展ではいくつかのロボットが実際に用いられ始めていることを知ることができた。また危機管理産業展では三菱重工業が防災支援用のプラットフォームロボットを出展した。

 北九州のロボットベンチャー会社(社長曰く「アドベンチャー会社」)テムザックは、今年も「T-52援竜」を使った雪かきのデモショッピング補助ロボットの実証実験早稲田大学との二足歩行ロボットの共同実験同じく福岡の商店街での歩行実験高島屋でのロボットによるPR病院への受付ロボット納入などなどを精力的に行なった。

 また病院に導入されたロボットは、今後、中型サービスロボットの基本型として受注していくという。ユビキタス・エクスチェンジによる「ロボット派遣社員」としても採用されている。


テムザック「T-52援竜」 早稲田大学の「WABIAN-2R」を使った福岡の公道での実験 会津中央病院に納入された受付・案内ロボット

 日本SGIは新型セグウェイの国内初正規総販売代理店となることを発表。法人向けに販売を開始した。1月3日までフジテレビによるイベント内で「セグウェイパーク」という試乗体験イベントを行なっている。

 教育、エンターテイメント、研究開発を業務としているベンチャーのZMPは8月末に、iPodを搭載可能なロボット音楽プレーヤー「miuro」を受注開始。音響面ではケンウッドが協力しており想像以上に良い印象だった。

 ZMPは車載エレクトロニクスなど組込みエンジニア向けの教材として展開している「e-nuvo」シリーズの強化も今年発表した。同社の教材はテキストやカリキュラムなども企業向けに整備されている点が特徴だ。

 なお産総研からも同様に教材用として、小型二足ロボット「HRP-2mチョロメテ」が発表されている。産総研の技術移転によって4社が開発したものだ。


ZMPのロボット音楽プレーヤー「miuro」 ロボット教材の一つ「e-nuvo WHEEL」 HRP-2をモチーフとして産総研ベンチャーほか4社によって作られた小型二足歩行ロボット「HRP-2mチョロメテ」

 また、近藤科学のホビーロボット、KHRシリーズも教材として学校などを中心に大量採用されている。ロボット教材市場は、一度入り込めば手堅いが、単にロボットだけ作って供給すれば良いというものではないことに留意する必要がある。

 いずれにせよロボットビジネス市場の行方は、主に民生用を想定しているロボット・ベンチャー会社と、主として業務用途を考えている大企業と、それぞれペースもリズムも違う歩み方を持つプレイヤーが混在していることを念頭において眺める必要があるだろう。

 教育といえば今年は、東大工学部によって高校生らに工学部の研究内容を広報するための「T-Lounge」も設置された。第一回工学体験ラボのテーマに選ばれたのは、ヒューマノイド研究で知られる稲葉研究室の研究内容公開だった。また、東工大でもロボット展示会「先端ロボットの世界」が開催された。

 今後もロボットは、それ自身を研究テーマとするだけではなく、工学教育の惹きの1つとしても使われるだろう。次は研究開発シーンを見てみよう。


研究開発シーン

 レスキューロボットは「大大特」でのプロジェクトを中心に、今年は実証実験をいくつか行なった。また、大大特のプロジェクトは今年度で終了するが、その後継プロジェクトはNPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS)で引き続き実施される予定。

 また、レスキューロボットは、通常は業務で使うインテリジェントな道具でありながら、いざというときにはレスキューロボットとしても活躍するという形が望ましい、という考えを複数の人たちが持っている。具体的にも千葉工業大学fuRoと大和ハウスの取り組みなど、いくつかのプロジェクトが既に始まっている。これらは来年にもまた新たな動きがあるだろう。


IRSによるレスキューロボットの実証実験 千葉工業大学fuRoと大和ハウスによる床下点検ロボット「Iris」

 いっぽう、産総研はロボット産業活性化を目標としたオープンアーキテクチャ開発を掲げた。実際にいくつかの企業と開発に入っているようだ。産総研の比留川氏は「投資額と市場規模のミスマッチ」解消をねらいたいという。

 商品化やビジネスからは遠いと見ていた人たちも少なからずいたヒューマノイド研究。そこに力を入れていた産総研が逆にロボットビジネスに近い場所に立ったことは、ロボットというプロダクトの持つ不思議な一面を象徴しているのかもしれない。ただ、産総研のほうもオープンハウスを見る限り、さまざまな研究が混在しているように見える。

 7月にはATRにて大阪大学教授でもある石黒 浩氏が自分自身のコピーロボット「ジェミノイド」を作成、研究を始めたことを発表した。このロボットは海外ニュースメディアでも話題として取り上げていた。

 また石黒氏らの研究の派生として博物館などで用いる「動刻」ロボットを作っているココロは、女性型ロボットの新型「アクトロイド DER2」を発表。これも一般の人たちの注目を浴びた。こちらは研究開発用途ではなく、イベントなどで主にアミューズメント、エンターテイメント用途として用いられる予定だ。


石黒氏自らのコピーロボット「ジェミノイド」(写真左) ココロの「アクトロイド DER2」

 アクトロイドは万博でも話題を呼んだロボットだが、7月には「NEDO次世代ロボット開発プロジェクト成果報告会」が開かれ、これで万博関連のイベントは全部終了となった。万博前には山ほどのプレスが押しかけていたのだが、報告会にはその姿はほとんど見られなかった。

 東大が今年から始めた「IRT基盤創出プロジェクト」プロジェクトについては、一般メディアではトヨタなど7社が協働で参画する、という点に大きな注目が集まっていた。これは科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」の1つとして採択されたもので、このほかロボットが関連するものとしては大阪大学の「ゆらぎプロジェクト」も東京で発表会を行なった。

 農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センターは、今年度から高精度畑用中耕除草機、イチゴ収穫ロボット、果樹用薬液飛散制御型防除機、てん菜高精度直播技術などの開発を行なっている(リリース)。

 10月のCEATECでは村田製作所が自転車ロボット「ムラタセイサク君」を公開。再び黒山の人だかりを作った。これは研究開発というよりは、むしろ企業によるデモンストレーション用というべきだろうが、ロボットというプロダクトは、見せ方がうまければ十分なアピール能力を持つ。

 以前からビル・ゲイツ氏がロボットキットに興味をもっているという噂があったマイクロソフトからも今年は動きがあった。6月にロボット制御用ソフトウェアの開発環境「Robotics Studio」を発表。その後、正式版をリリースしている。

 大阪のロボットベンチャー・ヴイストンを中心とした「Team OSAKA」は新型ロボット「Vision TRYZ」を開発して、ロボカップ2006ブレーメンに出場。再びヒューマノイドリーグで優勝した。

 ホンダは走るASIMOの一般公開を何度か行なった。また5月にはATRと共同で、脳の活動を計測してロボットを動かす研究に関する発表を行なった。


CEATECで再び大人気となった「ムラタセイサク君」 ロボカップ2006ブレーメンで優勝を果たした「Team OSAKA」の「Vision TRYZ」(中央)

 関連領域としては「脳を活かす」研究会の立ち上げなどが挙げられる。同研究会には「脳を繋ぐ」という分科会があり、機械と脳を繋ぐためのインターフェイス(BMI)に関する研究、それと関連してサイボーグ技術、ロボティクス研究も扱われている。


ホビーロボット、教育用ロボット

 ホビーロボット業界では近藤科学が5月に、2年間で4,000台を売った小型二足歩行ロボット「KHR-1」の後継機として「KHR-2 HV」を発表。6月に出荷した。実勢価格9万円弱の低価格を実現したこのロボットで、近藤科学は経済産業省による「今年のロボット大賞」中小企業特別賞を受賞した。多くの人にロボットを身近にしたことと教材としての市場を拓いたことが受賞理由だ。また12月には初代KHR-1の上位モデル「KHR-1HV」も発売している。

 同社は今年、「ROBO SPOT」を秋葉原に設置した。KHRシリーズを使ったサッカー用のコートが常設された同所は、ユーザーたちが集まって情報交換したり、ロボット操縦の練習を行なう場所として活用されている。

 趣味が盛り上がるためには「場」が不可欠である。ネットでの情報交換も盛んに行なわれているものの、ロボットは実物を扱う趣味なので、今後もリアルな「場」は重要な意味を持つ。ユーザー層拡大と今後の広がりを期待したいところだ。


「今年のロボット大賞」中小企業特別賞を受賞した「KHR-2 HV」 ユーザー交流の場として「ROBO SPOT」も設置

 同様のユーザーコミュニティの広がりを狙う京商からは、「MANOI AT01」が発売され、12月には表参道ヒルズにてイベント「KYOSHO アスレチクス・ヒューマノイドCUP」も行なわれた。

 個人のロボットクリエイターとして活躍しているロボガレージ・高橋智隆氏がデザインを行ない、注目もされている「MANOI PF01」の発売は遅れているが、2007年には登場するだろう。


京商「MANOI」。手前は発売が待たれるパフォーマンスモデルの「MANOI PF01」 表参道ヒルズではMANOIのワンメイクレース「KYOSHO アスレチクス・ヒューマノイドCUP」も行なわれた

 高橋氏のその他の活動についても触れておきたい。氏は4月には女性型ロボット「FT」を発表、8月には日産による「攻殻機動隊S.A.C. meets NISSAN」展にて、タチコマロボットを発表して、注目を集めた。


高橋智隆氏による女性型ロボット「FT」(写真:梓みきお) 高橋は攻殻機動隊に登場するタチコマもロボット化した

 ホビーロボットは他にも色々発売された。双葉電子工業がイベントなどでデモしてきた小型軽量の二足歩行ロボットは「G-ROBOTS」としてエイチ.ピー.アイ.ジャパンから商品化された。

 日本遠隔制御株式会社(JR)とヴイストンは二足歩行ロボットキット「RB2000」を発表。こちらは可動軸13ながら鉄棒で大車輪を披露した。

 スピーシーズは4月に「ITR」と呼ぶ家庭用ロボットを発表した。その後、「MI・RAI-RT」という名前になったこのロボットは10月末に出荷された。


エイチ.ピー.アイ.ジャパン「G-ROBOTS」 日本遠隔制御株式会社とヴイストンによるRBシリーズ スピーシーズ「MI・RAI-RT」

 また、「レゴマインドストームNXT」の日本版も発表され、早速一部のマニアには人気があるようだ。本誌では「大庭慎一郎のレゴマインドストームNXT研究室」に詳しい。

 日本トイザらスは、犬型ロボットトイ「ロボパピィ」を6月に発表した。これらの低価格ロボットトイは今後も手堅そうだ。

 ホビーロボット業界では、もう一つ大きな動きがあった。タカラトミーが2007年3月発売を目標に実売3万円の本格的二足歩行ロボットを開発していることを明らかにした。このロボットが予定どおり3月に発売されるのであれば、おもちゃとしてのホビーロボット業界全体を占う1つの指標となるだろう。


レゴマインドストームNXT トイザらスのロボパピィ タカラトミーから来年の発売が予定されている二足歩行ロボット

 盛り上がっているのかどうか、ロボットシーンは尺度によって見方がまるっきり異なってくるが、イベントはそれなりに盛んに行なわれている。11月にはNPO法人産学連携推進機構によって「アキバロボット運動会」が開催され、ホビーロボットのほか、万博で披露されたロボットたちが家族連れに人気を呼んだ。

 また10月には期間限定の「ロボットミュージアム in 名古屋」がオープンした。ロボット文化の歴史のほか、一部実機も展示されて触ることができる。

 そしてロボットホビーを文化的にも技術的にも盛り上げることを目的としている二足歩行ロボットによる格闘技大会「ROBO-ONE」は、宇宙大会の可能性をアピールしている。大会そのものは今年は長井市で行なわれた。今後も「ROBO-ONE」は地域活性化も狙って地方大会を開催していくという。沖縄での開催も視野に入れているようだ。

 今年から地方で行なわれている小規模の練習会に対し、ROBO-ONE決勝に出場できる権利を優勝の副賞として出すようになり、各地の地方大会はまた盛り上がりを見せているようだ。

 またROBO-ONEなど二足歩行ホビーロボットバトルをテーマにしたPS2用のゲーム「THE ロボット作ろうぜ!」というゲームも発売された。

 長井大会で優勝した丸さんのインタビューからも分かるとおり、上位陣のレベルは単にロボット単体の性能だけではなくさまざまな面で向上している。今後の展開にも注目していきたい。


「ロボット文化」と実際のロボット

 最後に、今年5月に創刊された本誌「Robot Watch」ほか、日刊工業新聞による「ロボナブル」、紙媒体でも雑誌「ロボットライフ」など、ロボット系メディアが複数立ち上がったことを挙げておく。今年は一般雑誌でもホビーロボットの特集が多く組まれた。ユーザーやロボットファンによるブログも多数立ち上がり、写真や動画をアップロードしているウェブサイトも増えてきた。

 ロボットホビーには「作る」、「所有する」、「遊ぶ」という3つの段階がある。ロボットホビー市場を広げるためには、単に「作って動かして楽しい」という枠を越えた、ロボットを使った「遊び方の提案」の展開が必要だろう。

 ロボットホビーはまだまだ歴史が浅い。ロボット系プラモデルや、初期のパソコンに代表されるように、若いホビーはメディアならびに読者と相互作用しながら発展していくことも多い。ロボットシーンそのものが盛り上がれば、ロボット関連メディアも自然に盛り上がっていくだろう。

 また、ロボットそのものは身近になくても、日本には、ロボットについて語る文化、いわば「ロボット文化」がある。作家の瀬名秀明氏と『攻殻機動隊S.A.C.』脚本家の櫻井圭記氏の対談やSF作家の山本弘氏による講演などもその一例だ。「ロボット文化」は実際のロボットの発展にどのように影響を与えていくのだろうか。



2006/12/27 00:38

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